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ビーガン(完全菜食主義)食はビタミンB12とカルシウムが不足する
「ビーガン(」は、動物性食品を一切摂取しない食事法として、健康や環境、倫理的理由から多くの関心を集めています。
しかし、ビーガン食が必要な栄養素を十分に提供できるかについては議論が続いています。
今回紹介する研究「Intake and adequacy of the vegan diet: A systematic review of the evidence」では、ヨーロッパのビーガン食実践者を対象に、主要な栄養素の摂取状況と潜在的な健康リスクを評価しました。
本記事では、この研究結果をわかりやすくお伝えします。
ビーガン食とは?
ビーガン食とは、動物由来の食品を一切摂取しない食事法です。
肉や魚だけでなく、卵や乳製品、蜂蜜といった動物性食品も排除されます。
私のように、肉・魚・チーズ・プロテインを愛してやまない人には、絶対にできない食生活です。
ビーガン食は植物性食品が中心となる一方で、特定の栄養素が不足しやすい点が課題として指摘されています。
ビーガン食では以下の栄養素が不足しがちな一方、全体としては健康的な食生活を送っているケースも多いとされています。
研究で何がわかったのか?
この研究では、ビーガン食を実践するヨーロッパの成人12,096名を対象に、特にエネルギー、マクロ栄養素、ミクロ栄養素の摂取状況が調査されました。
主な結果
エネルギー摂取
ビーガンのエネルギー摂取量は1,672~2,055 kcal/日であり、推奨量(23~27 kcal/kg)をおおむね満たしている。不足しやすい栄養素
ビタミンB12、カルシウム、鉄、亜鉛、セレンが不足しているケースが多い。ビタミンB12: 平均摂取量は0.24~0.49 µg/日(推奨量: 2.4 µg/日)。
カルシウム: 平均摂取量は750 mg/日(推奨量: 1,000~1,300 mg/日)。
充足している栄養素
ビタミンCや食物繊維、葉酸などは十分に摂取されている。ビタミンC: 165.3~324.4 mg/日(推奨量: 45 mg/日以上)。
食物繊維: 30 g/日以上。
健康リスクとの関連
一部の栄養素不足が健康リスクを高める可能性が示唆されているが、全員に該当するわけではない。
ビタミンB12とカルシウム不足が体に及ぼす影響
論文では、
微量栄養素と多量栄養素の摂取量が少ないことが必ずしも健康障害につながるわけではない。ビーガン食を摂取する人は、潜在的な食事不足のリスクに注意する必要がある。
とされています。
念のため、ビタミンB12とカルシウムが不足すると出現する可能性がある症状をみてみましょう。
ビタミンB12摂取量が低下すると?
1. 身体的健康への影響
神経機能の維持
ビタミンB12は神経伝達物質の合成に必要で、不足すると末梢神経障害(手足のしびれや感覚異常)が生じる可能性があります。赤血球形成への影響
ビタミンB12が不足すると「巨赤芽球性貧血」が起こり、疲労感や息切れが増えることがあります。
2. 精神的健康への影響
認知機能の低下
ビタミンB12不足は記憶力や集中力の低下、さらには認知症リスクの増加と関連が示唆されています。うつ症状
精神面での安定をサポートする役割があるため、不足すると抑うつや不安感が増加する可能性があります。
カルシウム摂取量が低下すると?
1. 骨の健康への影響
骨粗鬆症
カルシウムは骨密度を維持する上で重要で、不足すると骨折リスクが高まります。骨軟化症
特に成長期の子どもでは骨が柔らかくなり、骨変形が起きる可能性があります。
2. 筋肉と神経への影響
筋力低下
カルシウムは筋肉の収縮に必要で、不足すると筋力低下や筋肉のけいれんが発生することがあります。神経機能障害
血中カルシウム濃度の低下は、テタニー(神経が過敏になる状態)を引き起こします。
3. 心血管への影響
不整脈
カルシウムは心筋の収縮を調節するため、不足すると心臓のリズムが乱れる可能性があります。
まとめ
この研究は、ビーガン食が健康的な選択肢である一方で、特定の栄養素が不足する可能性があることを示しています。ただし、不足が必ず健康リスクに直結するわけではありません。
ビーガン食を実践する際には、栄養バランスを意識し、必要に応じてサプリメントや強化食品を活用することが重要です。
参考文献
Bakaloudi DR, Halloran A, Rippin HL, et al. Intake and adequacy of the vegan diet: A systematic review of the evidence. Clinical Nutrition. 2021;40(12):3503-3521. DOI: 10.1016/j.clnu.2020.11.035