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『キング・オブ・コメディ(映画)』〜デニーロが中二病の売れないコメディアン役を演じたサイココメディー(追記:2024.8.3夜)

『キング・オブ・コメディ』(映画)

視聴環境:U-NEXT

※ネタバレします。

【内容】
コメディアン志望の青年が、有名コメディアンから相手にされないことを逆恨みし誘拐、自らのテレビ出演した後、大スターになる。

【感想】
もうやめて、居た堪れない、観たくない!
居た堪れなくなり、再生途中で一旦再生を止めました。
デニーロ演じる勘違い男が、有名コメディアンのジェリーに相手にされないので、友達以上恋人未満的な女性を連れて、ジェリーの別荘に押しかけて、地獄のような空気感の中でジュリーと対峙する…
なんだろう、自分の中の昔のイタい記憶や感情などもない交ぜになって、押し寄せてくる感じでした。
自意識を肥大化させて、イタいこと言ったり話したり、過去の自分のなかったことにしたいあれやこれや…
名優ロバート・デニーロが中二病の中年を、ガチで演じることで、こんなにも居た堪れない気持ちになるものかと思った次第です。

前から映画『ジョーカー』が下敷きにしているとはチラッと読んだりもしていたので、観てみたのですが…
『ジョーカー』はこの映画の物語の構造はそのまんま使っているのだということが良くわかりました。
『ジョーカー』は、主人公を後にヴィランとなる貧困男性としたことで、より人々の貧富の差が激しくなり孤立化した現状を、鋭く描いているのだなあと…

普段感じることがなくなってきていた感情をすごい揺さぶられた映画でした。
すごい映画で、心を意外なところから揺さぶってきました。

また、本来この映画のラストを、現実的に落とし込むと、『ジョーカー』になるんだろうなあと思いました。
というか、『ジョーカー』は『キング・オブ・コント』の後日談としても観れる映画になっていて…
『ジョーカー』の中でデニーロ演じるコメディアンを、犯罪を犯すことで有名になったという作品の中では語られていない設定を付け加えることで…
アーサー(後のジョーカー)は、トークバラエティ収録中にデニーロを銃殺することでカリスマになるという行為が、円環構造として成立するのだなあと…
DCコミックのスーパーヒーローものヴィランを演技巧者のホアキン・フェニックスが演じるという一風変わったスピンオフという以上に、デニーロの古典的な映画を引用し、デニーロ自身にも出演してもらうことで、映画としてより複雑で深いものになっていたのだと改めて感じました。
名画座とかで『キング・オブ・コント』と『ジョーカー』の二本立てて観ると、より楽しめるんでしょうね。

次は『ジョーカー』の続編をやると聞いて、やめておけばいいのにとも思っていたのですが…レディー・ガガも共演するというトレーラー映像を観て、ただならぬ雰囲気を醸し出していたので、俄然興味が湧いてきたりしています。
今度の映画は、どんなプロットで、どんな話を下敷きにした物語になるのか気になっていたりします。

【追記_2024.8.3夜】
スコセッシになんだかの形で、了解は取ったのではないかと思いながら観ていたのですが、そこら辺のことはネットでチラッと調べたのですがわからなかったです。
デニーロが出演していますし、特に裁判沙汰にもなっていないので、なんだかの形で、スコセッシには了解取っているのではないかなあと…
個人的には、こういった形で過去の映画を引用しながら、映画的な文脈を積み重ねていくということを興味深く感じました。
また、それだけではなく映画評論などの役割も、映画に取って大切な要素なのではないかとも思いました。
今回再度調べていたら、スコセッシの『タクシードライバー』も参考にしているのではとの指摘もみて、確かになあと思ったりしました。
この映画は、スーパーヒーローもののヴィランという枠組みに、スコセッシ的な文脈を入れることで、スコセッシ映画でも通常のスーパーヒーローもの映画でも描けない何者かが描き出されているような気がしました。
そこをただ紛い物と見るか、何かを見出すかは、観る人によってかなりグラデーションのある作品なのではないかとも思いました。

【更に追記_2024.8.3深夜】
調べていたら、制作の初期段階でスコセッシに声が掛かっていたようです。そういえば、公開当時そんな話を聞いたような記憶あります。
更に、調べてみたら…
脚本でヴェネチア国際映画祭で金獅子賞も取っていたんですね。
あと、アメリカの評論家の中でも、評価が二分された映画だったというのも、始めて知りました。
ここまである種時代の空気を反映した作品ということで、それだけ人それぞれのセンシティブな部分に触れるので、評価が二分されるのかも知れないですね。
公開当時、トランプの大統領就任などもあって、この映画が妙に生々しく感じられたことを思い出しました。制作者側も、トランプのモノマネで有名な人の起用も考えていたなんて話もあったみたいですし…
トランプが大統領になることを予想していた一部の例外を除いて、殆どの人たちが、混乱した現実の世界と対峙していたからこそのヒット作だったような気がします。
『ジョーカー2』は、アメリカの大統領選挙の1カ月前に公開されるというのは、製作者側はこのタイミングを狙いすましていたということなのかなあとも…
次回作が選挙になんだかの影響を与えることがあるのか、それとも箸にも棒にもかからないような駄作に終わるのか…
そして、今度はどんな戦略を練っているのか…
色々と考えていくと、次回作も観てみたくなりました。


コメディアンが役者として活躍するパターンは古今東西ありますが、ジェリー・ルイスも色々な映画に出演しているんですね。
この映画も未見だと思っていたのですが、子供の頃に『2時のロードショー』が何かで観たことがあったような気がして来ました。
『太陽がいっぱい』も先日初めて観ているつもりでしたが、あの有名なラストシーンを観て、ふと観たことを思い出したこともありました。
夏休みか何かの時に、昼間にテレビを付けたら、あの後味の悪いラストが流れていて、なんともいえない気持ちになったなあとか…
ジュリー・ルイスの出ている映画も、子供頃に観ているような気もするのですが、なんかの機会に出演作を観てみたいとも思いました。

https://eiga.com/movie/54405/

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