【お客様インタビュー】経営者として、個人としての自分と向き合う(いちご株式会社代表執行役社長 長谷川 拓磨様)
今回は、弊社のお客様である、いちご株式会社代表執行役社長 長谷川 拓磨様に、ご相談いただいたきっかけや、これまでの取り組み、また組織およびご自身の変化について、お話を伺いました。
インタビューにご協力いただいた方
長谷川 拓磨 様
いちご株式会社 代表執行役社長
いちごグループは、「⽇本を世界⼀豊かに」という経営理念を掲げ、人々の様々なニーズや社会的課題に対応していくための不動産事業・クリーンエネルギー事業等を展開しています。従来"ハード"として捉えられる不動産を、人々の暮らしをより豊かなものにするための"社会インフラ"として捉えておられるのが特徴で、社内では日々、”サステナブルインフラ”というキーワードが飛び交っています。
グループ内の人的投資にも力を入れておられ、NHKニュース7(2022年11月15日放送)でも、日本のGDPがマイナスになる中で、いちごグループで平均5%、最大9%という大胆な賃上げ(ベースアップ)を行ったことが取り上げられました。
いちごグループの商号「いちご」は、茶の心「一期一会」に由来しており、「人との出会いを大切に」という精神が創業以来脈々と引き継がれているとのこと。現社長の長谷川様は、「人」についての関心が非常に高く、自己理解や他者理解、コミュニケーションの質向上に対する、学びのエネルギーと行動力に、私たちはいつも刺激をいただいています。今回はそんな長谷川社長に、お話を伺いました。非常に貴重なインタビュー、ぜひお読みください!
ご相談いただいたきかっけ
――(てにをは)弊社にご相談いただいた背景を教えていただけますか?
(長谷川社長:以下長谷川)自社で、グループ全体の長期ビジョンを設定し、その実現に向けたロードマップを経営層みんなで作りたいと思っている段階で、さてどうやって進めていこうかと悩んでいました。というのも、どうしても社長である私のトップダウン型で進めてしまいそうで……そうはしたくなかったんですね。ご支援してくださるコンサルティング会社を探している中で、てにをはさんをご紹介いただきました。
実は、てにをはさん以外の会社さんにもご相談していたのですが、岡本さん・大塚さんのお二人にお会いして1時間お話を伺った時点で、私の中では「この人たちだ!」と決めていましたね。
――大変光栄です!ちなみに何が決め手になったのでしょうか?
(長谷川)御社に決めた1 番のポイントは、人の心、心理、そこを大切にした支援をされているということですね。企業って、人なんですよね。一緒にロードマップを作っていこうとしている経営層みんなの気持ちを、どうやってまとめながら共に成長していくか、というところを、まずは私自身がすごく勉強したかった。メンバーにも勉強してほしかった。それが一番の理由です。
それと、通常のコンサルティング会社のご支援は、プロジェクトを作ってある程度型を作り、その型に沿って進めていく、というプロセスを辿ると思っています。そういう会社の中から、今回の私たちのニーズと相性のいいところを選ぼう、はじめはそういう観点でしたが、御社からは、私たちが持っているものをより引き出してくれそうな印象を受けました。「いちごさんがやりたい方向に私たちが合わせて、引き出していきます」という、なんというか、余裕というのでしょうか(笑)。最初のヒアリングの中身から、全然違いました。実際にプロジェクトをご一緒するようになってからも、そこは全く変わりませんでした。
経営層対象のワークショップから始まり、研修やエグゼクティブコーチングへ
――ありがとうございます、大変嬉しいです。ロードマップの策定支援プロジェクトから始まり、その後、長谷川様へのエグゼクティブコーチング、経営層向けの研修等、様々ご支援させていただくようになりましたね。
(長谷川)そうですね、はじめはそこまで全然考えていなかったのですが…。みんなで、お互いの色々な意見を出し合って計画を作っていく、っていうのが会社の本来の姿だと思うのですけど、どうしても私が“社長”という立場ゆえか、1人で張り切っているような、みんなと距離を感じてしまっていて…。
私の人生を振り返ると、幼少期からずっとそういうことが多かったんです。1人で張り切ってしまう。きっと私の持っている考え方や感じ方が、そういった行動に現れているはずなので、その辺りをお二人に紐解いていただきたい、お二人にならそれをしていただけそうだな、と思ったんです。
――初回のエグゼクティブコーチングで、忘れもしないのが、「色々教えてください、先生」とおっしゃったことでした。
(長谷川)覚えています(笑)。まさにそういう気持ちでした。私は心理学を勉強したかったんです。人に興味があって、そのためにはまず、自分を知るということが必要で。その割には、自分には知識が無かった。社長になって、行き詰まっていたのでしょうね。周囲とのコミュニケーションとか、考え方に対して。
当時は、先代の社長が亡くなって1年、彼が居なくなったという実感がじわじわと、あらゆるところに出ていた時期でした。お二人に対しても、すごくカラ元気に接していた時期があって。
ただそこが、コーチングを通してほぐれていったというか。デトックスしたといいますか。体は、欲したものを食べる、というじゃないですか、まさにそんな感じで、お二人からどんどん吸収できる、手に入れられるんじゃないかと…
――実際に手に入りました?
(長谷川)入りすぎですね(笑)。毎月の1時間半(エグゼクティブコーチング)が、もう本当に、楽しみで。ここで自己開示させていただいて、自分の心の反応や行動がどこからきているのかをお二人に相談し、お二人から心のメカニズムを教えていただいたりアドバイスをいただいたりして。私は、それをそのあとすぐに実践するので。
――本当にすぐに実践なさいますよね!
(長谷川)そうなんです(笑)。すぐに実践して、次にまたその結果をお話しして…といういいサイクルができています。これまで学んだこと…質問、傾聴、承認、認知、MBTI、ストレングスファインダー。大好きだった先代の社長を喪った心のケアも、カウンセリングでしていただきました。それから防衛機制や中動態など……今日も面白かった……
心理アセスメントを活用しながら、自他の理解を深めていく
――コーチングの中で、MBTIやストレングスファインダーなど、いくつか心理学のアセスメントなどを使いながらご自分のことを客観視していただく時間をとってきているのですが、いかがですか?
(長谷川)やっぱり人って、その人固有の思い込みを持っていて、自分の考え方や価値観を、他者にも当てはめてしまうと思うんですね。それが、アセスメントを使うことによって、「他者とは同じではないんだ」ということを、本当によく実感できました。客観的に自他を捉えられることで、ビジネスの場においてもコミュニケーションが円滑になります。これはすごくいいことだと思います。
御社にお世話になる前、エマジェニティックス(ハーマンモデル)も使っているのですが、様々なアセスメントが複層的に自分の中に入ってきて、体系的に自他の理解が深まっていると思います。
――ご自身は当初、「経営者としてロジカルで合理的な判断をしてきた」とおっしゃっていましたよね。でも、MBTIのコーチングを通して、実は自分や他者の価値観とか感情、共感というところにすごくスイッチがあり原動力になっているということが分かりました。また、ストレングスファインダーでは「回復志向」が上位でいらっしゃいますが、自然と「足りていない部分、出来ていない部分」に目が行って、そこに手当をするのが大好き。それを他の人は同じようには感じていないのだということで、衝撃を受けておられたのが印象的でした。
(長谷川)そんなこともありましたね!今は、自分の自然なタイプ(注:ユング心理学の類型論に基づくMBTIのタイプ)を受け入れられたので、楽になりましたね。ストレングスについては、1位の「回復志向」。あんなに自分を言い当てている資質って無いなと思いましたね!自分には当たり前すぎて、「そういう人間なんだ」と思ったことすらなかった。「え?これって自分の特徴なの?!」って(笑)。
(長谷川)経営層でも、ストレングスを使ったチームセッションをしていただいたのですが、これがすごく面白かった。例えば、副社長は「回復志向」がすごく下位の方にあって、逆に僕の下位資質である「最上志向」が彼は上位にあって。ああ、だからか!そこか!自分がイラっとするポイントは!っていう(笑)。すごく深く理解できましたね。
MBTIやストレングスファインダーを用いて対話を重ねていくと、相手に対しての適切な距離感がとれたりリスペクトができたりするだけでなく、なぜこの人はこういう反応をするんだろう…ああ、この人のこういう部分が言動に表れているんだな、などの深い理解につながりますね。
一人ひとりの特徴や個性を理解して、その人の自然な反応や自然な責任感をどう引き出せるか?ということに、自分自身がもう少し注力できると、今いる経営メンバーとの関係性ももっと良くなる、と確信しています。なので今は、他の人のことをもっと知りたい、深く知りたいです。
――経営陣同士の会話も増えておられるのではないでしょうか?
(長谷川)そう、すごく増えています。
御社にファシリテーションをしていただいたロードマップ策定のプロジェクトで、経営陣みんなで定期的にコミュニケーションをたくさんとりましたよね。あの時にだいぶ、みんなの中で温まった手ごたえがあったんです。その後自分たちの手でプロジェクトを継続していますが、よい状態が続いています。自分たちでも良いコミュニケーションができるような方法を、少しずつ学べているのだと思います。
より良い社内コミュニケーションのために、様々なトレーニングを実施
――ファシリテーションや、傾聴・承認・質問など、コミュニケーションのトレーニングもしましたね。
(長谷川)はい。ファシリテーション研修も良かったですね…(※ご自身のファシリテーションについて反省されるコメントが続く)
コミュニケーションスキルについては、自分たちに一番足りないのは、「承認」だなと思いました。日々忙しくて、どうしても、相手の気になるところばかりを指摘したりアドバイスしたりしてしまう。特に私は、「出来ていない部分」に自然と目が行きがちなこともあって…
でも、上司部下、横の関係においても、「当たり前だと思っていることを、ちゃんと“言葉で伝える”という行動に移す」ということが、人と人とのコミュニケーションをより良くすることなんだ、ということを、私は実感しましたね。相変わらず質問力については、まだ足りないですが!(笑)
――(お隣にいらっしゃるコーポレート本部長の吉松様に)伺ってもいいですか。長谷川様が以前と比べて変わられたなと感じておられるところはありますか?ご本人を前にして言いづらいかもですが、お二人の関係性だったら聞いても良いかなと思いまして!
(吉松様:以下吉松)そうですね、変わりましたね。周りからもそういう声を聞いています。
(長谷川)ほんと?!言ってよ!!(笑)
(吉松)元々長谷川さんは、会議においてもご自分でバーッと話される方なので、なかなかついていくのが大変で、話す隙が無いというか。それが、最近、まず聴いてくれるようになったと。コミュニケーションしやすくなったという声を聞いています。自分もそう思います。
(長谷川)良かった…!(笑)なかなか言ってくれないんですよ、こういう場でもないと!彼のような人がそう言ってくれるのが嬉しいですね。
――そのほかに、様々な取り組みを通して、組織の中での会話の質や雰囲気は変わったところはありますか?
(吉松)元々、グループ内で会社が複数に分かれているので、「横の仕事は他人事」というような感じがあったと思うんですよね。経営会議もやっていますが、経営会議だと踏み込んだ話になりにくくて。
それが、全社の経営層でああやって集まって、横同士で議論することで、分かり合えることが増えましたし、自分も「ああ、大変なんだね…」と理解してもらえたりして。以前だったら、現場から「ああしてこうして」という一方的なリクエストがあがってきていたのが、もっと寄り添った言葉がけをしてもらえるように変わってきたと思います。
――色々とお話を伺ってきましたが、私たちの介在価値はどこにありましたでしょうか?
(長谷川)第三者の方が入ることによって、身内の人たちの距離が縮まる。これは衝撃的でした。
自分たちは普段近しすぎて、当たり前のことができていない、っていうことを改めて実感しました。日々の業務にみんなまっすぐで、ミッションや役割に真剣だからこそ、そうなってしまう。もちろんそれは大事だけども、やっぱり、横同士を見回して、お互いにお互いを承認することが、すごく大事だなと。
心の余裕が生まれたという感じです。自分たちだけが忙しい、大変なのではなくて、みんな大変だなと。じゃあもっと助けたり助けられたりしなくては、ということが分かって。
横の関係同士で、相互理解を深めて、「あなたも大変なんだね」と声をかけるだけで、それってものすごい承認なんですよね。承認される喜びってすごくあるなと。
お互いがもっとそうできると、ここから先、もっと横連携ができて、もっと会社全体の雰囲気が良くなるんじゃないかなと。そのきっかけをいただいたと思います。
目指す組織の姿とは
――御社の未来のビジョンをお伺いできますか?
(長谷川)会社の将来という観点では、ビジョンを作り、ロードマップを作り、それが浸透していく将来像って、すごく明るいなと思っていて。なので、まずはそれをしっかり仕上げる。私が引っ張るというかたちではなくね。社長が引っ張りゃいいってもんじゃない、っていうのは今回の取り組みを通してすごく実感しましたし、みんなで作り上げていきたいです。
誰かに押し付けられてやる仕事ではなく、一人ひとりの自然な反応やよい責任感が連鎖していくっていうことが、一番自分が望んでいる会社の理想像なんですよね。なので、それが日々生まれるような土壌づくりをする、これこそが経営なのだと、そこに自分は社長として責任を果たすのだと、改めて実感できました。そういう風土の会社っていい会社だと思うし、次の世代にもいい文化が続いて、まさにサステナブルな会社になっていくと思います。
私については、お二人と引き続きこういう時間を持ちたいと思っています。社長としての職責の中で、客観的にこういう対話ができる相手はとても重要です。経営メンバーに相談できることと、第三者のプロだからこそフランクに相談できることがあるので。今までこういうものを受けたことがなかったのですが、あったらいいなとすごく感じた、有難いご支援です。
全部社内で解決することばかりではない。うちは何でもかんでも内製化することが多いのですが、御社のようなプロフェッショナルと出会うことで、外の方から頂ける新しい風や栄養がいっぱいあるということを実感できました。
私たち(経営層)が得たもの、感じられているあったかい気づきみたいなものを、もっと会社全体に行き渡らせられるような、うまく皆に醸成できるようなサポートを、御社には引き続きしていただきたいと思っています。
――本当にありがとうございます。最後に、私たちに応援コメントをいただけると嬉しいです!
(長谷川)ありのままでいいんだ、っていうことをすごく教えていただけるコミュニケーションを、お二人は常に取ってくれる。自己肯定感がなかなか上がらない世の中で、これがどれだけパワフルかということを、私はすごく感じています。
だから御社との取り組みは、結構大変でもみんな楽しくやっている(笑)。すごい雰囲気作りだなと。そこはやっぱり、根本に人間の心理や行動の理解があるからなのでしょうね。そこにお二人のパッションが重なっている。そこにプロフェッショナビリティをすごく感じています。御社に出会える会社や人を増やしていきたいです。ぜひ頑張ってほしいです。これからもどうぞよろしくお願いします。
お話を伺った私たちがかえって励まされた、愛情溢れるインタビューでした。長谷川様、吉松様、いちご株式会社の皆様、本当にありがとうございました!
合同会社てにをはでは、人間科学・心理学をベースとした組織開発や人材育成を行っています。組織の課題の見立て(アセスメント)から行い、打ち手として個別のコーチング・カウンセリングから、管理職~一般社員向けの研修・ワークショップまで、課題に応じてご提供しております。詳しくはお問合せください。