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ISO 30414の統制範囲(Span of Control)を開示するメリット・デメリットとその難しさ

はじめに

こんにちは、「データ分析やりたくて人事部に入ったわけじゃないのに」です。
ISO 30414には「統制範囲(Span of Control)」というものがあり、「1人の管理者が効果的に監督できる部下の数」を表します。
この数値は多いから良い、少ないから良いというものではありません。
参考とする目標値はあるものの、企業や部署の特性によって最適な数値も変わってきます。
今回は、統制範囲を開示するメリット・デメリット、目標値、そして開示することの難しさについて考察してみたいと思います。

1. 統制範囲(Span of Control)とは?

(1) 統制範囲の定義

統制範囲とは、「1人の管理者が効果的に監督できる部下の数」を指します。
ISO 30414では、企業の統制範囲の状況を明確にし、管理者と部下の関係を評価することが求められます。
一般的には、適切な統制範囲が維持されていることで、効率的な管理とコミュニケーションが可能となります。

(2) 統制範囲の重要性

適切な統制範囲は、組織の効果的な運営に直結します。
管理者が監督する部下の数が適切であれば、管理の質が向上し、部下のパフォーマンスやモチベーションが高まります。
反対に、統制範囲が広すぎると管理が行き届かず、部下の育成や支援が不足する可能性があります。

2. 統制範囲を開示するメリット

(1) 経営の透明性向上

統制範囲を開示することで、経営の透明性が向上します。
投資家やステークホルダーに対して、企業がどのように人的資本を管理しているかを明確に示すことができ、信頼を得ることができます。
不適切な場合は、「この企業はきちんと部下をマネジメントできていない」と投資家が不安を持つことになるでしょう。
また、適切な統制範囲を維持している企業は、効果的な管理体制をアピールすることで、企業価値を高めることができます。

(2) 内部改善の促進

統制範囲のデータを開示することで、内部の改善点を明確にすることができます。
管理者が適切な人数を監督できているかを確認し、不足している場合は管理体制の見直しを行うことで、組織全体の効率を高めることができます。
また、開示されたデータを元に、より効果的な組織設計や管理手法の導入を検討することができます。

(3) ベンチマークの確立

統制範囲の開示は、業界内でのベンチマークを確立するのにも役立ちます。
他社のデータと比較することで、自社の管理体制の強みや弱みを客観的に評価し、改善のための具体的な指針を得ることができます。
全社の数値は正常でも、部署によっては異常な場合もあります。
そのため、全社ベンチマークだけでなく、部署別ベンチマークも取得し、自社・自部門との比較を行うと良いです。

3. 統制範囲を開示するデメリット

(1) 競争上のリスク

統制範囲のデータを公開することで、競合他社に自社の組織構造や管理体制の情報を提供するリスクがあります。
これにより、競争上の不利を被る可能性があり、企業は開示する内容を慎重に検討する必要があります。
「投資家からの信頼を得ること」と「競合への情報提供を控えること」のトレードオフになってきます。

(2) 過剰な負担

統制範囲のデータを収集し、正確に開示するためには、時間とリソースが必要です。
特に中小企業にとっては、このようなデータの収集や分析にかかる負担が大きく、労力に見合った効果が得られない場合もあります。
ISO30414の開示義務化が進むにつれ、人力ではどうにもならず、ツールの選定・導入が不可欠になります。
多くの企業でSAP等のERPの導入が一般的になっていますが、ゆくゆくは人的資本についても同じような状態になると推察しています。

(3) 誤解や誤用のリスク

統制範囲の数値は、その企業の特性や業界によって適切な範囲が異なるため、単純に他社と比較するだけでは誤解を招く可能性があります。
また、数値が低すぎる場合や高すぎる場合、それをどのように解釈するかによっては、誤った結論を導き出すリスクもあります。
そのため、単なるデータ可視化の技術だけではなく、組織・人事の知見を持った人事部の力が今後さらに求められていくと思います。

4. 統制範囲の目標値

(1) 一般的な目標値

統制範囲の目標値は、業界や企業の規模によって異なりますが、一般的には1人の管理者が5〜10人の部下を監督することが効果的とされています。
これにより、管理者は部下のパフォーマンスを把握し、適切なサポートを提供することが可能になります。

(2) 組織の特性に応じた目標設定

企業は、自社の組織構造や業務内容に応じて統制範囲の目標を設定する必要があります。
例えば、技術系の部門では、より専門的な支援が必要なため、管理者が監督する部下の数を少なく設定する方が良い場合があります。
反対に、比較的標準化された業務を行う部門では、統制範囲を広く設定しても効果的に管理できることがあります。

5. 統制範囲を開示することの難しさ

(1) データの正確性と一貫性

統制範囲のデータを開示するためには、データの正確性と一貫性が重要です。
しかし、実際の管理体制が流動的である場合や、組織再編が頻繁に行われる場合には、正確なデータを収集することが難しいです。
また、各部門や管理者ごとに異なる基準でデータを収集している場合、一貫性のあるデータを提供することが難しくなります。
やはりツールの選定・導入は不可欠ですね。

(2) 開示に伴う解釈の難しさ

統制範囲の数値を開示することは、そのままでは効果的な情報提供とは限りません。
適切な解釈を行うためには、数値だけでなく、背景や文脈、組織特有の要因を考慮する必要があります。
これにより、開示されたデータが正しく理解され、効果的に活用されることが求められます。
財務諸表の人材版を作っていく必要がありますが、まだまだ未発展の市場なので、あらゆる企業が苦労していくことになると思います。

終わりに

ISO 30414における統制範囲の開示は、経営の透明性を高め、内部改善を促進するための重要な手段です。
しかし、競争上のリスクやデータ収集の負担、解釈の難しさなど、開示にはさまざまな課題も伴います。
自分たちの企業・部署にとっての最適な統制範囲は何人なのか?をロジカルに考えたり、投資家や経営層から求められたときに必要な情報を、必要な粒度で、迅速に提示できるような仕組みおw整えたりすることがとても重要です。
日本の企業がそこまでできるようになれば、海外の投資家からも株を買ってもらえるようになるかもしれませんね。


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