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スタックストーバケットとの長い付き合い【フランスLife Plastic社との出会い 前編】


2024年11月8日 悲願の日本製へ

最初にできたのはリトルミィでした

フランスで生まれたバケットが、ついに日本製に。
実に5年もの時間を経て、フランス→スペインと欧州で製造し、間に一瞬台湾を挟んで作り続けてきたバケットが、ついに日本で作れるようになりました。
これまでの長いバケットとの軌跡を残しておこうと思います。

出会いはフランクフルト

フランクフルト中央駅

2011年2月。
毎年ドイツのフランクフルトで行われる欧州最大にして世界最大級の消費財見本市、アンビエンテ(ambiente)に参加していました。
僕にとっては二度目の視察で、前年2010年でこれといった成果も上げられず、この年何か見つけられなかったら出張費も高くつくのでもう欧州は諦めて、今まで通り中国を中心としたアジアでのOEM生産事業で進めていくつもりで来ていました。

そもそも欧州製品に活路を見出そうと考えた理由は、
創業から雑貨屋さんのOEM対応をしてきたわけですが、みんなの頑張りもあって売り上げが上がっていくと、OEMは比例して作業量が増えていくので、残業が増えていくスパイラルに入っていく。
当時、まだ32歳と若かったのでまだやれると思っていたけど、ずっとは続けられないだろうと感じていました。

2010年にアンビエンテを初めて訪れたときは、
このスパイラルを止めるきっかけになるような商材、例えば自社で日本輸入の総代理を務めるような仕事があれば、みんなの負担も軽くできるのではないか、と考えていました。
でも行ってみて、自分の甘さを痛感。

良いと思う商品は既にある日本の会社が代理権を得て販売しているし、
欧州というところは、長い歴史がある企業が多く、あまり新しい企業がどんどん出てくる感じでもなかったんですね。なので老舗企業が新しい商品を出品していることが多く、その新商品だけでも当社で、とは当然なりません。

そんな中、2回目のアンビエンテで、フランス製のバケットと出会うことになりました。

スタッカブルストレージ

OEM事業の中で、神戸の通販の会社さまとのお取引がありました。
木製の小さな引き出しを作ったのですが、これが大ヒットしました。
初回発注を500個をいただき、中国の工場での検品を終えて帰路につこうかという時に、日本から電話がかかってきて、

「大変です、追加注文がもう来てます!」
「え、まだ納品してないのに?何個?」
「10,000個って書いてます!」
「なんかの間違いやろそれ…」

そんなやりとりをして、日本に帰って翌日出社して発注書を確認したら、
確かに10,000個と書いてある。
そして、新たに9,000個の発注も届いている。
そこから1年通して30万個超のご注文をいただくことになりました。

この時でした。スタックストーの原型となるコンセプトを考えついたのは。

収納を必要な時必要な分だけ増やせて、
まとまると家具のようになり、
使う場所を変えたければ分けて使えるし、
狭い日本の居住空間を考えるとやっぱり重なるって素晴らしい。

そして増やして行くときにコレクション要素があって楽しい、と感じるものがつくれると尚いいな、と。

それで2011年、2度目のアンビエンテ視察へ行く前に心を固めました。
今回は重ねられる収納だけを見に行こう、と。
なければ空振り三振で帰ってくる覚悟を持ってフランクフルトへ。

そこに、この後10年にわたってお付き合いをすることになる、フランスのLife Plastic社が出している四角いバケツを発見しました。

「おい、また日本人だ」

ブース内でそう会話している声が聞こえました。
今思えば、本国のイスラエルと、フランスの工場との間で交わす言葉は英語だったから聞き取れたんですね。

「日本人多いの?」
「あ、うん、もう朝から日本人ばっかり来てる。昨日もだけど。」

それもそのはず、日本ではTubtrugs(タブトラッグス)という丸いカラフルバケツが市場を席巻しており、子育て世帯のママがおもちゃ入れに使っていると言う事を、雑貨や家具、インテリアの業界の人はみんな知っていました。
まだインターネットでの物販が今程盛んでは無かった時代なので、家具屋さんや雑貨屋さんでも、大き目の収納グッズも置いていた時代です。

名だたる日本の企業の中で、なぜうちが最終的にこちらの商品を日本へ持ってくることができたのか。

ダメ元でLife Plasticの方には、現地フランス工場での商談を打診していて、メールを数回送るも返事が来ず、もう他で決まったのかなと思い、最後の確認の意味も込めて電話を入れたら、すんなり商談が3月の中頃に決まりました。

で、ここで311、東日本大震災が起こりました。

チケットもホテルも全て押さえたあとだったので、キャンセルもできずもったいなかったことや、
それにより、名だたるメーカーさんたちが渡航を見合わせるなら、
100万に一つのチャンスになるかも、と思って行きました。

元々、皆がやることはあまりやりたくない、皆がやりたがらないことがやりたい、と思っていた節もあったと思います。SARSの時は中国にいましたし、MERSの時は韓国にいました。ちょっとへそ曲がりだと思います。

こんな大変な時にわざわざ来てくれてありがとう、私たちは日本人の震災時の行動をテレビで見て感銘を受けている、と言ってくれたLife Plasticの人たち。
北フランス、カンブレーにあった工場の周辺は、たくさんの自然があふれる風光明媚な場所でした。

沢山の日本の企業からオファーがあり、中には既にサンプルを発送し、
内見会で新商品として紹介し、もう間もなく発注、という九州の会社もある、と。
stackable storage=stacksto (スタックストー)のコンセプトを、日本の居住空間の特性を交えて説明。年末にできたばかりのコンセプトが、付け焼き刃的に聞こえていないか心配しながら、慎重に話しました。

私たちは4名しかいない会社だけど、これを機に新チームを作り、
日本代理権の合意が得られるなら、6月のインテリアライフスタイル展に出展したい、と。今日のミーティングで合意が得られなければ、6月には間に合わない、と、退路を断って説得しました。
結果、1年のうちに3本のコンテナを仕入れることを最低条件に、期限付きで当社に日本販売代理権の合意が得られました。
震災があのタイミングで起こって無かったら、おそらくこの合意は無かったでしょうね。

インテリアライフスタイル展2011

スタックストーという名前で商標登録を済ませ、インテリアライフスタイル展出展に向けて準備を開始。
商品名は、バケット(baquet)としました。
フランスの面々には、あまりこの名前で呼んでくれた人はいませんでした。読みにくいのか、バキュー、とか言ってた人もいましたね。誰がオバQやねん。
でも日本人の僕は、この崩れたスペルもすごく気に入りました。

基本となるスタックストーカラー10色を当時デザイナーとして採用したばかりの小林さんに出してもらいました。
当時のそもそものこちらからのリクエストは、もっとくすんでたんですね。

こちらから依頼したbaquetの色見本

良い感じに?色ブレして届いたサンプルがきれいで。
いつもひやひやさせるLife Plasticからサンプルが届いたのは展示会前日。下手したらブース内に展示する商品なしになる一歩手前でした。手直しする時間が無かったのは、ひょっとしたらそれでよかったのかな。

届いたサンプル。千駄ヶ谷、三福さんとなりの狭い事務所が懐かしい。
なんとか展示。フタはまだ金型ができてなかったのでモックアップでした
作成したカタログ

インテリアライフスタイル展では、もうびっくりするくらいの方々がブースに来てくれて、取引したい、と直接の言葉で伝えてくれました。
自分から言ったことは何度もあったけど、言われたのはこの時初めてだったかも。

そこまで全国の雑貨屋さんや家具屋さんに詳しくない自分でも知っているような名店から、自分が知らなかっただけで有名なお店、業態で言えば雑貨屋さん家具屋さん以外にも、通販、オンラインショップ、インテリアショップ、一部アパレルショップみたいなところも来てくれました。

でもみんな思ってたでしょうね。
あれだけ多数の日本の企業との争奪戦になったはずなのに、どうしてこんな小さな会社がバケットを扱えることになったのか。ご縁だったんでしょうね。

インテリアライフ展での結果をLife Plasticに伝える。
「大変なことになった。凄い反響。一気に注文するけど生産いける?」
「もちろん!」

コンテナ一本に約2~3万個積載できるバケットを、おそらく10本くらい注文しましたね。もっとかな?

この時、自分が悪夢の入り口に立っていたとは、想像すらしえなかったです。

早々に取り上げてくださったCOMOさん①
COMOさん②
愛知県小牧市のフィルトエスティ―さん
日本橋三越さん

ハンドルが切れる

9月前にようやく商品が入荷。
新規取引先との口座開設や諸条件の打ち合わせなども一通り済み、スタックストーの快進撃が始まる!と思っていた矢先、信じられない連絡が届きます。

「ハンドルが切れるんですけど。。」

へ・・・?

予想外の連絡が届くも、まぁそんなこともあるか。強く引っ張り過ぎたのかな。

「うちに届いたバケット、引っ張ったら切れちゃったんですけど。私の取り方が悪かったんですかね。」

へ・・・・?

「持ち手は引っ張ったらダメだったんですかね?」

えええ・・・・???

同じような電話が日増しに増えて、
社内全体に「このまま出荷してて大丈夫かな、、、」という雰囲気が立ち込めます。

毎日の電話に、眉間に皺ができたまんまの事務の石橋さん。
日々の電話対応に追われる営業の外山君。

これはもうたまたまじゃないわ、出荷を止めよう。
僕が最終的に決断したのは、11月に入ったころだったと思います。
9月の発売から、1か月半ほど経ったあとでした。
完全に判断が遅れました。

11月を越えると年末年始の大掃除需要、
2月からは新生活スタートで一気にまた受注が増えるタイミングに入ることが見えていたので、止めるならあそこが最後のタイミングだった。

が、Life Plasticからの出荷が止まらない。
アントワープ港を出た船が東京港に着くまでに約45日かかるんですが、
既に船が日本に向かって出てしまっているものだけでも数コンテナー。(約10万個)

未出荷ながら、完成してしまっているものが数万個。
既に出荷時に商品代金は支払い済み。
このままだと売りが立たない不良在庫が膨れ上がり、数か月後には倒産。
もう完全に取り返しのつかないところまで来ていました。

後編へ。

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