最近こんなご相談増えています ~vol.2 チームビルディング編(後編)~
第3回は、前回に続き、最近のご相談事例 チームビルディング編の後編をお送りします!
もくじ
岡本真梨子と大塚万紀子の2人に話を聞いたのは、引き続き、チームてにをはの松井です!
――(松井)第2回では、弊社のワークショップを通して、経営メンバーの方々がより「その人らしく」変化された、というお話を伺いました。実際にはどんな変化があったのでしょうか?
大塚:
前回、「本来のご自身のタイプとは真逆のタイプになろうと、ずっと頑張っていた」という方が多かった、とお話したと思いますが、お1人、印象深い方のケースをご紹介したいと思います。
Aさんという事業部長で、明るく穏やかな印象の方です。その方が管轄されている領域は、会社の基幹事業で、利益に対するプレッシャーも高い。ご本人もそれを感じておられるし、これまでの先輩方や歴々の経営陣の背中を見ていらしたこともあって、「断固たる、強いリーダーこそがリーダーだ」と思われていました。
今回のプロジェクトでも、当初は、印象としては”強い”ワードが並んでいる経営資料を作られたのですが、ご本人がどうもしっくりきていないご様子でした。
個別面談にて、岡本と二人でお話を伺ったところ、ご自分が先頭に立って「行け!ついてこい!やれ!」と言うタイプのリーダーではなく、本当は、メンバーのみんながどうしたいかをしっかりと聴いて、それを大事にしたいと思っていらっしゃると。
その想いと、理想のリーダー像にギャップがあるため、しっくりこない違和感や不安を抱えておられる、ということがわかりました。
そこで、Aさんご自身の思う「リーダー像」について伺ったところ、
「えっ?リーダーって普通、こうあるべきですよね?」と…ワンパターンなイメージしかその方の中にはなかったんです。
――力強く、引っ張っていくのがリーダーだと思いこんでいらしたのですね。
大塚:
そうなんです。
リーダーシップの類型には様々あり、その中のひとつにサーバントリーダーシップというものがある、という解説をしたところ、「それをリーダーシップと呼んでいいんですか?それだったら、ああ、僕のリーダーシップスタイルはそれです!」と。パズルのピースがはまったような。
岡本:
スコーン!と、いきなり顔つきが変わられまして。
――これまでなんとなくモヤモヤしていたご自分の中の違和感がなんだったかが分かり、ご自分が自然と好んでいたスタイルに実は名前があったことを知り、安心されたのですね。
大塚:
「そういう考えがあるのであれば、僕はそっちに行きたいです」とおっしゃいました。
岡本:
とても印象的だったのは、「実は、みんなやりたがらないようなことを拾うのが好きなんです」とおっしゃったこと。メンバーみんながやりたいことをして、そこからこぼれて落っこちていくものを、全部ご自分が拾っていく、本当はそうやって仕事をしていきたいっておっしゃったんですよ。
――それは、当初目指されていたものとは真逆だったんですね?
大塚:
そうなんです!でも、みんな違うのだから、それでいいんですよ、っていう話をして。
Aさんらしいリーダーシップをもう一度考えていただいて、そしてメンバーの皆さんと議論を楽しんでいただいて、そこで出てきたものをマネジメントに反映していくスタイルでいいんですよ!!と背中を押しました。
岡本:
リーダーシップやタイプについては、専門的知見からも、本来のご自分の傾向と違うものを追い求めても、パフォーマンスが出にくい、ということが分かっているんです。ご自分の自然な指向やスタイルに従ったほうがパフォーマンスは上がりますとお伝えしました。
メンバーの皆さんに、思っていることをぜひ率直に打ち明けてみてくださいってお伝えしたところ、面談後、「すぐメンバーみんなと話しました!」とご報告が(笑)。
――早い!!(笑)
岡本:
そこからは出てくるアウトプットが全然違うんです。
前までは、なんというか、肩肘張って作っておられたものが、無理な力みがなくなり、メンバーの皆さんとの率直な対話の上に出てきた、生きた言葉を連ねておられて。
――まさに、それまで持っておられた「こうあるべき」を超えられたわけですね。
大塚:
後日談がありまして。
経営陣でのワークショップにて、「問い」を活用したディスカッションを行いました。人は問われると考えが深まりますから、誰かが一方的に何かを教えるのではなく、相互に「問う」ことで課題やビジョンを明確にしていく、そういったワークショップを私たちはご提供しています。
その場でAさんに、全経営層から「問いを受ける側」の、いわば、”選ばれし者”になっていただいたんです。
そのときのご様子が、なんとも率直で。
他の経営層から受けた問いに対して、「私が」ではなく、「私たちが」という主語で答えていらしたこと。
そして、自部門でまだ話し合えていないことに関しては、「すみません、そこはまだ話し合えていません」と率直にお話なさっていた。
あれほどの立場の方が、同僚かつライバル達の前で、できていないことに対して、自ら口を開くことはとても勇気の要ることだと思うのです。
でもそれを、率直にお話されていた。あの姿勢は本当に素晴らしく、とても印象的でした。ああ、この方は自分らしさを受け入れていくプロセスに入られたのだ、と思いました。
岡本:
質問に答えられない場合、なんとかうまいこと言おうとするじゃないですか、人って。特に立場の高い方は「それっぽい言葉」でキレイにまとめて返してしまいがちです。
でもAさんは、「○○の視点が僕はいつも抜けがちなんです」とか、「△についてはまだ私たちは検討できていないです」ということを率直に仰って、ご自身の在り様といいますか、率直に向き合う姿勢をその場に示された。
Aさんは、気負って自分とは違うタイプのリーダーになろうとするのではなく、自分自身の自然な指向や感情を素直に受け入れ、もっと自身を知ろうとするプロセスに入っていました。Aさんの気負いのない自然な姿、それが、対話を通して、きっと部下に伝わっていたのだと思います。
だからこそ、一緒に一生懸命考えることができている。だからこそ、主語が、「私が」から「私たちが」に変わっていったのだと思います。
問いに真摯に答えるAさんの後ろに、メンバーたちの姿が見えました。感動しましたね。
――まさにAさんがAさんらしく変化されたことで、それに伴ってチームメンバーへの関わりやチーム自体も大きく変化したということなのですね。素敵です!
大塚:
ご自分らしさを受け入れ、ご自分らしさを場に対して発揮することで、全体がチャレンジングに、組織として良い方向に進む、という視点でいうと、Bさんの例もぜひ挙げたいです。
前述の、「問い」を活用したディスカッションで、ある事業部のトップから、CXOのBさんに、サポートをしてほしいというリクエストがあったんです。
そこで、Bさんが、「どのくらいのサポートが必要なんですか?」と問いを投げたところ、ものすごく遠慮がちにリクエストをされたんですね。するとBさんが。
岡本:
「え?それだけでいいの?」って(笑)
大塚:
それに対して、場がどっと湧きまして。
質問された方も、「えっ!?もっと(多くリクエストして)いいんですか?」と、会話が進み始めたんです。
岡本:
きっと、そういったやりとりは、はじめてなさったんだと思います。
Bさんは、ものすごく優秀でいらして、一見すると淡々としたクールな方。でも、個別面談でお話を聴いていろいろ引き出していくと、どうやら、「北斗の拳」や「マッドマックス」の登場人物みたいな人で(笑)
大塚:
実は、ハイプレッシャーな中できわどいコーナーを攻めるのが大変お好きな、チャレンジングな方(笑)。そして、熱いハートを持っておられ、組織の発展のためにメンバーに発破をかけつつも、後方は全力で自分が守りたい、というタイプの方でした。もっとみんなチャレンジしてほしい!ぐいぐいきてほしい!ということをおっしゃっていたんですね。
岡本:
「その感じを、率直に周囲に出したらいいじゃないですか、それが持ち味でいらっしゃるのに!」と個別にお伝えしていたところだったんです。
そこでこのディスカッションになったものですから、「Bさん、何か言うことありますよね?」と私からパスを出してみました。そうしたら、ぽろっと出てきたんです。
「え?それだけでいいの?もっといきなよ!」と。
大塚:
岡本が、場を見て、とてもいいパスを出したと思います。
きっといつもだったら、Bさんは「もっとチャレンジしてもいいのに…こっちに頼ってくれていいのに…」と思いながら、きっと仰らなかったと思うから。これは第三者が介入する価値なのだと感じています。
岡本:
Bさんのような役職の方が、事業部のトップの皆様に背中を押すようなことをおっしゃるから、その場はものすごく湧くわけなんですよ。
「え!いいのか!!」というような、非常にチャレンジングな雰囲気になる。その後に出てくる経営計画も自然と強気なものに変わっていきます。
お互いに腹を割って、またそれぞれのその人らしさを発揮した言動を引き出し、「対話」をこちらがお膳立てをして、きっかけをつくっていく。それができた良い例だなと思います。
――経営メンバーおひとりおひとりが、「こうあるべき」を乗りこえて、その人らしさを受け入れ、また、その人らしさを発揮されることで、周囲の方への関わり方も変化し、周囲の方へも変化が伝播していく様子が伝わってきました!
次回は、てにをは に寄せられるご相談内容の共通項に迫ります!
第4回に続く
私たち「てにをは」は、心理学・行動経済学などの科学的手法を用い、個人・組織の強みを活かした飛躍を支援する、プロフェッショナルです。
お客様のお困りごとに応じ、それぞれの専門性や強みをかけ合わせてチーム体制でご支援をしています。