見出し画像

ISO 30414の外部労働力コスト(External Workforce Costs)の開示メリット・デメリットとその難しさ

はじめに

こんにちは、「データ分析やりたくて人事部に入ったわけじゃないのに」です。
ISO 30414には「外部労働力コスト(External Workforce Costs)」があります。
今回は、この指標を開示するメリット・デメリット、目標値、そして開示することの難しさについて考察してみたいと思います。

1. 外部労働力コスト(External Workforce Costs)とは?

(1) 外部労働力コストの定義

外部労働力コストとは、企業が外部のコンサルタント、契約社員、ベンダーなどに支払うコストを指します。
これには、派遣社員、フリーランス、アウトソーシングサービスに対する支払いなどが含まれます。
「業績はいいけど、頑張っている人のほとんどは外部のコンサルなんですよね。。」という企業、ありますもんね。。
うちも発注することあるので分かります。。
ISO 30414では、外部リソースの利用状況を把握し、人的資本管理の透明性を高めるために、このコストの開示が推奨されています。

(2) クリティカルポジションと外部リソース

クリティカルポジションとは、企業の業績や戦略に直接影響を与える重要な役職です。
外部リソースを利用してこれらのポジションをカバーすることもありますが、そのコストや依存度を開示することで、企業の持続可能性や自立性を評価することができます。

2. 外部労働力コストを開示するメリット

(1) 経営の透明性と信頼性の向上

外部労働力コストを開示することで、経営の透明性が向上します。
投資家やステークホルダーに対して、企業がどの程度外部リソースに依存しているかを明確に示すことができます。
これにより、企業の人的資本管理の信頼性が高まり、投資家は企業の長期的な成長ポテンシャルをより正確に評価できます。

(2) 内部改善の促進

外部労働力コストのデータを開示することで、企業内部での改善点を特定することができます。
外部リソースの依存度が高い場合、そのコストを削減し、自社内でのリソースを活用するための戦略を立てることができます。
また、開示されたデータを元に、より効果的な人的資本管理を策定するための具体的な指針を得ることができます。

(3) 投資家の適切な評価

外部労働力コストの開示は、投資家にとっても重要です。
企業の業績が良くても、クリティカルポジションを外部リソースでカバーしている場合、その企業の自力による成功ではない可能性があります。
投資家は外部コストの情報を基に、企業の自立性やリスクをより正確に評価することができます。

3. 外部労働力コストを開示するデメリット

(1) 競争上のリスク

外部労働力コストのデータを公開することで、競合他社に自社の外部リソースの利用状況を提供するリスクがあります。
これにより、企業戦略や人的資本管理の方針が競合に利用される可能性があり、競争上の不利を被ることがあります。

(2) 過剰な負担

外部労働力コストのデータを収集し、正確に開示するためには、時間とリソースが必要です。
特に中小企業にとっては、このようなデータの収集や分析にかかる負担が大きく、労力に見合った効果が得られない場合もあります。
また、複数の外部ベンダーとの契約内容を詳細に把握し、統一されたフォーマットでデータを提供するのは難しいこともあります。

(3) 誤解や誤用のリスク

外部労働力コストの数値は、その企業の特性や業界によって適切な範囲が異なるため、単純に他社と比較するだけでは誤解を招く可能性があります。
また、数値が高すぎる場合や低すぎる場合、それをどのように解釈するかによっては、誤った結論を導き出すリスクもあります。

4. 外部労働力コストの目標値

(1) 一般的な目標値

外部労働力コストの目標値は、企業の戦略や業界によって異なりますが、一般的には全体の人件費の10%〜20%が理想とされています。
これにより、企業は外部リソースの効果的な活用とコスト管理を両立させることができます。

(2) 組織の特性に応じた目標設定

企業は、自社の組織構造や業務内容に応じて外部労働力コストの目標を設定する必要があります。
例えば、技術系のプロジェクトで外部コンサルタントの専門知識が必要な場合は、目標値を柔軟に設定する必要があります。
一方で、内部リソースで対応可能な業務では、コスト削減を目指すべきです。

5. 外部労働力コストを開示することの難しさ

(1) データの正確性と一貫性

外部労働力コストのデータを開示するためには、データの正確性と一貫性が重要です。
しかし、外部ベンダーとの契約や支払い状況が複雑である場合、正確なデータを収集することが難しいです。
また、各部門やプロジェクトごとに異なる基準でデータを収集している場合、一貫性のあるデータを提供することが難しくなります。

(2) プライバシーと機密性の問題

外部労働力コストのデータには、外部ベンダーや契約内容に関する情報が含まれるため、プライバシーや機密性の問題に配慮する必要があります。
特に、契約条件や支払い金額などの詳細な情報が公開されることで、ビジネス関係に影響を与える可能性があります。
同じフリーランスであっても、契約する企業によって単価変えますからね。。

(3) 開示に伴う解釈の難しさ

外部労働力コストの数値を開示することは、そのままでは効果的な情報提供とは限りません。
適切な解釈を行うためには、数値だけでなく、背景や文脈、組織特有の要因を考慮する必要があります。
これにより、開示されたデータが正しく理解され、効果的に活用されることが求められます。

終わりに

ISO 30414における外部労働力コストの開示は、経営の透明性を高め、内部改善を促進するための重要な手段です。
しかし、どうなんでしょうね。
これも日本の企業が開示したくなさそうな項目ですよね。。
全社で一つの数字を出すのであれば、色んな部署・外部パートナーを混ぜ込めるのでごまかせますが、部署別にドリルダウンで見せるようにするとかはは難しいんでしょうね。
ISO30414の項目って、他社比較・ベンチマーク比較・自社内組織比較・時系列比較などを行えば、かなり良い人的資本経営ができると思います。
投資家からの見られ方も非常に良いと思います。
しかし、開示したくない企業が多いと思うので、どこかの企業が霞が関でのロビイング活動を頑張って、政策提言に繋げるとかしないと実現は難しい気がしますね。(他力本願ですいません。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?