着物コーデは一球入魂!目黒の「時代布・池田」さんで教えられたこと
マイサイズの木綿着物を手に入れ、勢い付いた私は「時代布・池田」さんに行ってみた。お店は目黒の駅を白金方向に出て、徒歩三分の場所にある。たどり着くと、お店に入るタイル貼りの階段に置いたトルソーのコーディネート写真を撮影していた。池田さんはコーディネート写真をS N Sにアップしている。
人気ドラマ『きのうなに食べた』の和服のお母さん(梶美江子さん)によく似た割烹着姿のスタッフさんに店内へ促された私は、棚の小紋を摘んで眺めたりしていたが、自力ではどうにも選べそうにないので、恐る恐る「これに合う半襟が欲しいんですけど」と、仕立て上がった木綿着物に着いていた端切れをバックから取り出して、見せた。
スタッフさんは「あら、片貝木綿ですね。私も好きですよ」と言ってくださったが、柔らかい点が良いという。張りがあって、襟が作りやすいというのが駅ビルの着物屋さんの見解で、拙い思い込みからうろたえてしまったが、お店で人気の「絞り」の半衿の中から、手持ちの帯の色を濃くした一点を選んで貰った。
布地を摘んで糸で括り、染め分ける「絞り」。半衿にはブルー地に無数の小さな白いポツポツがあり、中央が突起していて、紺色に染められている。
半衿は衿を覆う小さな布であるからして、着物のお値段と比べればたわいのないが、初めて「絞り」を手に入れたことが私には嬉しかった。
「もう一着、合わせたい着物があるんですけど、紫色の帯なら、どちらでも使えますか」とたずねると、スタッフさんは「あら」と顔を曇らせた。
「どちらにも合う帯って、あるのかしら……」
曰く、最初からふたつの着物に合う帯を選ぶという行為は、AでもBでもない、AとBの中間にあるCを掴むことになる。色なのか柄なのか風合いなのか、噛み合わないところができてしまう。そして、着物探し、帯探しの追いかけっこが延々と続いてしまうのだ。
「着回し」や「お得」に走って、言い訳をせず、一球入魂で着物選びに取り組むべしと学んだ。
数日後、SNSにあげられていたコーディネート写真を見て、私はハッとなった。藍染の着物に、あの半衿を合わせていたからだ。あの日の私とのやり取りが、スタッフさんの気にかかっているのだとしたら、嬉しい。