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髭男を聞いてもヒットの秘訣はわからない。

幸運なことにエンターテインメント業界のヒットメーカーの方々と会う機会が割とあって、彼らとの雑談から多くのものを学んだ。

フォーマルの機会での彼らの話より、Recスタジオでの会話、酒がまわってホロ酔いの時の会話、なんかの方が僕にとっては役にたつ情報が多かったのだ。

今なら、Webを漁ったり、本を読んだりすれば得られる情報も多く、直接聞かなくても獲得できるものも少なくないのだが。

とは言っても、一次情報、つまり実際に体験した情報を、自分で直接聞くことに勝るものはないのは誰でも分かってることでしょう。ネット中毒の暇人の雑学王みたいな人がイマイチつまらないのは、三次情報しか彼らは知らないからだ。

ヒットを生産するには、ビッグデータと的確なマーケティング、プロモーションが必要なのは言わずもがな、それ以外の隠された法則を探し出そうと皆んな、躍起になっている。

音楽でいえば、旋律の譜割、コードの展開、現在ならストリーミングサイトのラウドネスノーマライゼーションによる音量の平準化のなかで、最も効果的に音圧をきかせられるサウンドデザイン、それにスキップレートとかトレンド。まあ、いろいろ。

仕事してるくせに、Jpopは普段あまり聞かない。すみません。だって日本料理のシェフが帰宅してまで和食ばっかり食べないでしょ?たぶん。知らんけど。けれどもヒットした作品はきちんと聞かせてもらいます。

髭男のPretender、好みでないけど、よい作品。彼らの楽曲を聞いて、僕が若い頃よくご一緒させてもらったスーパー音楽プロデューサーとの何気ない会話が頭をよぎりました。酔っ払った僕は不躾にも、●●さん、ヒットの秘訣はなんなんすか?と、ですか、ではなく、なんなんすか?と問うた。酒で紅潮した顔の彼はあっさりと答えた。

『聞いた瞬間に、ワクワクするか、切ないか、のいずれかの気持ちをお客さんにしっかり感じてもらえる作品を作ることだよ』と。

技術的な返答を期待していた僕は、アナログな答えに少々、困惑し、そんな単純な訳ないだろう、と訝ったのだ。

髭男の優れた楽曲を聴いていると、ずいぶん前に聞いた彼の言葉を思い出した。ワクワクして、切ない、その感情が聴いている間保たれ、その後も印象として心に残っているのだ、彼らの曲は。

ヒットの秘訣なんてきっとないのだけれど、人に何かを届けるためのきちんとした心構えみたいのを持つことが、たぶんコツなんだろうな、と素直でない僕は思うのだ。





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