作業ミスの集計
仕事でミスを減らしたい。そこで各自のミスを集計してミス軽減に役立てよう。そんな話が出がちです。ところが期待通りにミスは減りません。
なぜミスをするのか
いきなり、「なぜ、ミスをするのか?」という話。そんなこといきなり言われても答えは出ません。ところが現実にはそういう「質問」のようなものがあります。「なんで失敗したの?」と平然と聞いてきます。
故意にミスをしていない
通常の作業では「故意に」ミスをしません。それをすれば失敗することが分かっているのにやることはありません。組織に迷惑をかけてやろうと思っている場合くらいです。確実ではないけどそう教わった気がする、特に意識はしていないけどそういう手順と思ってやった、教わった手順が面倒なのでやりやすいようにした、などです。はっきりと手順が決まっていない組織では、「私はこういうふうにやっているけど、あなたのやりやすいようにやれば良いよ」というところもあります。まさか!と思うかもしれませんが医療現場では多いです。やりやすいように作業をさせておいて、失敗した時は結果を責めます。
ミスの記録を取ろう
組織によってはあまり記録を重視していないところもあります。そのくせ人には厳しく当たったりもします。ある程度の大きな組織になってくると、ミスを減らす管理をしたがります。そこで、ミスを集計して対策に役立てようとします。
早速「ミス記録」の書式を作成します。いつ、誰が、何を、なぜ、どのように、と4W1H調にします。あとでよく分かるように詳細な情報を書けるようにと。
原因もあった方が良いですよね。やりっぱなしにならないように期限も付けましょう。どう対処したか、いつ終わったか、時間はどれくらいかかったか。いろいろ記載しておけば、後から対策や手順を改善すろときの参考になるかもしれません。
さて、そのたくさんの記録は誰が記録するんでしょうか?
現場の担当者が、ミスをした時に、いつ、私が、何を、なぜ、どうやって失敗したか、原因は何かを考え、いつまでに対処するかを検討し、どういう対処を取るのかを考え、どうやったかを記録し、どれくらいの時間がかかったかを記録しなきゃいけません。
現場ではミスの記録はしない
こういうふうにミスを記録を集めてなんとかしてみようと思っている組織はほぼ何もできません。実際の現場は作業で大忙しなのです。こういうやり方ってどこから仕入れて来るのでしょう?
業種にもよりますが、作業内容を全て記録しているところなら、いちいちミスだけを記録することはありません。医薬品業界などは作業も記録するし、試験の手順も記録しています。特に法律等の縛りがない業界では結果良ければ全て良し、という風潮もあります。そのため作業手順自体が明確でなく、挙句に最終的に失敗した人が責められたりします。設計に問題があっても責められるのは現場ばかりなのです。
そんな環境で、失敗したことをわざわざ報告するなんてことはしません。
全てを記録しよう
作業は基本的に全てを記録するようにすれば良いのです。何時何分にどこにいたとか、そんなのじゃないですが、やっていなければ何が「全て」なのかも分かりませんね。
作業を始める時に、記録を付け始めます。これ、終わってからテキトーに書く人っているんです。テストのような記録になります。理想的っぽいけど、実際と合っていない。単なる不正です。
標準的な作業方法、作業手順を決めなければなりません。製品作りなら、どの部品ロットを使用したか、温度は何℃だったか、混合時間は何分(何時から何時まで)などを記録します。作業フローを作成して、そこに書き込んでいく記録を作ります。作業が終わった時には記録が完成し、仕様の項目がすぐに確認できるようになっています。というか、そうなるように書式を作ります。
途中で異常が起こった場合は、誰に報告するのかを決めておきます。報告された人が次の作業を指示します。どう作業を進めたかも記録します。
トラブルが起こった場合はその場は緊急的に対応するか、十分に検証してから続行するかも判断します。製品によってはそこで継続できない場合もあります。そして、今後はトラブルが起きないようにどういう手順で作業を進めるかを決めておきます。
手順書を作ろう
そんなわけで手順書が必要になります。組織によっては手順書作成専門のチームもいるようですが、大企業に区分されている企業でも自分の担当している仕事の手順書は自分たちで作る、というところはあります。比較的多いのか少ないのかは分かりませんが。いつも時間いっぱいに働いている人では良い手順書を作ることはかなり難しいです。
実際にやってみると、細かいけどどうするか決めておかなければならないことがあったり、やりにくい手順があったり、こうやったら良いかもしれない、と思ったりします。思えるくらい余裕があれば良いのですが、大抵は全く余裕がなくて現状を文書化するので精一杯です。
もう一つが作成するソフトの問題。多くの企業ではマイクロソフトを導入していて、WordかExcelを従業員が使用しています。Wordだと見出し番号がうまく付けられない、社内で統一したい文書フォーマットに従うのが大変、画像が思い通りに配置できない、など。そのせいか、Excelで作られた文書も出てきて、改訂作業の時にページがメチャクチャになったりします。
その相乗効果で、手順書作成、改訂が進まないことがあります。
少しずつ、手順書や記録書式を作る時のWordの使い方、手順書の作り方を紹介できれば、と思います。