最近こんなご相談増えています ~vol.2 チームビルディング編(前編)~
前回は、合同会社てにをはの最近のご相談事例 営業研修編をお伝えしました。2022年初となる今回は、チームビルディング編についてお送りします!
もくじ
岡本真梨子と大塚万紀子の2人に話を聞いたのは、前回に続き、チームてにをはの松井です!
――(松井)最近のてにをは では「組織に影響力のある大きな変化がおきた」タイミングでのご支援が増えているとのことでしたね。
営業研修以外には、どういった事例があるのですか。
大塚:岡本と私が継続的にご支援している、ある上場企業グループ様の「次世代経営者育成プロジェクト」もまさにそうだと思います。
――ぜひ詳しく聞かせてください!
大塚:その企業様における「組織に影響力のある大きな変化」とは、社長が変わられたということでした。
先代の社長はカリスマティックなお人柄で、一代で会社を成長させ上場までさせた方。大変影響力の大きい方で、マネジメントはトップダウン式、組織文化としては「社長が下ろしてくる指示に忠実に従う」というものだったそうです。
でも、数年前にトップが変わられ、今は大きく組織文化を変えていくフェーズにおられます。
現在の社長は、前社長と二人三脚で会社を成長させて来られた方。ただ、前社長とはまた違う個性を持っておられる方です。今後の会社全体のさらなる発展を見据えて、組織改革は段階的に、配慮をしながら、色々な角度からのアプローチを丁寧にやっていかなければいけないとは分かってはいる。でも、自分たちではなかなかやりきれない。そこで、手伝ってもらえないか、と弊社にご相談いただいたのが最初なんです。
昨年、数か月をかけてご提供したのは、組織文化を変えるためのさらに前段、下準備の部分でした。現在は下準備を終えて、次の段階に入ってきています。
――組織文化を変えるための「下準備」というと?
岡本:第1回でもお話しましたが、組織文化を変えることって、「さあ今日からこう変えましょう!」と言って変わるものではありません。
今までトップダウン型のリーダーシップだったけれど、これからは、全員で決めてそれをみんなでやっていくボトムアップ型に変えるよ!と突然言っても、戸惑いや反発が出てきたりするわけです。
大塚:本当に組織文化を変えるプロセスに入ったら、経営層の方だけでなく、その下のメンバーの皆さんも巻き込んでやっていくことになりますが、今は、そのプロセスよりはもうちょっと手前です。
現在、私たちは、経営層の方々とお会いして、皆さんに、気持ちよく「組織文化を変えよう!」と思ってもらうための土壌づくりをしている段階です。
岡本:今回のプロジェクトは、「組織文化を変えていく」「より強くなっていく」その先に「次世代の経営層を育成していく」というのが本当の目的ではありますが、表としての目的は、『みんなで経営戦略を考えましょう』というものを掲げています。
「そもそも、なぜこんな取り組みをするのか」から始まって、「みんなで経営戦略を考え決めるためには、どのようにやっていくとよいのか」など、さまざまな議論の場を持ってもらい、実際に安心安全の場で、自分の気持ちや個性、他者との違いを体感してもらえるよう、私たちがファシリテーターとして入り、場を作ってご支援しているんです。
――まさに今、ひとりひとりの気持ちや個性を受け止め尊重しながら、変化に戸惑う心をほぐし、より良い未来へとつなげていく(※第1回より引用)ところなのですね。
大塚:そうですね。組織の変容を加速するためにも、個人の関わり、個人の変容へのサポートが必要でしたし、チームビルディングについても重点的にご支援できたと思っています。
――もう少し詳しく教えてもらえますか?
岡本:経営層全員を集めての、複数回にわたるワークショップでは、組織論、ビジョン構築、心理学の理論のレクチャーも行いながら、皆さんに議論していただく時間をたくさん取りました。相互理解を深める過程でのディスカッションにおいては、「問い」を有効に活用いただくことも重視しました。
――「問い」・・・カウンセリングの「質問技法」ですね!
大塚:そうです!「問い」をひとつのツールにしながら、意見交換や相手の意見の深掘りをしていくことをしたんです。
これまではトップダウン型の組織で、質問すること自体が憚られる、そもそも上司に質問をあまりしてこなかった方も中にはいらっしゃり、「問いを投げる」ことにも「問いをかけられる」ことにも、戸惑う方が多かったですね。
改めて、「問い」とは何か?どのような質問技法があるのか?視点が広がらない時にはどんな工夫をすればいいのか?といったレクチャーもずいぶん入れましたし、プロジェクト終盤のプレゼンテーションに向けて、質問スキルのレクチャーも当初の予定より倍近く入れましたね。他には何をお伝えしたかな?
岡本:組織の変化するプロセス、タックマンモデルとか。
――タックマンモデル?
大塚:タックマンモデルとは、心理学者のブルース・W・タックマンが提唱した、チームビルディングにおける発達段階を表したモデルのこと。組織が成長していく段階を、形成期・混乱期・統一期・機能期・散会期という5段階に分けるんですよね。
チームが作られたけども互いにさぐりさぐりの形成期から始まり、各々の考えがぶつかり合い人間関係に揺らぎが出る混乱期、それを乗り越えて、「あ、私たちのチームってこのビジョンに向けてひとつになれるよね」といった共通認識が持てる統一期を経て、さらにそれぞれのスキルや経験をアップさせていって機能して、生産性が高くなる、成果が上がっていく機能期・・・というのがタックマンモデルです。
このモデルをお伝えした理由は、こうした段階を経て組織が成長していくことを、理論として情報として知らないから、チームビルディングにおいて、メンバー同士の混乱や衝突をむやみに避けたり、逆に混乱させたままになっていたりといったことが散見されたからです。
これから、組織文化を変えていくため、組織・チームをきちんと舵取りできるようになるためにも、これは理論としてきちんとお伝えしましたね。メンバーが混乱したり困ったりしないため、また、みだりに退職者を増やさないためにも。チームビルディングの話にも繋がっていると思います。
岡本:チームビルディングの話で言うと、「心理的安全性」のレクチャーもさせていただきました。
成果を出すチームになるためには、まずはチームの心理的安全性が高まる必要があります。近年大変ホットな考え方ですが、トップダウン型マネジメントで成長してきた企業ですと、その概念をご存じない方もまだ多くいらっしゃいます。
ですので、心理的安全性が形成されていないまま様々な取り組みをしようとしても功を奏さないということを、理論やデータを示しながらご説明しました。
まずは、心理的安全性を担保すること。一度仲の良いチームになれたように見えたとしても、混乱期を迎えるのは当たり前のことだから、衝突を恐れてはいけないこと。混乱期を経て、その先にいいチームが現れる、それを信じて、人間同士の深い対話を続け、混迷を抜けていきましょう!という内容を、最初にしっかりとレクチャーしてから、実際のディスカッションに入っていく、という流れで進めていきました。
安心安全な場を作ったうえで、「自分はこういう風に自然に考える」といったご自分の感じ方や、「あなたと私はこんなに違う」「よかれと思って言っていることでも、違う風に受け止める方もいる」などの他者との違いを体感していただく。
その上で、「コミュニケーションではこう工夫しないと、意思疎通がとれないですね」とか、「こうやって聴かないと/訊かないと相手の本音を引き出せないですね」といったことに気づいていただく。質問、傾聴、承認など、カウンセリング技法も、実はたくさん取り入れています!
――まさにお二人が作った心理的安全性の高い「場」で、皆さんがそれぞれの気持ちや個性、他者との違いを少しずつ受け入れ、よりよいチームを作るための気づきに繋げていかれたのですね!
大塚:現社長が、心理学に興味をお持ちで、「科学的な切り口で自分のことを勉強したい」と熱心でいらしたこともあり、ワークショップと並行しながら、MBTIの研修も実施したんです。
岡本:MBTIを序盤に勉強していただいて、すごくよかったと思います!
大塚:MBTIの研修を通して、「コミュニケーションって人によってこんなに違う」と事前に知ってもらっているので、ワークショップでディスカッションのチームを作るときも、あえて違うタイプの人を組み合わせて、「自然にはコミュニケーションがとりづらい」ということを、経験してもらったりもしました。
――コミュニケーションが上手くいかない経験を通して、客観的に相手との違いを感じることは、とても貴重な機会ですね。
岡本:自分にとっては自然で当たり前な「感じ方」「考え方」「表現の仕方」が、他者にとってはまったく自然ではないということを、ワークショップの中の議論を通して体感いただくことで、「自分の部下と衝突するのはもしかしてここが違うから・・・?」「部下になかなか伝わらないと思っていたけどももしかして・・・?」という気づきや、歩み寄り方を持ち帰っていただけました。
大塚:それぞれの個性を『違い』として理解する、どんな方にも「なるほどね」という気づきが理論的にも発生するようなしかけを作れたと思います。
――他者のこと、他者との違いを知る、理解することで、自分への理解も深まりそうですね!
大塚:そう思います。本来のご自身のタイプとは真逆のタイプになろうと、ずっと頑張っていた、という方がすごく多かったんです。例えば、本来は『周りの皆さんの感情やご自身の価値観を大切にしながら物事の判断をする』というFタイプでいらっしゃるのに、上司を真似て『物事を客観的にとらえて論理的に判断をする』という真逆のTタイプを目指して苦しんでおられ、周囲への関わり方が不自然だったり、ご自身が辛い思いをされていたり、など・・・
――「こうあらねば」と、ご自分とは違うものを目指していらしたのですね。
大塚:はい。例えば、ある役員の方が、私達との対話の中で、「自分が目指していた姿と自分本来の指向性が違った」ということにはたと気づかれて、ご自分自身を受け入れた瞬間があったんですね。その時の目の輝き・表情の変化は忘れられませんし、その後の取り組みや成果にも如実に良い影響が現れています。
岡本:そして、こういった取り組みにおいては、社長が組織改革の各プロセスに対して先陣を切って取り組み、自らがご自身に向き合い、胸襟を開いて他の経営メンバーにもその姿勢を見せてくださったことが、何より大きいです。社長自ら、率先して安心安全な場作りをなさったし、傍目で拝見していても驚くほどに変化されました。社長の自己開示の質が変わり、言葉も以前よりとても等身大で率直なものに変わったと感じています。
そして、社長の変化が伝播するかのように、他の経営メンバーの方々も、だんだんとその人らしく、かつ、チャレンジングになってきて、全体としてよい方向に進んでいる手ごたえがあります。
――自分が「自分らしい自分」を目指すリーダーにあふれた組織。想像するだけで魅力的です!
第3回は、実際にどんな変化があったのか、その変化に伴ってチーム(ビルディング)がどう変わったのか、についてお伝えします!
後編に続く
私たち「てにをは」は、心理学・行動経済学などの科学的手法を用い、個人・組織の強みを活かした飛躍を支援する、プロフェッショナルです。
お客様のお困りごとに応じ、それぞれの専門性や強みをかけ合わせてチーム体制でご支援をしています。