ポンちゃんと紅葉の手
私は、ポンちゃんがお買い物をした時の、レジでお金を払っている後ろ姿が好きだ。
ポンちゃんが、子どもの頃のお話。
ポンちゃんはお兄ちゃんと二人兄妹。何でもお兄ちゃんの真似をしたい。お兄ちゃんの後をついて歩く。
お兄ちゃんは、お兄ちゃんらしく少し偉そうにする。
「ねえ、一緒にゲームやってあげるからさ、持っておいでよ。」
がってんしょうちのすけ!
お兄ちゃんにそう言ってもらうと、ポンちゃんは嬉しくて大急ぎでゲームを準備する。そして、ゲームをしているお兄ちゃんを応援する。あれ?
でも、お兄ちゃんは、密かにポンちゃんのヒーローだ。
お兄ちゃんがお友達とサッカーをする時も、ポンちゃんはしっかりお兄ちゃんについて行く。チーム分けで、ぽんちゃんがお友達に邪魔者扱いされそうになると、お兄ちゃんはすかさず言う。
「こいつさ、走るのめっちゃ早いから」
がってんしょうちのすけ!そう言われては、私は走るしかない!とただただ懸命に走り続けるポンちゃんだった。
***
もっと小さかった頃。
ある日曜日の朝、私が目を覚ますと、二人の姿がない。
あれ?と近所を探すと、雨上がりの道路で、ポンちゃんの自転車の後ろを支えてずっと走ってるお兄ちゃん。ポンちゃんの自転車乗りの練習をしていた。
保育園の遠足の前の日。ポンちゃんは「晴れますように」とてるてる坊主を作ってお願いして寝た。
翌日、保育園から帰って来たポンちゃんにお兄ちゃんが尋ねた。
「遠足どうだった?」
「雨が少し降ったから、行けなかった。」
残念そうに言うポンちゃんに、お兄ちゃんは魔法の言葉をかけた。
「てるてる坊主さん、大きすぎて途中でお腹すいちゃったんだね。」
ポンちゃん、お兄ちゃんがいてよかったね。
***
ポンちゃんが小学生の頃。
ポンちゃんは、いつでも慎重な子だった。
日曜日恒例、私のお買い物タイム。
主人と子ども達はゲームコーナーで待っている。
その2時間くらいの間好きに使いなさい、と子ども達にそれぞれ300円ずつ持たせる。ポンちゃんは、お金を握りしめてずっと品定めをする、延々と。
ポンちゃんの頭の中では、きっと小さな小人達が白熱の会議をしていたのだろう。どのゲームで遊ぶべきか。
結局時間切れで、「使わなかった」と父にお金を返すポンちゃんの姿を想像すると可愛らしい。
ポンちゃんは大きくなっても、レジでお金を払う後ろ姿が、心もとなく不安気で何故か愛おしくなる。マフラーとか巻いてコート着てモコモコになってる、それでお財布からお金を出す後ろ姿が、ぎこちなさ気で可愛らしい。お金を払ってもまだ、これで良かったのかなぁって落ち着かないのかな。
***
ポンちゃんは、この9月に母になる。
女の子のママになる予定。ポンちゃんはきっと、何から何まで慎重にお買い物をして、赤ちゃんにお洋服を着せるのだろう。「これで良いかなぁ、こっちかなぁ」また脳内の小人さん達が忙しい。
いつか紅葉のような手を握って歩くのだろう。
お兄ちゃんのところも、昨年末に女の子が生まれている。
二人の女の子と、二人のママが手を繋いで歩くのを想像するだけで
ああ、平和だ。ありがとう、平和。
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