『アレック・ソス 部屋についての部屋(東京都写真美術館 2階展示室)〜スマホで切り取る写真の延長線上にあった、アレック・ソスのアメリカの記憶と孤独
webサイトで、こんな写真を観ました。
痩せた白髪の老婆が、こちらを伺うようにじっと見つめている。彼女は柔らかな朝日に包まれた部屋で、不思議な形の椅子に座っている…そんな印象的な写真でした。
アレック・ソスという写真家の作品で、恵比寿の東京都写真美術館で企画展をやっているとのこと。
ちょうど知り合いの作家さんが青山のギャラリーで個展をやっていたので、そこからのんびり歩いて展示を観に行って来ました。
アレック・ソスという写真家については不勉強で知らなかったのですが、マグナム・フォトに所属していた世界的な写真家だそうです。展示会場にはアメリカ中西部を中心に、市井の人々やその生活空間を撮影した作品が並び、家族写真もありましたが、単体の人物を写した作品にはどこかエドワード・ホッパーを思わせるようなアメリカ的な乾いた孤独感が漂っていました。まるで時代の空気が漂い、記憶に残る人々や風景が切り取られているようでした。
会場には多くの観覧者が来ていましたが、どこか個性的で一癖ありそうな人が多く、写真家アレック・ソスの評価や立ち位置がこうした層から見えてくるように思いました。写真家志望の若者やデザイナー、編集者などが多いのかもしれません。
今回は撮影自由の展示だったため、写真を撮りながら鑑賞することにしました。展示までの道すがらも気になる風景をスマホで撮っていましたが、その延長で展示写真も撮ってみると、「こういう情景ならシャッターを切りたいな」と感じたりもしました。構図の工夫により、作者の意図も伝わってくるようでした。
試しに展示写真をアップでトリミングして撮ってみると、印象が変わり、また違った視点で楽しむことができました。かなりの写真が大判サイズに引き伸ばされていましたが、全体が入る構図を意図しているのか、特定の感情や物にフォーカスするのではなく、状況全体を捉えて提示したいという意思を感じました。
気まぐれで足を運びましたが、思いがけず興味深い作品に出会えた展示でした。
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4820.html