読書感想文『この部屋から東京タワーは永遠に見えない (集英社単行本)』

何者にもなれなかった物語です。

この本の主人公達(短編集です)はいわゆる私立文系のサラリーマンが多く、私のnote並びにTwitterのfollowはDrが圧倒的に多いので背景は大きく違うと思います。いわゆる記号としての『早慶(医学部医学科は除く)』や『港区』みないな属性の方は少ないと思います。そういう表面的なことではなくて、何物にもなれずに青春を終えて、大人になってしまった人間の自意識に塩を塗る内容です。アカデミアンにもなれず、センター病院でサバイバルもしていない普通のお医者さんにとっては共感できる内容だと思います。逆に功成り名遂げた大先生はこの本をどう読むのかも気になりますが。

やっとできた心のかさぶたを取るような短編集で、青春が終わったアラサー以降の読書におすすめしたいです。Twitterでもサザンオールスターズのyoung loveでも聞きながら読みたいと書いたのは、「来た道を憂いちゃいないが、愛なき世界が闇のように迫りくる」な気分になります。

当直中に読むよりは、当直あけにビールでも飲みながらゆっくりとエモい気持ちになって頂ければと思います。


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