『欧文活字の銀河(印刷博物館)』〜活字が語る歴史と美—印刷博物館で感じた本の存在感
江戸川橋にある印刷博物館で開催されている『欧文活字の銀河展』に行ってきました。これは、機械工業によって生み出された大量の欧文活字の実物と、その解説を展示したものです。デザインの解説書などで目にする活字の変遷を、実際の金属製の活字の展示とともに見ることができました。
一つ一つの活字を手作業で拾い、組み合わせて本の文字組みを完成させるという地道な作業が感じられる様々な種類の活版は、非常に繊細で、物としての機能美を強く感じました。金属で成型された一文字ずつの活字は、使い続けて摩耗すると再び溶かして成型される。この工程は、30年ほど前までは当たり前に行われていたのに、今ではこうして作られた本を目にする機会も少なくなったと改めて実感しました。
思い返してみると、活版印刷で作られた本は、文字がわずかに凹んでいて、情報を伝えるだけでなく、物理的な存在感や独特の説得力を持っていたように感じます。本を通じて情報を得るだけでなく、多くの人の手を経て自分の手元に届いたという、独特の文化に触れている感覚が、読書体験の一部でもあったのだと思いました。
デジタル化によって、活字という制約がなくなり、今後は単に情報を得たいのであれば、電子書籍やウェブページ、あるいは音声コンテンツや動画から得ることが主流になっていくのでしょう。そうした時代に、本を物として愛する人向けには、より触覚的でビジュアル的な魅力を感じさせる、いわばフェティシズム的な側面を持つマニア向けのものになっていくのかもしれない、と感じました。