三軒茶屋小僧物語
新コロナ禍の影響で出版が遅れていましたが、書籍・天空のストラーダ(全三巻)
第二巻を7月中旬より全国書店にて発売します。
これも皆様のご支援の賜物と深く御礼申し上げます。
また、文庫本「三軒茶屋小僧物語」の出版を晩夏に予定しています。
小説の舞台は高度成長期、世田谷・三軒茶屋の映画館。小僧三人の愚行・善行が、
きっと笑いと涙を誘うことでしょう。
こちらもよろしくお願い申し上げます。
OSABOW
<三軒茶屋小僧物語より一文>
小僧三人がペッタン、ペッタン、サンダル鳴らして歩いていた。
汚れた素足がぷっくん太くて逞しいのだ。
小僧たちは駄菓子がまだ似合う年頃だ。
小僧と言ってしまったけど、ひとりは女の子だった。おかっぱ刈りだ。半ズボンだから男の子と見間違えたのだ。
ほかの二人は、間違いなく男の子で坊ちゃん刈りだ。だけど、親が髪を刈ったのだろうか、光の加減でジャリッパゲが見える。
すると女の子が急に足を止めポケットから赤い物をだした。
ほかの小僧はその手元をじっと見ていた。
「なんだ、ほおずきじゃないかよ。苦いんだよ、それ。まずいんだよ、それ」
女の子の小さな手が、ほおずきをぐちゅぐちゅと揉みはじめた。
「やさしく揉まないとこわれちゃうよ!」
小僧がそう言うと女の子はほおずきをちょっと噛み、中身を小僧にぶっかけた。
小僧たちはおどけた。
女の子はほおずきを口のなかで数回遊ばせると、ぺっとツバを吐いた。唇を一文字に結び、いたずら顔して男の子を見た。
「ビュビュ、ビュビュ、ブビュー!」
ほおずき笛が鳴った。
小僧たちは大袈裟にズッコケた。
*一文オシマイ