天空のストラーダ第二巻…定食屋。
天空のストラーダ第二巻より一文
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海岸通りに朝焼けが射すと、
いつもの定食屋がいつになくボロに見えた。
赤く見えた屋根は赤黒く、白いはずの外壁が砂色だった。
定食屋は店主の婆さんがひとりで切り盛りしている。
婆さんは、婆さんのなかでも年長組で、顔と手が干物のように干からびている。
身体は細くお相撲さんの太腿にも満たない。
いつものアレを注文すると、返事もくれず黙々と作りはじめた。
ぼくはいつものアレを食べ終わり、いつものように「ごちそうさま、地魚がおいしかった!」と言って、婆さんに千円札を渡した。
婆さんは指に唾をつけると、1枚しかない札を数えはじめた。
「倉嶋、この地に来て月日が経ったろうに。あんたも初(うぶ)だね。目の前が海だからって魚がいるわけじゃないよ。経済だよ、経済優先。その魚はね、船に乗って太平洋を泳いできたわけ。わざわざ九州からね、ひひっ」
ぼくは目の前の海が、本物の海なのか疑った。
(http://tekustrada.jp//倉嶋より)