『オリバー・ストーン オン プーチン(ドキュメンタリーシリーズ1〜2話)』〜『博士の異常な愛情』を観たプーチンは何を思うのか?オリバー・ストーンによる1年半に渡るプーチンインタビュー
視聴環境:U-NEXT
【内容】
『プラトーン』などの映画監督であるオリバー・ストーン監督によるロシア大統領のプーチンへのインタビューをまとめたシリーズ。
インタビューは、期間を空けて2015年7月〜2017年2月の間に行われた。
【感想】
強面のイメージとは裏腹に、プーチンの物腰は柔らかく、人懐っこい笑顔に軽快なジョーク、そして機転の利いた返しを見せる人物でした。頭脳明晰であり、ロシアやアメリカの経済に関する詳細な統計も把握していました。また、柔道の達人であり、KGB仕込みの暗殺術にも精通していると言われています。
2017年頃にオリバー・ストーンのインタビューを受けたプーチンは、意外にも好印象を与える人物でした。「なるほど、KGBの一員からロシアの大統領にまで上り詰めたのも納得だな」と感心せざるを得ないほどです。こうした人物に、平和な民主主義国家の政治家や外交官が太刀打ちできるわけがありません。むしろ、歴代の名宰相と比べても、プーチンの能力は引けを取らないどころか、むしろ優れているのではないかと感じました。
しかし、ウクライナ戦争前後のプーチンは、緊張した表情の独裁者という印象が強く、当時の彼とは大きく異なって見えました。人は権力を持ち続けると、どれほど優秀であっても、次第に周囲が見えなくなり、独善的になってしまうものなのだと改めて感じました。
インタビューでは、プーチンは非常に論理的に理路整然とロシアから見た世界情勢やアメリカについて語っていました。その内容から、ウクライナ戦争へと至る流れも何となく理解できるように思えました。ロシアから見た世界は常に脅かされており、ロシア自体も経済的な破綻を経験し、再びそのような事態が起こる可能性があるという危機意識が常にあるのだと感じました。
彼の話し方や態度からは、冷酷なサイコパス的な人物というよりも、繊細でありながら自己の危険には人一倍敏感な一面が垣間見えました。長身でがっしりとしたオリバー・ストーンと並んで話す姿からは、その対比がより一層際立っていました。
印象的なシーンの一つに、プーチンがオリバー・ストーンと共に『博士の異常な愛情』を鑑賞する場面がありました。冒頭のプーチンの何とも言えない表情が今でも記憶に残っています。当時のプーチンも、核の発射スイッチを押せる立場にあり、その後もその地位に居続けました。ウクライナ戦争で西側諸国の支援が活発になった際に核使用をちらつかせたことを考えると、今になってこの場面を振り返ると非常に興味深く思えます。あの時、プーチンが『博士の異常な愛情』をどう感じ、その後の彼の行動に影響を与えたのかどうか、非常に気になるところです。
また、プーチンはこの場面でも、小柄な体格で、物怖じしない巨漢のオリバー・ストーンに少し押され気味の印象がありました。
私はこのドキュメンタリーを観た後に調べて知ったのですが、オリバー・ストーンはアメリカ国内で親プーチン派として批判を受けているとのことです。そのため、プーチンとの長時間にわたるインタビューが実現した背景には、対アメリカや対西側諸国へのプロパガンダとしての側面もあったのかもしれません。自分自身も、彼の戦略に半ば乗せられていたのではないかと感じ、複雑な思いになりました。
インタビューの中では、プーチンが住む宮殿に、娘たちが孫を連れて訪れたというエピソードが語られました。カメラには映されていませんでしたが、彼が普段開示しない個人的な情報を知るための貴重な手掛かりとなる場面が多くあったのではないかとも思います。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/オリバー・ストーン_オン_プーチン