草履を買いに行って、着姿を初めて誉められた日のこと
着物を着て、呉服店さんや和装小物を売るお店を訪れるのは、学習塾の小テストに似ている。
どこを褒められるか、どこが上手くいってるのか、プロの目で採点して貰える機会なのだ。
裏を返せば、ショップのスタッフさんは訪れた客のコーデから「その日の推しポイント」を探して、誉めるのだろう。
だとしても、これまで「ちゃんと、着れてるわよ」としか言われたことのない身にとって、「お太鼓がキレイ」「タレの分量も凄くいい感じ」と言われれば、嬉しいのである。
着物スタイリストの石田節子さんの本にある「綴れ」や「風通」、夏場の麻の帯のふわっとした形に憧れて手に入れたのは、ジャガード織機の八寸名古屋。張りのある帯が作った、お空の雲のようなフォルムが、私の四角いお尻にマッチしていた。
なるほど。着付けというのは、体の特徴を生かすものらしい。
スタッフさんのコーデの推しポイントは、信じられないくらい華奢な滴型の銀細工の帯留めで、小柄というよりも華奢な骨格をした彼女を象徴するようだった。
石田節子さんの「理想の着姿」は女優の沢村貞子さんだそうだ。サバサバした口調が似ている。私も性格なり、体型なり、共通点にある女性をみつけたい。着物のグラビアを見たら、頭の中で自分の顔ではなく、お尻をあてはめてみようかしら?
目下の注目株はNHK、朝の連続ドラマ『らんまん』に出てくる主人公の姉・綾様である。佐久間由衣さんが、演じている。
舞台は幕末・明治維新の高知県。
今週の火曜日の放送では「弟と結婚しろ!」と命じられ、怒って家を飛び出し、裾がはだけるほど、ダッシュしていた綾様の膝から下のまっすぐな感じが、私の足と似ていた。
十年前は『ごちそうさん』が半幅帯を流行らせたと聞くが、今年は綾様の帯枕を使わない「角出し」の着姿が流行るのかしら。「角出し」の練習しよっと。
『スカーレット』を見て焼き物にハマり、『らんまん』を見て着物にハマる、儚く、単純なこの私。
毎朝、オンタイムでテレビにかぶり付き。ひとに話さないのは「あなたは、松坂慶子さんの方でしょう」と言われそうだからだ。