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着物用の防寒コートが、欲しい理由

私が通っている長唄三味線教室では、お稽古の節目となる「おさらい会」を冬の節分の時期にやっている。過去には大雪の日に当たった年もあって、会場に集まって来る長唄奏者の先生方は皆、黒紋付の上にウールのコートをお召しだ。雪の朝に黒いコートは凛として美しい。女性演奏家は花街の女性達に近いのだ。

あゝ。本番前の緊張感で、アドレナリンの出た脳に焼き付く記憶……。レッスン生の羨望は唄声や鳴り物、三味線の音だけでなく、ご自身でセットもなさるという夜会巻きのヘアや身に着けたものに及ぶ。

そんな中で『月刊アレコレ』のアンケート特集に「伝統芸能の世界では、未だに羽織は御法度」と書かれているのを見てしまった。なんとしても、おさらい会にはウールのコートを着て行きたくなった。

お稽古の手を休め、YouTubeで見つけた動画は札幌・島呉服店の防寒コート特集。形はいろいろあることがわかったが「防寒コートは市場に出る数が少ない」という意見の人もいて購買欲が募る。私は着付け教室『円居』で出会った「KOTOWA」を即決。購入後は汚したくないので、洋服の日にはコートがすっぽり入るトートバックを持ち歩き、歌舞伎座の観劇中は地下ロッカーに預けている。

さて。午前中から夕方まで続く「おさらい会」だが、自分の出番が終わったら、男性と若手女子は舞台の撤収(敷き詰めた毛氈を巻き上げる作業)で活躍できるように、着物を脱いでしまうのが慣わしだ。

ただし、舞台に上がるには足袋がマストで、足袋を握りしめて仲間の演奏を聞き、客席の隅で履き替える。私は逆に、足袋と草履のままでいる。撤収し終わったら、会場を出る前に足袋を脱いでバレエシューズに履き替える。冷え防止に足袋下ストッキングを愛用しているので、大変に使い勝手が良い。

荷物が多いので三味線と着物は、応援に来た家族に持ち帰ってもらう。和装・洋装の兼用コートなら、行きも帰りも着ていられるので、量が減り、ありがたい。

去年もこのやり方で「おさらい会」を過ごした。パタゴニアのキャンプ用のパンツに草履でいたら「それ、新しいファッション?」とからかわれた。こんな私がお揃いで良いのかと甚だ、戸惑う。

duo coatは洋装・和装兼用。ダブルのピーコートだが、とても、軽い。洋服の場合、I型のシルエットにあうようだ。

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