天空のストラーダ第二巻…峠の茶屋。
天空のストラーダ第二巻より一文。
*
快晴の休日。
ぼくらは相模湾を望める峠の駐車場にいた。
激しい荒波がカモメに割って入る。
どっちもどっちで遊んでいる。
ぼくはそれに合わせて、つま先で地面を突ついた。
綾も口を尖らせ口笛吹いた。
海を挟んだ向こうは三浦半島だ。
真んなかあたりに、白いヨットが2隻浮かんでいる。
けれども、綾は、あれは真鶴半島だと言い張った。
手が届きそうに見えるけど、あれは遠い三浦半島と説明した。
綾はそれを聞くと悔しそうな顔をした。
そして、背伸びをしながら手をいっぱいに伸ばした。
それも、何回も三浦半島をつかもうとした。
「そんなに遠くないよ。ホラ、ね」
手のひらには、なんにもありゃしなかった。
その手を引っ張りながら綾をCB550のリアシートに乗せた。
ぼくらは、三浦半島に向かって峠をくだった。
しばらく走ると、
あんなに近くに見えた三浦半島があとずさった。
走れば走るほど遠くになって、しだいに淡く消えた。
<http://tekustrada.jp/・倉嶋>