ナインストーリーズ

キーボードで文字入力をしたくなったのでなんか書く
今日唐突にキーボーダー(キーボード打つ人)になりたくなったのでなんか書いてく
普段はどんな長文もiPhoneで書いてて、キーボードよりもiPhoneのが慣れてるからそっちの方が速くかけるんだけど、家でさっき、な、な、な、なんとーー!乾の電池しかも単の四を見つけてしまったんで、これでBluetoothキーボードを復活させればiのPhoneにドッキングできるね??となり
今時世的にもコロナで外出自粛になっておうち時間とか言ってみんな家でゲームしたり、料理したり、ビデオ通話みたいなので飲み会したり、パズルしたり、パズルしながら体幹鍛えたり、してるから自分もそういうこういう状況だからこそできる特別みたいなやつ、まあ実際のとこの自分の生活スタイルとしては1ミクロンとして普段と変わりはないんだけども、その特別感みたいなのは風味だけでも全面に出していきたいなあ思て、おんなじアースの一員としては今の時代感は掴みたいし、時空は捕らえたいなあ思て、そんなこんなでキーボードでも叩いてみっかーてなりました。コーラはじめての時くらい楽しいです。
まあそっちから見る分にはいつもとなんの代わり映えもしないただの文だろうけども。こっちからしたら大違いです。打鍵してんだから。1文字打ち込むのに1もしくは2または3打音が聞こえてきます。まあ貴方くらいの人格者ともなれば、こんな事をいちいち報告しなくとも、少しばかり耳を澄ませれば、僕の入力しているぎこちない打音が、ブルートゥースのトゥあたりでつまずくぎこちない打音が、聞こえてくるだろうとは、トゥースを通じてそちら側まで伝わるだろうとは思いますが、。雫ちゃんもバロンの目を見ただけでバロンが内包していた歴史を物語として浮かび上がらせられたわけだし、人間、五感を総動員させて立ち向かえばそのくらいのリミッターの解除はできるんだろうとは思います。ただそれを一つの感覚として扱えたり捕らえたりできないだけで。
料理とかだってしようとしてそうなったものってか偶然の産物から出来上がったもの多いじゃん?すっごいよね。それがずっと残ってくんだから、言語の解読とかもさあ、ってこれは、ヒエログリフの本読んでた時に仕入れた情報なんだけど、案外、文字を読解するのに活躍する人ってのは、賢さというよりも、これってもしかしてこれのことなんじゃね?っていう妙に言葉と言葉を結びつけるセンスってか、変に勘てか感覚が鋭い人が大きく貢献していったっとそう書いてあった。そういう自分がどうこうというよりもむしろ、外的要素の方が先に違ってくるのならさあ、人の喋る言葉も次第に変わってくると思わない?まあ、それは言葉に限らずだけども。目の前にある同じ出来事に対してでも、先にただあることを言葉にしていくだけにしても違ってくるのなら、変わってくるんじゃないのかなと思う。そしてそういうのが本末転倒っぽくはなっちゃうけど逆に偶然とか発想を発見するのにそこまで導く要因となってるのかもしれない、、なんでこんな話してんだろう??
今日はそんな事がしたいわけじゃなかった。
そう、わてが今日やりたい事、は、ただ一つ。キーボードをただただ打鍵したい。
たったそれだけ。
打つ文字の音を楽しむんだ。何故か?
ナインストーリーズを読み疲れたからです。。
何でサリンジャーの本は薄いのにあんなに読むの疲れるんだろうか??多分すっごくおもしろいから集中力が切らせなくなる。そして集中力が切れた状態では読みたくない。から読むのにも他の本とくらべて時間がかかる。
昨日か一昨日かナインストーリーズを後ろから読んだおかげで物語が鮮明に見えてきてすると案の定、サリンジャーあるあるのジグソーパズルの並べ替え、物語の順番の入れ替えがしたくなった。で昨日か今日か明日かその順番で再々読をしていると、サリンジャーあるあるのその2、台詞や言葉の連結箇所を探して確認していろんなところを行ったり来たりしながら読むというのをやりたくなった。連結箇所というのはサリンジャーはよく別々の場面、それぞれの世界線で会話っていうか問いに対するその答えみたいなのを提示していて、普通の本だと一本の線上を或る一方向に向かって行うことを、サリンジャーこの人はいくつかの過去未来現在いやむしろ世界線さえ関係なく飛び越えて川のように流れる無数の線上を四方八方に同時に飛び散りながらこれをやる。シュタインズゲートかよな。今見てるアニメを適当に言ってみただけだけど、そういうわけでそれを見つけて、色んなとこに線を引いて繋げて〜みたいなことをしてたら、疲れちゃったんだよね。もう死にたいよ。でも死ぬのは痛いだろう?どうせ味合う同じ痛みならやるよりやられたいってのがマゾの本懐じゃん??だから今日はそのままその結合してる部分を合わせたものをただここにうつしていこうかと思って。それなら死の種類変わるけど脳死の状態でも出来そうだし、物語にはならないけれど、物語にならないところで成立する会話みたいなのは出来上がるし、物語が崩れながらも意味は生まれてくるから、いっかなー?みたいな。。古事記でもよく死んだ所から変な神がたくさん生まれてくるでありんしょーーー?ゲロやうんちからだって生まれてくるでありんしょーー?だからいいの。これで。もう眠いし。そんで、おさらいしますと昨日か一昨日かもっと前かの俺が言うには、読む順番としてバナナ→コネティカット→愛らしき口もと目は緑→小舟のほとりで→エズミ→前夜→青の時代→笑い男→テディが正統ルートだと供述してて、それがどうやら、小舟のほとりでで一区切りつきそうなんだ。てか、こちらで勝手につけさせていただいたんで、今日のとこはひとまず小舟のほとりまでを。それ以降は明日以降の俺が読んでからの動向次第ということで。だからもちろんバナナ→コネティカット→愛らしき口もと目は緑→小舟のほとりでの順番で前の方から現れてくる台詞を書いていくつもりです。台詞の並べ替えをしやすくする為物語を並べ替えたわけなので。よし、これくらい何度も繰り返し説明しておけばデスノートを放棄した後の俺でも大丈夫だろう。
ではまず、バナナフィッシュにうってつけの日から。その台詞もしくはお話とそれのページ数を一緒に記していこうと思う。後半になってくると前半と重なる箇所が多々でてくるかもしれんが、僕自身がサリンジャーの思考回路を頭の中に馴染ませたい、染み込ませたいという強い想いに溢れているのでそこは気にせず、自分の暗記目的も兼ねて何度も書いていこう。という気ではいる。表向きにはそういう方向性で行かせてもらおうと思います。でも真相としては、僕脳死してるんで、ん、ここさっきもでてきたな?どこだったっけな?みたいな事に余分な力を使いたくないってのがことの真相。今まで散々やってきたので、それが嫌になってこうして打鍵しているというのにそれをまたここではじめては本末転倒ではないか。なのでそこだけは何卒ご了承ください。
そして各物語ごとに自分が喋りたくなって、台詞そっちのけでまたこうして急に喋りだす瞬間が万が一にもないとは限りません。そんな時も各自各々で察していただき、そっと見守って頂けるとこれまた幸いです。では参ろうかと思います。

バナナフィッシュにうってつけの日

p17、18 《バナナフィッシュにうってつけの日》
「とにかくね、ビンゴが終わったら、その人と奥さんとで、いっしょに一杯やらないかって誘ってくれたのよ。それであたしも付き合ったわけ。その奥さんというのはひどかったわよ。ほら、お母様、ボンウィット(ニューヨーク5番街にある高級婦人服装品で有名なデパートのボンウィットテラーのこと)のショーウインドーで見たあのいやらしいディナードレス覚えているでしょう?お母様が言ったじゃない?あれを着る人はよっぽど小ちゃなー」「あのグリーンの?」「あれをその人着てるのよ。それが全身ヒップといった感じの人なの。そして、シーモアのことを
マジソン街にお店を出してるあのスザンヌ・グラースの親戚かって、何度も何度も訊くのよーあの夫人帽のお店の」

p19 《バナナフィッシュにうってつけの日》
「今年のファッションドレスはどんな様子?」「ひどいもんよ。でも、ケンランたるものね。スパンコールをつけてみたり。もう、何でもいいみたい」

p64 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「メアリ・ジェーン。聞いてよ。あたしはボイシー(アイダホ州の州都)で買ったあの茶色と黄色のドレスを着てた。そしたら、ミリアム・ボールからニューヨークじゃそんなドレス誰も着てないよって言われてさ、あたし一晩中泣いてたじゃない?」
「あたし、いい子だったよね?」

p18 《バナナフィッシュにうってつけの日》
「あれをその人着てるのよ。それが全身ヒップといった感じの人なの。そして、シーモアのことをマジソン街にお店を出してるあのスザンヌ・グラースの親戚かって、何度も何度も訊くのよーあの夫人帽のお店の」

p121,122 《小舟のほとりで》
食堂に通じるスウィング・ドアが開いて、この家の女主人のブーブー・タンネンバウムが台所に入ってきた。二十五歳の小柄でヒップがないみたいな女性で、何色と言えるほどの特色もなければしなやかさもない髪の毛は、ヘア・スタイルなどあらばこそ、ただ耳の後ろに押しこくっているばかり。

p19 《バナナフィッシュにうってつけの日》
「昨夜お父様が言ってらしたんだけど、もしもあんたが一人でどこかへ行って、よく考えてみるというんなら、そのお金くらいお父様は喜んでお出しになるのよ。あんたはゆっくり船の旅を楽しんだらいいわ。お父様とも考えたんだけどー」

※この箇所はナインストーリーズ内にはないんだけど船とかお金を出すとかいう話から、フィッツジェラルドの真珠と毛皮が思い浮かぶので。こういうナインストーリーズ外の話からの引用箇所は次回からもその作品名を記すようにする。

p21 《バナナフィッシュにうってつけの日》
「もっと鏡見て(シーモアグレース)」「ママ、もっと鏡見た?」

p40 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
そして椅子に腰掛けてハンドバックを開き、鏡をのぞいて歯をしらべた。それから口を閉じて上の前歯を強く舐め回し、もう一度鏡に映してみた。

p22 《バナナフィッシュにうってつけの日》
「それが実はただの普通の紺のハンケチだったのよ。ーそばへ寄ってみて分かったの」「あれ、どうやって結ぶのか知りたいわ。とってもかわいらしいのよ」

p23 《バナナフィッシュにうってつけの日》
「君のその水着、いい水着だね。ブルーの水着っていうの、こんなに好きなものないな」シビルは大きく目を見開いて相手を見つめ、それから少し突き出た自分の腹に視線を落とすと「これは黄色よ」と、言った「これはキイロ」「そうかい?もちょっとこっちへ来て」シビルは一歩前に進み出た。「本当に君の言うとおりだ。ぼくはオバカサンだねえ」

p25 《バナナフィッシュにうってつけの日》
「シャロンをきみだと思うことにしたのさ」

p25 《バナナフィッシュにうってつけの日》
「ああ、シャロン・リプシャツか。よくもそんな名前が思い浮かんだもんだ。記憶と欲望を混ぜ合わし、か」

p45〜48 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「ジミー・ジメリーノ」「あら、そう!すてきなお名前ね。で、何処にいるの、ジミーは?教えてちょうだいよ」「ここにいる」「ここのどこなの?」「そうか、わかった。ジミーは架空の男の子なのね。すてきだわ。」「あんたはそう思うかもしれないけれどさ。あたしは一日中これをやられるのよ。ジミーは食事もこの子といっしょにするし、お風呂も一緒なら、寝るのも一緒なの。寝返り打つ拍子にジミーに痛い目をさしちゃいけないからって、この子ったら、ベッドの端っこに寝てるのよ」「でも、どっからそんな名前を思いついたのかな?」「ジミー・ジメリーノ?知るもんですか」「どっか近所の男の子からじゃないかしら?」「近所に男の子はいないのよ。およそ子供ってものがいないんだ。みんなは陰であたしのことを<実りのエロイーズ>ってー」

p128 《小舟のほとりで》
プーブーは、消灯ラッパと起床ラッパが混じり合ったみたいな一種独特のその奇妙な合図を3度続けざまに鳴らした。最後に彼女はまた桟橋の端にしゃがみ込んでもとにもどった格好になったけれど、そこへ戻る動作には、それまでの、何か世間一般の人や小さな男の子には知るべくもない伝統的な海軍魂に突き動かされてでもいるような熱のこもった態度とは打って変わって、いかにも気乗りがしないと言いたげな、しぶしぶそうするといった感じが精いっぱいに滲んでいた。それからふと自分が一人でないことを思い出したような気配を見せ、ちらとライオネルを(謹厳な面持で)見下ろした。

p27 《バナナフィッシュにうってつけの日》
「コネティカット州ホーリーウッドか」と、青年は言った。「ひょっとしたら、そいつはコネティカット州ホーリーウッドの近くじゃないか?」シビルは彼を見やった。「そこがそのまんまあたしの住んでるとこよ」

p35※コネティカットのひょこひょこおじさん

p182 《小舟のほとりで》
どういうわけか知らんが あの夫婦がニューヨークへ行くときまってこの、コネティカット流大はしゃぎとでもいうのかな、あいつをやらかすんだ。

p197 《小舟のほとりで》
コネティカットのどっかに小さな家を買ってさ。むろん遠すぎちゃ困るが、おれたちがまともな生活を送れるぐらいに離れたとこを探すんだ。

バナナフィッシュにうってつけの日はてな具合です。ぼくのやりたいことがなんとなくわかっていただけたでしょうか?ご覧の通りサリンジャーは同じ出来事についても常々何通りかの捉え方、言い方をもってらっしゃるんです。たとえば今、口で話したことを見える出来事として表すとしたらこういうことでね、みたいなかんじで。みたいな。他にも色んな種類ややり方があって。何故そうなったのか?と言えばサリンジャーはですねライ麦畑で捕まえてでの中で言っているように子供がどこかの崖から落ちそうになってるときにまっ先にその子供をキャッチ出来る人でありたいという事を自分の行動指針に掲げている方なんで、やっぱりそれにはどんなイレギュラーバウンドにも対応していかなきゃなんで、そういう訳でこうしてカーナビのルート検索みたいに何通りかの筋道を辿りつつすばやく目的地に辿り着くみたいクセがついたのかもですよね?。この前、日本のプロ野球選手の守備の名手でもある鳥谷選手も同じ内容のような事を違う言葉を使って繰り返し語っていたのを見て、やはりそうなのだなーとこの時と同じようなことを思いました。この人は今守備のコツを伝えようとしているのではなく、自分の身に起きてる事をそのまま言葉にするとしたらそうなる。という感覚でいま喋っておられるんだ。とそう思ったわけです。。分かりますかね??このビミョーなニュアンスの違い??よくわからないという方はYouTubeで鳥谷走っているでも盗塁でも何でもいいので検索して鳥谷のWBCで最終回ツーアウトからもうアウトになったら即試合終了という場面で盗塁する彼の勇姿を今スグにでも目に熱く焼き付ける事をオススメします。ぼくの言わんとしてるところの全てが一瞬で把握できるんじゃないかなあと思うんで、はい。鳥谷の話しはこの辺にしておいてみなさんはこのバナナフィッシュにうってつけの日をどんな風にして読み砕き、噛みちぎりましたか??
てか、楽しかったですか??
サリンジャーってイメージ的に青春小説とか若気のいたりみたいな、あらすじからしてもシーモアの謎の自殺を描くとか書かれてあると、気難しい青年の鬱々しい主張が聞かされるんだろうなぁと少なからず読者はそういうものを期待して読み進めるような気がします。勝手なぼくのイメージで、ですけど。で、実際読んでみてどうでした?ぶっちゃけ何じゃこりゃ??て感じじゃないですか??何がいいたいのかわからぬまま、あ、もうおわり?みたいな、サリンジャーの小説を初めて読む人の結構な人がそういう肩すかしな印象を受けるんじゃないかなあって思います。英語でいうとスルーショルダーですかね(シュタインズゲートでさっき得た知識)そのスルーショルダーこそおそらくサリンジャーをはじめて読んだ人に真っ先に発動するサリンジャーの特殊スキルなんじゃないかなと思います。そうなる原因の一つにぼくが今やってるこういう変な遊びの方に力を入れて文字が並べられているせいと、もう一つがその法則が一つの物語内にも用いられ使われてるからだと思うんです。だからもしバナナフィッシュにうってつけの日を読んでこれってどういうことなの?ていう方がいるのなら、こういう変なことをやり続けているわたくしが少しばかし暗闇に目が慣れてきた独自の個人的視点から受けた印象またはポイントを掻い摘んでお話しいたそうと思います。もし読んだけどこの物語に対してまだその中身が手付かずのままで残ってるという方がおられれば、その中に或る一説としてぼくの高らかに唱え提唱するこの「バナナフィッシュはちんちん説」を組み込んでいただければこれまた幸い至極です。
バナナフィッシュにうってつけの日はなんといってもまずやはり要点としてはバナナフィッシュって何??て所が要点ですよね。ぼくが今見ているアニメのシュタインズゲートでもバナナがよく出てきてバナナはちんちんのことと形容されてオタクの太ったメガネのダルが女の子に下ネタなセリフを言ってもらおうと頑張ります。そこにフィッシュまで着いたら野生感、動物感が増してますますちんちん味は増しますね?この場合そういった意味合いは含まれていると思いますか?と訊くまでもなくまずそれ以外にあり得ないのです。なのでバナナフィッシュにうってつけの日ってどういうお話?と聞かれたら、大まかに言うとちんちんに纏わる話を幼女に向けてバナナフィッシュに例えながら優しくわかりやすく教えてあげるお話。と答えるのが正しい選択技な訳です。しかしぼくの中ではここはあまり注目すべきポイントではなくてですね。ぼくがいいなあーステキー(はーと)サリンジャー節だなー思ったのはむしろそのあとの部分で、ここまで聞いてる感じでは幼女にちんちんについて語る男の話がどう展開すれば素敵になるんだと甚だ疑問に思っておられる方もおられるかもしれませんが、そう早とちりなさらずに、ほんとにとってもステキ(はーと)なお話なんですから!人は見た目ですよ??その素敵な部分をお話しするにあたって、簡単にバナナフィッシュの説明をしておきますと、シーモアが言うにはバナナフィッシュとはバナナのたくさん入ってる穴の中に泳いで入っていく魚で入る時にはごく普通の形をした魚なのだけれど、いったん穴の中に入ってしまうと豚みたいに行儀が悪くなって太ってしまい穴を通れなくなって2度と穴の外には出られなくなってしまうという悲運な魚で、シーモアはバナナ穴の中に入って、バナナを七十八本も食べた奴のことも知ってて、そんなバナナフィッシュの末路は最終的にバナナ熱という病気にかかって死んでしまうらしい。バナナフィッシュとはそんな魚なんだそうです。
そして、その説明後の箇所は重要ポイントになってくるのでここはそのまま本文を書き写しますね。

p30、31《バナナフィッシュにうってつけの日》
「あ、波が来た」不安そうにシビルが言った
「波なんか無視しちまおう。鼻であしらってやるのさ」と、青年は言った「スノビズムといこうぜ」彼は両手にシビルの足首をつかむと、下へ沈めるようにしながら前へ押しだしてやった。浮き袋は鼻を突き出すようにして波頭を超えた。シビルの金髪がびしょ濡れになったけれど彼女が上げた悲鳴にはうれしさが溢れていた。
浮袋がふたたび水平になると、シビルは濡れてぺったり目にかぶさった髪の毛を片手で払いのけ「いま、一匹見えたわよ」と、言った。
「見えたって、何が?」
「バナナフィッシュ」
「えっ、まさか!」と、青年は言った「そいつはバナナを口に加えてた?」
「ええ、6本」とシビル。
青年は、浮袋からはみ出て端から垂れてるシビルの濡れた足の片方をいきなり持ち上げると、その土踏まずのとこにキスした。
「こら!」足の持ち主は振り向いて言った。
「そっちこそ、こらだ!さあ、戻ろう。もうたくさんだろう?」
「たくさんじゃない!」
「お気の毒さま」と、彼は言った。そして岸へ向かって浮袋を押して行った。そのうちにシビルがおり、後は彼が浮袋を抱えて行った。
「さよなら」シビルはそう言うと、未練気もなしにホテルの方へ走って行った。

という部分なんですけど、なんて事のないただの情景が描かれているだけのようにも思えますが、僕的にはこの部分って多分シーモア的にはシビルの事をバナナフィッシュに見立ててるんじゃないかと思うんです。浮袋がバナナ穴のようでそこからシーモアが後ろから押してだしてあげようみたいな、、?そういう見方をするとなんとなく話の辻褄があってきませんか??そして足にキスするのは幽霊じゃない実在を確かめるみたいな意味合いがあるのかなとおもいます。この後シーモアはホテルの自分の部屋に戻ったあとピストル自殺をしてしまうんですが、その部屋に帰る途中一緒にエレベーターに乗り合わせた女性にぼくの足をじろじろ見るなーーーー!ってめちゃくちゃキレちゃうんですよね。ってな所からもそういう意味なのかなーと勝手におもっときました。そんな感じがぼく流バナナフィッシュにうってつけの日の読み方?捉え方です。あとサリンジャーあるあるのその3をあげるとするのなら同じシチュエーションに違うストーリーや役割をあたえるみたいなこともよくやります。たとえばバナナフィッシュではエレベータに乗り合わせた女性にシーモアは怒りますけど、次のお話のコネティカットのひょこひょこおじさんではエロイーズが兵隊さんとエレベーターのなかで一緒にいる事がバレて退学になる。とか、あとシーモアと名前が一緒のグレースっていうお手伝いさんがでてきます。この辺は日本書紀とも似ていて日本書紀にも二つの死体の話が出てきて、もううろ覚えなんですが、たしか王様が太郎(仮)に殺されて、その王様の妃が太郎(仮)に王様を埋めた場所だけでも教えて弔わせてもらえれば私はあなたと結婚します。的なこと言ってその場所を教えてもらい王様の死体を発見した所で妃が太郎(仮)を殺して王様の死体の下に太郎(仮)の死体を埋めて権力に歯向かうとこうなるんだぞ!ハーハッハッハ!!みたいな話がされた後で、別の時代、別の場面ではどーも最近の天気の様子はおかしい。これはなぜなのか??と占い師的な人に聞きに行くと、あそこに死体が2つ一緒になって埋まっとりはせぬか??どうやらそれが原因で災いがひき起こされているようだ。と言われる。と、そこにその死人の事についてよく知る村人がやってきて、その村人曰くそこに埋まっている2つの死体は親友同士で1人が病で亡くなるともう片方はそれを嘆き悲しみ今まで二人で共に生きてきた親友を亡くしてこれからどうして一人で生きていけようかと自死したあとは同じ墓に埋めてくれと頼み自殺してしまう。そういう訳でその墓には二つの死体が一緒に重なって埋められている。しかし、それが災いの元となっているというのなら、二つの死体を分けて別々にそれぞれ埋めるしかない。と死体を分けると天気の異常も元に戻った。めでたしめでたし。という二つの死体に纏わるそれこそ二つの死体のように別々の2つの話があって、それと似てるなーていうので紹介してみました。これは僕の記憶上日本書紀には書いてあって古事記にはなかったような気がするんだけど、あったらすまん。けどこのお話はどちらかというとは古事記的なお話だなーってすごく思った。古事記ってだいたい正当な歴史とその背景として伝えられている歴史との食い違いが多いからそれの本当のところを記すようにって稗田阿礼に頼まれたものなんだけど、その本当のところっていうのは何も真実をそのまま書き記してるって訳じゃなくて、自分たちはこういうことをしているんだよねってかんじで物語の書き方を通して真実を伝えてるっていう真実の伝え方をしている気が勝手にしていて、、奇しくもサリンジャーの小説の書き方ともひじょーに似ていてサリンジャーが好きな人ならきっと楽しめるだろうと思います。はい。ではそんな感じで次に参ろうかと思います

コネティカットのひょこひょこおじさん

p36 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
エロイーズはキャメルのコートの襟を立て、風に背中を向けて待っていた。

サリンジャー キャッチャーインザライ(夏休みの課題)
その前の週に誰かが僕のキャメル(ラクダの毛)のコートを、ポケットに毛皮の裏のついた手袋をいれたまんま、僕の部屋に置いといたのを、誰かに盗まれちゃったんだ。

p 37 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
エロイーズは1942年、彼女の二年生の中ごろに、寮の三階で、ドアを閉めたエレベーターの中に一人の兵隊と一緒にいるところを押さえられ、一週間後に退学した。

p31 《バナナフィッシュにうってつけの日》
ホテルが海水浴客の出入りにあてている地階から、鼻に亜鉛華軟膏を塗った女が一人、青年と同じエレベーターにのりこんだ。

p37 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「なんとかいう子がブロンドだってきっぱり断言してたよ」「ノーノー。絶対よ」エロイーズは欠伸をして「あたしはね、あの子が髪を染めたときに、その部屋にいたみたいなものなんだ。どうしたの?その中にもう煙草ない?」
「いや、いいのよ。手つかずのが一つあるんだ、どっかに」そう言いながらメアリジェーンはハンドバックの中を掻きまわした。

※サリンジャー いまどきの若者たち

p38 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「うちのメードときたらほんとにトンマなんだ」

※小舟のほとりでの冒頭はメード2人の会話から物語が始まる

p39 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「冗談でしょ。電話かけたのはどっち?おまけに2時間も遅刻しちゃってさ。こっちがうんざりするまでいてもらいますからね。あんたの出生に傷がついたって何さ」

p194 《愛らしき口もと目は緑》
「アーサー?そこにいるのか?」
「ああ。いるとも。あのな、どうせあんたを一晩じゅう起こしてしまったんだ、これからあんたのとこへ一杯やりに出かけていっちゃいけないかね?だめか?」

p40 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
そして椅子に腰掛けてハンドバックを開き、鏡をのぞいて歯をしらべた。それから口を閉じて上の前歯を強く舐め回し、もう一度鏡に映してみた。 

p21 《バナナフィッシュにうってつけの日》
「もっと鏡見て」「ママ、もっと鏡見た?」

p44 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「あの子は他人に言わないからね。なにしろ秘密だらけの子なんだ」

p 174、175 サリンジャー ハプワース
いま話題にしている素晴らしい男の子は本音を絶対にもらさない。そこが他の人ともぼくや父さんともちがうところだ。

p44 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「それが傑作なのよ!この子の彼氏。どこへ行くにもいっしょ。何をやるにもいっしょ。もう大変なお熱よ」

※サリンジャー フラニーとゾーイ

p45〜48 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「ジミー・ジメリーノ」「あら、そう!すてきなお名前ね。で、何処にいるの、ジミーは?教えてちょうだいよ」「ここにいる」「ここのどこなの?」「そうか、わかった。ジミーは架空の男の子なのね。すてきだわ。」「あんたはそう思うかもしれないけれどさ。あたしは一日中これをやられるのよ。ジミーは食事もこの子といっしょにするし、お風呂も一緒なら、寝るのも一緒なの。寝返り打つ拍子にジミーに痛い目をさしちゃいけないからって、この子ったら、ベッドの端っこに寝てるのよ」「でも、どっからそんな名前を思いついたのかな?」「ジミー・ジメリーノ?知るもんですか」「どっか近所の男の子からじゃないかしら?」「近所に男の子はいないのよ。およそ子供ってものがいないんだ。みんなは陰であたしのことを<実りのエロイーズ>ってー」

p25 《バナナフィッシュにうってつけの日》
「シャロンをきみだと思うことにしたのさ」

p25《バナナフィッシュにうってつけの日》
「ああ、シャロン・リプシャツか。よくもそんな名前が思い浮かんだもんだ。記憶と欲望を混ぜ合わし、か」

p128 《小舟のほとりで》
ブーブーは、消灯ラッパと起床ラッパが混じり合ったみたいな一種独特のその奇妙な合図を3度続けざまに鳴らした。最後に彼女はまた桟橋の端にしゃがみ込んでもとにもどった格好になったけれど、そこへ戻る動作には、それまでの、何か世間一般の人や小さな男の子には知るべくもない伝統的な海軍魂に突き動かされてでもいるような熱のこもった態度とは打って変わって、いかにも気乗りがしないと言いたげな、しぶしぶそうするといった感じが精いっぱいに滲んでいた。それからふと自分が一人でないことを思い出したような気配を見せ、ちらとライオネルを(謹厳な面持で)見下ろした。

p46 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「目はグリーンで、髪は黒いの」

p192《愛らしき口もと目は緑》
「肌白く薔薇色の頬。愛らしき口もと目は緑」全くどうも決まりの悪い話だけどさ 昔はこの詩を読むといつもあいつのことが思い浮かんだ。あいつの目は緑じゃない 海の貝殻みたいな目だよ、あいつは なのに、とにかくあいつのことが思い浮かぶんだ。

p49 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「つまりあんたにはウォルトのほんとのとこが分かってないんだよ」

サリンジャー キャッチャーインザライ(アックリーコールフィールド)
「ストラドレーターはあれでいいんだ。別に悪い奴じゃないよ。お前は奴を知らないんだ。そこが問題なのさ」

p49 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「あんた、覚えているかな、あの晩のこと 私たちが大学にいた最後の年あのイカれたルイーズ・ハーマンソン(ホールデン・コールフィールド)が、シカゴ(ニューヨーク)で買ったって言って、あの黒い(赤い)ブラジャー(ハンチング)をして(被って)部屋に飛び込んできたじゃない?」メアリ・ジェーンはくすくす笑った。

※キャッチャーインザライの主人公ホールデン・コールフィールドはニューヨークで赤いハンチングを買って寮の自室へと帰宅する。

p49 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「あたしを笑わせてくれる男の子はあの子しかいなかった。しんから笑わせてくれるのはさ」
「あんた、覚えているかな、あの晩のこと 私たちが大学にいた最後の年あのイカれたルイーズ・ハーマンソン(ホールデン・コールフィールド)が、シカゴ(ニューヨーク)で買ったって言って、あの黒い(赤い)ブラジャー(ハンチング)をして(被って)部屋に飛び込んできたじゃない?」
「ウォルトはね、あのときみたいにあたしを笑わしてくれるんだ。話をしてる時がそうなんだな。電話でも手紙の中でもそうなんだ。何よりもよかったのはね、あの子意識しておかしくしようとしないんだよ あの子そのものがおかしいんだ」
「ねえ、煙草一本放ってくれない?」

p191 《愛らしき口もと目は緑》
「君は弱くなんかないよ。頭を使わないだけさ」白髪まじりの男は、女から新しく火をつけたタバコを受けとりながらそう言った。

p50 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「一度あたし、つまづいて転んじまったことがあるんだ。いつもあたしはPXの前のバス停で彼を待ってたんだけど、いつか彼が遅れて来て、ちょうどバスが出るとこだった。追いつこうとして2人で駆け出したんだけど、あたしが転んで足首を挫いちまった。そしたらウォルトがね、〈かわいそうなひょこひょこおじさん〉(ハワードギャリスの連作童話の主人公は〈ひょこひょこおじさん〉という名の親切な年寄り兎でリューマチの足を嘆いている)だなって言うの。あたしの足首(アンクル)ひっかけて言ったのよ。」

p 63 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
エロイーズはスイッチのところへ歩み寄って電灯を消した。だが彼女はそのまま戸口に長いこと佇んでいた。それから急に、暗い中を、ナイトテーブルに駆け寄った。ベッドの脚に膝をぶつけたけれど、夢中で痛みも感じなかった。彼女はラモーナのメガネを手にとった。そして両手で握りしめて固く頬に押し当てた。涙が溢れ出て、眼鏡のレンズを濡らした。「かわいそうなひょこひょこおじさん」何度も何度も繰り返して彼女はそう言った。それからようやく、眼鏡を元のテーブルの上に戻した、レンズを下にして。彼女をながめると、ふらふらしながらラモーナの毛布をベッドの下にたくし込んでやった。ラモーナは眠っていなかった。彼女は泣いていた。さっきから泣いていたのだ。エロイーズは娘の唇に涙に濡れたキスをすると、目にかぶさっている髪の毛を掻き上げてやり、続いて部屋を出た

p53 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「亭主というものは、あんたのことを、男の子のそばへ寄られただけでもむかむかして、ほんとに吐き出しちまう女なんだと、そんなふうに考えたがるものなんだ。冗談でいってんじゃないよ。あたし。そりゃ話す分にはいいさ。でも正直に話しちゃだめ。正直に言うことは絶対にだめよ。前にハンサムと付き合ってたなんて言うときには、それに続けてすぐ、それがどうもハンサムすぎてねって言うんだ。頭の良い子と付き合ってたというんなら、ところがその子ちょっとブってるみたいでとか、知ったかぶりでとか、付け加えるのさ。それをやらないと、亭主ってものは、きっかけをつかむたんびにその子のことを持ち出して、あんたのことをどやしつけるんだから」

サリンジャー キャッチャーインザライ(アックリーコールフィールド)
それはあいつがすっかり自分に惚れこんでるからなんだ。まるで自分が西半球第一の天才だとでも思ってる感じなんだよ。そりゃなかなか賢くはあったよ。しかし、奴はだな、生徒の親たちが学校の成績順位表を見て、「この子は誰?」とすぐそう言ったりなんかする、そういうタイプの天才ではないんだな、だいたいにおいて、つまり、優等生向きではないんだ。ペンシーには、ぼくの考えじゃ、ホールデンよりもずっと成績がいいと思われる奴がいっぱいいたけど、そいつらは実際に会って話をしてみると、賢い奴とはまったく思えないんだよ。つまんなかったり、話がうまく噛み合わなかったりね。そんな経験は珍しくないからな。だけどホールデンの賢さってのはそいつらとは種類が違うのさ。やつの賢さってのは一見したところではなんでもないんだが、俺みたいにあいつを知っている人間に言わせれば、あいつほど話しがいのある奴は学校中何処を探しても見当たらないんだな。そいつは僕も認めないわけにはいかないさ。

p45 サリンジャー キャッチャーインザライ
ストラドレーターのだらしなさは、もっと人目につきにくいんだよ。一見したところでは、なんでもないんだ、ストラドレーターってのは。しかし、たとえばだよ、あいつが髭を剃る剃刀を見てみるがいい。いつもすごくさびててだね、石鹸の泡だとか毛だとかなんとかが、いっぱいくっついてんだ。ちゃんと身なりを整えたあいつを見ると、いつだってきれいに見えはするよ。しかし、僕みたいにあいつを知ってる人間に言わせれば、人目につかないながら、やっぱりだらしのない人間に変わりはないね。あいつがどうしてきちんと見えるように身なりを整えるかというとだな、
それはあいつがすっかり自分に惚れ込んでるからなんだ。自分で西半球第1の美男子と思ってやがんだよ。そりゃなかなかの美男子ではあった。そいつは僕も認めるさ。しかし、奴はだな、生徒の親たちが、学校の年鑑の写真を見て、「このこは誰?」と、すぐそう言ったりする、そう言う種類の美男子なんだな、だいたいにおいて。つまり、年鑑向きの美男子なんだよ、だいたいにおいて。ペンシーには、僕の考えじゃ、ストラドレーターよりもずっと美男子だと思われるのがいっぱいいたけど、そいつらは、年鑑の写真で見ると、美男子に見えないんだよ。鼻がでかいように見えたり、耳が突き出してるように見えたりね。そんな経験は珍しくないからな。

p53 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「亭主というものは、あんたのことを、男の子のそばへ寄られただけでもむかむかして、ほんとに吐き出しちまう女なんだと、そんなふうに考えたがるものなんだ。冗談でいってんじゃないよ。あたし。そりゃ話す分にはいいさ。でも正直に話しちゃだめ。正直に言うことは絶対にだめよ。前にハンサムと付き合ってたなんて言うときには、それに続けてすぐ、それがどうもハンサムすぎてねって言うんだ。頭の良い子と付き合ってたというんなら、ところがその子ちょっとブってるみたいでとか、知ったかぶりでとか、付け加えるのさ。それをやらないと、亭主ってものは、きっかけをつかむたんびにその子のことを持ち出して、あんたのことをどやしつけるんだから」

p183〜 《愛らしき口もと目は緑》
「うん、わかってる。心配するつもりはこれっぽっちもないんだがな、うちの女房ってのは信用ならんのだ。神に誓って。神に誓って信用ならんのだよ。あいつが信用できるのはせいぜい目の届くとこにいるときだけ でもないや、何が届くとこかな、あーあ、虚しいね。俺は頭がどうにかなりそうだよ」
「いつか暇があったらめんどくさがらずにどっかの男の事をあいつに言わせてごらんよ。目に入った男は誰でも彼でも全部「スゴーく魅力的」と、こうなんだから」
「1人前の女だと!あんた、正気か?あいつは一人前の子供だよ!いいか、おれが髭を剃ってるとする よく聞いてくれよ おれが髭を剃ってるとだな、突如としてあいつがうちの向こうの端っこのあたりから大声を出しておれを呼ぶんだよ。何事かと思っておれは駆けつけるさ 髭剃りの真っ最中に、顔中を石鹸の泡だらけにしてあいつの用は何だと思う?あなた、あたし頭がいいかしら?とこうなんだからな。本当だぜ、神に誓うよ。あいつは哀れな女なんだよ」

p54 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「そうだ、話したってしょうがないわよね。よそうよ、こんな話。あんたを憂鬱にするだけだ。ねえ、あたしを黙らせて」

サリンジャー いまどきの若者たち
「ま、その話はやめましょ。あのね、あたし、よく知らないことあれこれいうのきらいなの。わかるでしょ。だから、もうやめましょ。ただピーティはそういうことで私に嘘はつかないと思う、ってこと。それだけ」

p55《コネティカットのひょこひょこおじさん》
あんた、ウォルト(シーモア)が死んだってこともルーには言わないつもり?」

※バナナフィッシュにうってつけの日

p58 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
両膝をつきテーブルの下をのぞいて煙草を探しながら、メアリ・ジェーンは言った「ねえ、ジミーどうなったか知ってる?」
「知るもんか。そっちのあんよ。そっちよ」
「車に轢かれたんだって。傷ましいじゃない?」
「スキッパーがね、骨くわえてたの」ラモーナがエロイーズに言った。
「ジミーに何があったの?」と、エロイーズは訊いた。
「車に轢かれて死んじゃったの。スキッパーがね、骨くわえてたでしょ、そしたらジミーがね、どうしても-」

p56、57 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「彼の連隊がどっかで休養してたんだ。戦闘の合間かなんかでさ 彼の友達がくれた手紙にそう書いてあったんだ。ウォルトともう1人の兵隊さんとで小ちゃな日本のストーブを荷造りしてたんだな。どっかの大佐殿が記念品として故国へ送るというんだって。それとも包み直すというので箱から取り出すとこだったのかな よくわかんないんだけど、とにかくそのストーブにはガソリンやなんかがいっぱい入ってて、そいつが二人の鼻先で爆発したんだな。もう1人の人は片目失明ですんだけどさ」

p107 サリンジャー 他人
「ええ、彼が死んだのは朝方でした。われわれは六人で、たき火をしてそのまわりに立ってたんです。ヒュルトゲンの森の中でした。迫撃砲の砲弾が落ちてきたんです。それも突然。あの爆弾はヒューという音も何も聞こえないんです。ヴィンセントと他の三人が被弾しました。彼は三十メートルほど離れた、衛生兵の指揮所のテントで死にました。砲弾にやられて3分も経っていませんでした」ベイブは何度かくしゃみをしてから、続けた。「おそらく。全身が強烈に痛んで、痛いどころか、ただただ闇の中を漂っているような感覚だったはずです。だから痛みは感じていなかったと思います。きっと、そうです。目は開いていて、こっちの顔は見えていて、言葉も聞こえていたはずですが、何もいいませんでした。最後にこんなことをいいました。たき火が消えそうだ、だれかくべる枝を持ってこいよ できれば、若いやつがいい、彼の口調はご存知じでしょう」

p57 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「約束する。さ、行って。あたし今、キチンなんかに行く気がしないんだ」

p59 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「ふん。あんた飲み物取りに行ってくんないかな?そして瓶ごと持ってきてよ。あたしゃあそこへ入っていくのが嫌なんだ。そこらじゅうにオレンジジュースみたいな臭いがプンプンしちゃってさ」

p61 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「奥様、うちの亭主を今晩ここに泊めちゃいけないかね?あたしの部屋は広いし、亭主は明日の朝に、ニューヨークへ戻ればいいって言うだ。それに外はあんなにひどいしよ」
「あんたのご亭主だって?どこにいるの?」
「それがあの」とグレースは言った「今、キチンに来てるんです」

p181 《愛らしき口もと目は緑》
「おれにはどうも女房の野郎台所でどっかの馬の骨にモーションかけてんじゃないかっていう気がするんだ。どうもそんな気がするよ。あいつ、酔っぱらうと、決まって台所でどっかの野郎といちゃつきやがるんでな」

p59 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
ラモーナはのっしのっしと大男の足どりをまねてゆっくりと部屋を出て行った。

p191 《愛らしき口もと目は緑》
「あいつに必要なのはね、図体のでっかい無口な男 新聞を読んでる最中に呼ばれでもしたら、のっそりとあいつのそばへ寄って行って物も言わずに張り倒す それからまた戻ってきて、読みかけの記事をしまいまで読み続ける こういうのがあいつには必要なんだ」

p62 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「だって、ミッキーが痛くするんだもん」
「誰がですって?」「ミッキーよ」ラモーナは鼻をこすりながらそう言った「ミッキー・ミケラーノ」

※ラモーナの架空の彼氏ジミージメリーノは外に遊びに行った後車に敷かれて死んでしまう。ここでは新しくミッキー・ミケラーノという架空の彼氏に変わっている。フラニーとゾーイの中でも少女にボーイフレンドはいるの?と尋ねるとその少女が2人いると答えるシーンがある

p 63 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
エロイーズはスイッチのところへ歩み寄って電灯を消した。だが彼女はそのまま戸口に長いこと佇んでいた。それから急に、暗い中を、ナイトテーブルに駆け寄った。ベッドの脚に膝をぶつけたけれど、夢中で痛みも感じなかった。彼女はラモーナのメガネを手にとった。そして両手で握りしめて固く頬に押し当てた。涙が溢れ出て、眼鏡のレンズを濡らした。「かわいそうなひょこひょこおじさん」何度も何度も繰り返して彼女はそう言った。それからようやく、眼鏡を元のテーブルの上に戻した、レンズを下にして。彼女をながめると、ふらふらしながらラモーナの毛布をベッドの下にたくし込んでやった。ラモーナは眠っていなかった。彼女は泣いていた。さっきから泣いていたのだ。エロイーズは娘の唇に涙に濡れたキスをすると、目にかぶさっている髪の毛を掻き上げてやり、続いて部屋を出た

p50 《コネティカットのひょこひょこおじさん》「一度あたし、つまづいて転んじまったことがあるんだ。いつもあたしはPXの前のバス停で彼を待ってたんだけど、いつか彼が遅れて来て、ちょうどバスが出るとこだった。追いつこうとして2人で駆け出したんだけど、あたしが転んで足首を挫いちまった。そしたらウォルトがね、〈かわいそうなひょこひょこおじさん〉(ハワードギャリスの連作童話の主人公は〈ひょこひょこおじさん〉という名の親切な年寄り兎でリューマチの足を嘆いている)だなって言うの。あたしの足首(アンクル)ひっかけて言ったのよ。」

p64 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「メアリ・ジェーン。聞いてよ。あたしはボイシー(アイダホ州の州都)で買ったあの茶色と黄色のドレスを着てた。そしたら、ミリアム・ボールからニューヨークじゃそんなドレス誰も着てないよって言われてさ、あたし一晩中泣いてたじゃない?」
「あたし、いい子だったよね?」

p17、18《バナナフィッシュにうってつけの日》
「とにかくね、ビンゴが終わったら、その人と奥さんとで、いっしょに一杯やらないかって誘ってくれたのよ。それであたしも付き合ったわけ。その奥さんというのはひどかったわよ。ほら、お母様、ボンウィット(ニューヨーク5番街にある高級婦人服装品で有名なデパートのボンウィットテラーのこと)のショーウインドーで見たあのいやらしいディナードレス覚えているでしょう?お母様が言ったじゃない?あれを着る人はよっぽど小ちゃなー」「あのグリーンの?」「あれをその人着てるのよ。それが全身ヒップといった感じの人なの。そして、シーモアのことをマジソン街にお店を出してるあのスザンヌ・グラースの親戚かって、何度も何度も訊くのよーあの夫人帽のお店の」

p19《バナナフィッシュにうってつけの日》
「今年のファッションドレスはどんな様子?」「ひどいもんよ。でも、ケンランたるものね。スパンコールをつけてみたり。もう、何でもいいみたい」

愛らしき口もと目は緑

p181 《愛らしき口もと目は緑》
「おれにはどうも女房の野郎台所でどっかの馬の骨にモーションかけてんじゃないかっていう気がするんだ。どうもそんな気がするよ。あいつ、酔っぱらうと、決まって台所でどっかの野郎といちゃつきやがるんでな」

p57 《コネティカットのひょこひょこおじさん》「約束する。さ、行って。あたし今、キチンなんかに行く気がしないんだ」

p59 《コネティカットのひょこひょこおじさん》「ふん。あんた飲み物取りに行ってくんないかな?そして瓶ごと持ってきてよ。あたしゃあそこへ入っていくのが嫌なんだ。そこらじゅうにオレンジジュースみたいな臭いがプンプンしちゃってさ」

p61 《コネティカットのひょこひょこおじさん》「奥様、うちの亭主を今晩ここに泊めちゃいけないかね?あたしの部屋は広いし、亭主は明日の朝に、ニューヨークへ戻ればいいって言うだ。それに外はあんなにひどいしよ」
「あんたのご亭主だって?どこにいるの?」
「それがあの」とグレースは言った「今、キチンに来てるんです」

p182 《愛らしき口もと目は緑》
どういうわけか知らんが あの夫婦がニューヨークへ行くときまってこの、コネティカット流大はしゃぎとでもいうのかな、あいつをやらかすんだ。

p27 《バナナフィッシュにうってつけの日》
「コネティカット州ホーリーウッドか」と、青年は言った。「ひょっとしたら、そいつはコネティカット州ホーリーウッドの近くじゃないか?」シビルは彼を見やった。「そこがそのまんまあたしの住んでるとこよ」

p35※《コネティカットのひょこひょこおじさん》

p197 《愛らしき口もと目は緑》
コネティカットのどっかに小さな家を買ってさ。むろん遠すぎちゃ困るが、おれたちがまともな生活を送れるぐらいに離れたとこを探すんだ。

p183、184 《愛らしき口もと目は緑》
「うん、わかってる。心配するつもりはこれっぽっちもないんだがな、うちの女房ってのは信用ならんのだ。神に誓って。神に誓って信用ならんのだよ。あいつが信用できるのはせいぜい目の届くとこにいるときだけ でもないや、何が届くとこかな、あーあ、虚しいね。俺は頭がどうにかなりそうだよ」
「いつか暇があったらめんどくさがらずにどっかの男の事をあいつに言わせてごらんよ。目に入った男は誰でも彼でも全部「スゴーく魅力的」と、こうなんだから」

p186 《愛らしき口もと目は緑》
「1人前の女だと!あんた、正気か?あいつは一人前の子供だよ!いいか、おれが髭を剃ってるとする よく聞いてくれよ おれが髭を剃ってるとだな、突如としてあいつがうちの向こうの端っこのあたりから大声を出しておれを呼ぶんだよ。何事かと思っておれは駆けつけるさ 髭剃りの真っ最中に、顔中を石鹸の泡だらけにしてあいつの用は何だと思う?あなた、あたし頭がいいかしら?とこうなんだからな。本当だぜ、神に誓うよ。あいつは哀れな女なんだよ」

p53《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「亭主というものは、あんたのことを、男の子のそばへ寄られただけでもむかむかして、ほんとに吐き出しちまう女なんだと、そんなふうに考えたがるものなんだ。冗談でいってんじゃないよ。あたし。そりゃ話す分にはいいさ。でも正直に話しちゃだめ。正直に言うことは絶対にだめよ。前にハンサムと付き合ってたなんて言うときには、それに続けてすぐ、それがどうもハンサムすぎてねって言うんだ。頭の良い子と付き合ってたというんなら、ところがその子ちょっとブってるみたいでとか、知ったかぶりでとか、付け加えるのさ。それをやらないと、亭主ってものは、きっかけをつかむたんびにその子のことを持ち出して、あんたのことをどやしつけるんだから」

サリンジャー キャッチャーインザライ(アックリーコールフィールド)
それはあいつがすっかり自分に惚れこんでるからなんだ。まるで自分が西半球第一の天才だとでも思ってる感じなんだよ。そりゃなかなか賢くはあったよ。しかし、奴はだな、生徒の親たちが学校の成績順位表を見て、「この子は誰?」とすぐそう言ったりなんかする、そういうタイプの天才ではないんだな、だいたいにおいて、つまり、優等生向きではないんだ。ペンシーには、ぼくの考えじゃ、ホールデンよりもずっと成績がいいと思われる奴がいっぱいいたけど、そいつらは実際に会って話をしてみると、賢い奴とはまったく思えないんだよ。つまんなかったり、話がうまく噛み合わなかったりね。そんな経験は珍しくないからな。だけどホールデンの賢さってのはそいつらとは種類が違うのさ。やつの賢さってのは一見したところではなんでもないんだが、俺みたいにあいつを知っている人間に言わせれば、あいつほど話しがいのある奴は学校中何処を探しても見当たらないんだな。そいつは僕も認めないわけにはいかないさ。

p45 サリンジャー キャッチャーインザライ
ストラドレーターのだらしなさは、もっと人目につきにくいんだよ。一見したところでは、なんでもないんだ、ストラドレーターってのは。しかし、たとえばだよ、あいつが髭を剃る剃刀を見てみるがいい。いつもすごくさびててだね、石鹸の泡だとか毛だとかなんとかが、いっぱいくっついてんだ。ちゃんと身なりを整えたあいつを見ると、いつだってきれいに見えはするよ。しかし、僕みたいにあいつを知ってる人間に言わせれば、人目につかないながら、やっぱりだらしのない人間に変わりはないね。あいつがどうしてきちんと見えるように身なりを整えるかというとだな、
それはあいつがすっかり自分に惚れ込んでるからなんだ。自分で西半球第1の美男子と思ってやがんだよ。そりゃなかなかの美男子ではあった。そいつは僕も認めるさ。しかし、奴はだな、生徒の親たちが、学校の年鑑の写真を見て、「このこは誰?」と、すぐそう言ったりする、そう言う種類の美男子なんだな、だいたいにおいて。つまり、年鑑向きの美男子なんだよ、だいたいにおいて。ペンシーには、僕の考えじゃ、ストラドレーターよりもずっと美男子だと思われるのがいっぱいいたけど、そいつらは、年鑑の写真で見ると、美男子に見えないんだよ。鼻がでかいように見えたり、耳が突き出してるように見えたりね。そんな経験は珍しくないからな。

p189 《愛らしき口もと目は緑》
「本当におれ、軍隊に戻るかもしれないんだ。まだはっきりとしたわけじゃないがね。むろんおれだってすき好んでいきたいわけじゃない。避けられるものなら避けるよ。ところがどうしても行かなきゃならなくなるかもしれない。よくは分からんけどね。行けば少なくとも忘却にはなるからな。」

※ナインストーリーズに入ってる「エズミに捧ぐ」はそんな戦争に行く直前から戦争中までを描いた話。そして「対エスキモー戦争の前夜」というタイトルの物語も収録されている。エズミに捧ぐでは戦争中に手紙が届くのだが、その下りはサリンジャーの別の作品「フランスにて」と似ている。そしてその「フランスにて」の主人公が戦争に行く直前のことをを描かれたお話が「最後の休暇の最後の日」。「エズミに捧ぐ」はいわばこの「最後の休暇の最後の日」と「フランスにて」の二つが合わさったかのような内容の話。

p189 《愛らしき口もと目は緑》
「きみは非常に聡明な いや、聡明なはずの男なのに、言うことはまるきり子供じゃないか。」

P190 《愛らしき口もと目は緑》
「でもきみには一つ忘れていることがありはしないかという気がするがね。つまり、ジョーニーはもう一人前の女だということさ」
「一人前の女だと!あんた、正気か?あいつは一人前の子供だよ!」

p191 《愛らしき口もと目は緑》
「あいつに必要なのはね、図体のでっかい無口な男 新聞を読んでる最中に呼ばれでもしたら、のっそりとあいつのそばへ寄って行って物も言わずに張り倒す それからまた戻ってきて、読みかけの記事をしまいまで読み続ける こういうのがあいつには必要なんだ」

p59 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
ラモーナはのっしのっしと大男の足どりをまねてゆっくりと部屋を出て行った。

p191 《愛らしき口もと目は緑》
「君は弱くなんかないよ。頭を使わないだけさ」白髪まじりの男は、女から新しく火をつけたタバコを受けとりながらそう言った。

p49 《コネティカットのひょこひょこおじさん》「あたしを笑わせてくれる男の子はあの子しかいなかった。しんから笑わせてくれるのはさ」
「あんた、覚えているかな、あの晩のこと 私たちが大学にいた最後の年あのイカれたルイーズ・ハーマンソン(ホールデン・コールフィールド)が、シカゴ(ニューヨーク)で買ったって言って、あの黒い(赤い)ブラジャー(ハンチング)をして(被って)部屋に飛び込んできたじゃない?」
「ウォルトはね、あのときみたいにあたしを笑わしてくれるんだ。話をしてる時がそうなんだな。電話でも手紙の中でもそうなんだ。何よりもよかったのはね、あの子意識しておかしくしようとしないんだよ あの子そのものがおかしいんだ」
「ねえ、煙草一本放ってくれない?」

p192 《愛らしき口もと目は緑》
「肌白く薔薇色の頬。愛らしき口もと目は緑」全くどうも決まりの悪い話だけどさ 昔はこの詩を読むといつもあいつのことが思い浮かんだ。あいつの目は緑じゃない 海の貝殻みたいな目だよ、あいつは なのに、とにかくあいつのことが思い浮かぶんだ。

p46《バナナフィッシュにうってつけの日》
「目はグリーンで、髪は黒いの」

p 193 《愛らしき口もと目は緑》
「奴さん、たしかトリプラー(ニューヨーク、マディソン街にある高級紳士服店)だったな、ひょいと入って行って買って来たんだ。おれは付いて行きもしなかったよ。要するに、そういう人柄のいいとこがあいつにはあるんだな。面白いことに、その背広がまたおれの身体に合わなくないんだよ。後ろのあたり ズボンのだぜ 後ろのあたりと、それから丈を少々つめさしただけでぴったりなのさ。」

p135《小舟のほとりで》
ブーブーは息子の顔が見えるように、抱きついてる彼の身体を少し引き離した。それから彼のズボンの後ろへ乱暴に手を突っ込んだので息子は少なからずびっくりしたが、彼女はすぐその手を引っ込めて、シャツの裾をきちんと押し込んでやった。

p194 《愛らしき口もと目は緑》
「アーサー?そこにいるのか?」
「ああ。いるとも。あのな、どうせあんたを一晩じゅう起こしてしまったんだ、これからあんたのとこへ一杯やりに出かけていっちゃいけないかね?だめか?」

p39 《コネティカットのひょこひょこおじさん》「冗談でしょ。電話かけたのはどっち?おまけに2時間も遅刻しちゃってさ。こっちがうんざりするまでいてもらいますからね。あんたの出生に傷がついたって何さ」

P197 、198 《愛らしき口もと目は緑》
とんだ無駄騒ぎさね。これは正直いってニューヨークという街のせいだと思うぜ。ニューヨークで俺たちの知ってる連中は、みんなノイローゼみたいなもんだからさ。

p120、121《小舟のほとりで》
「大体こんなとこに10月の末までもなんだって残るのかね、あたしにゃわけがわからないよ」サンドラは茶碗を下ろしながら苛立たしげに言った「今じゃ誰も水に近づきもしないじゃないのさ。あの変ちくりんな船までももう出さなくなっちまった。あんなものになんだって大事なお金をはたいたものやら、あたしにはわけがわからないよ」サンドラは恨めしそうな目つきで正面の壁を見据えている。「ニューヨークに帰りたいなあ。嘘じゃないよ。こんなイカレタとこなんて、あたし、大嫌いさ」

p199 《愛らしき口もと目は緑》
いいからおとなしく坐っておれと言い、女は手を引っ込めた。

サリンジャー キャッチャーインザライ(夏休みの課題)
僕が出ていってから、先生はしばらく落ち込むかもしれない。だけど、そのうちに奥さんに僕のことを話して気が楽になって、奥さんに部屋を出る前に「アトランティック マンスリー」を取ってもらうんだろう。

小舟のほとりで

p120、121 《小舟のほとりで》
「大体こんなとこに10月の末までもなんだって残るのかね、あたしにゃわけがわからないよ」サンドラは茶碗を下ろしながら苛立たしげに言った「今じゃ誰も水に近づきもしないじゃないのさ。あの変ちくりんな船までももう出さなくなっちまった。あんなものになんだって大事なお金をはたいたものやら、あたしにはわけがわからないよ」サンドラは恨めしそうな目つきで正面の壁を見据えている。「ニューヨークに帰りたいなあ。嘘じゃないよ。こんなイカレタとこなんて、あたし、大嫌いさ」

P197 、198 《愛らしき口もと目は緑》
とんだ無駄騒ぎさね。これは正直いってニューヨークという街のせいだと思うぜ。ニューヨークで俺たちの知ってる連中は、みんなノイローゼみたいなもんだからさ。

p121,122 《小舟のほとりで》
食堂に通じるスウィング・ドアが開いて、この家の女主人のブーブー・タンネンバウムが台所に入ってきた。二十五歳の小柄でヒップがないみたいな女性で、何色と言えるほどの特色もなければしなやかさもない髪の毛は、ヘア・スタイルなどあらばこそ、ただ耳の後ろに押しこくっているばかり。

p18 《バナナフィッシュにうってつけの日》
「あれをその人着てるのよ。それが全身ヒップといった感じの人なの。そして、シーモアのことをマジソン街にお店を出してるあのスザンヌ・グラースの親戚かって、何度も何度も訊くのよーあの夫人帽のお店の」

p128 《小舟のほとりで》
ブーブーは、消灯ラッパと起床ラッパが混じり合ったみたいな一種独特のその奇妙な合図を3度続けざまに鳴らした。最後に彼女はまた桟橋の端にしゃがみ込んでもとにもどった格好になったけれど、そこへ戻る動作には、それまでの、何か世間一般の人や小さな男の子には知るべくもない伝統的な海軍魂に突き動かされてでもいるような熱のこもった態度とは打って変わって、いかにも気乗りがしないと言いたげな、しぶしぶそうするといった感じが精いっぱいに滲んでいた。それからふと自分が一人でないことを思い出したような気配を見せ、ちらとライオネルを(謹厳な面持で)見下ろした。

p25 《バナナフィッシュにうってつけの日》
「シャロンをきみだと思うことにしたのさ」

p25《バナナフィッシュにうってつけの日》
「ああ、シャロン・リプシャツか。よくもそんな名前が思い浮かんだもんだ。記憶と欲望を混ぜ合わし、か」

p45〜48 《コネティカットのひょこひょこおじさん》
「ジミー・ジメリーノ」「あら、そう!すてきなお名前ね。で、何処にいるの、ジミーは?教えてちょうだいよ」「ここにいる」「ここのどこなの?」「そうか、わかった。ジミーは架空の男の子なのね。すてきだわ。」「あんたはそう思うかもしれないけれどさ。あたしは一日中これをやられるのよ。ジミーは食事もこの子といっしょにするし、お風呂も一緒なら、寝るのも一緒なの。寝返り打つ拍子にジミーに痛い目をさしちゃいけないからって、この子ったら、ベッドの端っこに寝てるのよ」「でも、どっからそんな名前を思いついたのかな?」「ジミー・ジメリーノ?知るもんですか」「どっか近所の男の子からじゃないかしら?」「近所に男の子はいないのよ。およそ子供ってものがいないんだ。みんなは陰であたしのことを<実りのエロイーズ>ってー」

p129 《小舟のほとりで》
「今のは提督でなければ聞くことを許されない秘密のラッパなんだ」

p129《小舟のほとりで》
「きみがなぜ家出するのか、その訳を聞かせてくれたら、あたしは知ってるだけの秘密のラッパをみんな吹いてあげる。いい?」

p132 《小舟のほとりで》
小舟のスターンシートの近くのデッキの上に水中眼鏡が一つ転がっていたが、ライオネルは、母親に答える代わりにそのストラップを右足の親指と次の指の間に挟むと、脚をひょいと器用に動かして眼鏡を放り出した。眼鏡はたちまち水中に没した。「えらいわねえ。いい事やるじゃない?」と、ブーブーは言った「あの眼鏡はウェップ伯父さんのものよ。伯父さん、きっと喜ぶわよ」ブーブーは一口煙草を吸った。「昔はシーモア伯父さんのだったんだもん」「かまうもんか」

p133 《小舟のほとりで》
それから、一方のサイドポケットから何かを取り出した。1組のトランプほどの大きさの白い紙包みで、緑色のリボンがかけてある。「これはキーホルダー」こちらを見上げている息子の視線を感じながらブーブーは言った「パパのにそっくり。でも、パパのよりもうんとたくさんキーがついてる。10個ついてるんだ、これ」ライオネルは坐ったまま身を乗り出した。そして両手を伸ばして受け取る構えをしながら「放ってよ」と、言った「ねえ」「ちょっと待ってよね、坊や。少し考えてみなくっちゃ。湖に捨てちまったほうがいいんじゃないかな、このキーホルダー」ライオネルは「それ、ぼくんだぞ」と言った。ブーブーは息子を見下ろしながら肩をすくめて「かまうもんか」と、言った。

p135 《小舟のほとりで》
ブーブーは息子の顔が見えるように、抱きついてる彼の身体を少し引き離した。それから彼のズボンの後ろへ乱暴に手を突っ込んだので息子は少なからずびっくりしたが、彼女はすぐその手を引っ込めて、シャツの裾をきちんと押し込んでやった。

p193《愛ある口もと目は緑》
「奴さん、たしかトリプラー(ニューヨーク、マディソン街にある高級紳士服店)だったな、ひょいと入って行って買って来たんだ。おれは付いて行きもしなかったよ。要するに、そういう人柄のいいとこがあいつにはあるんだな。面白いことに、その背広がまたおれの身体に合わなくないんだよ。後ろのあたり ズボンのだぜ 後ろのあたりと、それから丈を少々つめさしただけでぴったりなのさ。」


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