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ヒト(人事)のデータをモノ(SCM)・カネ(財務会計・管理会計)と同じ品質・頻度で提示できないことに関する経営からの見られ方
はじめに
経営の意思決定において、正確で迅速なデータ報告は不可欠です。
モノ(SCM: サプライチェーンマネジメント)やカネ(財務会計・管理会計)は、月次や週次で正確なデータが提供され、経営陣の重要な指標となります。
しかし、ヒトに関するデータは、同じ頻度や品質で提示されていないのが現状です。
これが、経営戦略と人事戦略の連動を難しくしている原因とも言えます。
本記事では、モノ・カネと同様にヒトのデータを提示できない人事部が、経営陣からどのように見られているのかを探り、現状の課題や改善点について考察します。
1. モノ・カネの報告が当たり前になっている
SCMや財務会計では、正確で迅速なデータ報告が月次や週次で行われ、それが経営の意思決定の基礎になっています。
企業全体のパフォーマンスを評価し、将来の戦略を決定するためには、正確なデータが不可欠です。
これに対して、ヒトに関するデータは、しばしば曖昧なまま報告されがちです。
具体的には、退職者数、スキルアップの進捗、リーダーシップの育成状況などが正確に集計されず、報告に時間がかかることも多いです。
そのため、経営陣が人的資本に対する戦略を正しく立てることが難しくなっています。
2. ヒトはモノ・カネを支えるという説明の矛盾
多くの企業は、「ヒトがモノやカネを支える」という前提を掲げています。
しかし、そのヒトに関するデータが正確に提供されていないため、経営戦略と人事戦略が連動しないことがよくあります。
例えば、新たな事業拡大を計画していても、それを支えるべき人材の配置やスキル不足に関するデータが揃わなければ、経営戦略は実現しません。
また、人的資本のROI(投資対効果)を測定するデータが曖昧であれば、経営陣は人材への投資が正しいかどうか判断できません。
この矛盾が、経営陣のフラストレーションを生み、人事部への不満に繋がっています。
3. 経営戦略と人事戦略の連動の難しさ
経営戦略を実現するには、適切な人材配置とスキルアップが不可欠です。
しかし、人事部が提供するデータが経営陣の期待に応えられない場合、経営戦略と人事戦略が連動することは難しくなります。
例えば、ある企業が新規事業を展開する際、人事部が提供するデータが「直近のスキル不足や離職率に関する詳細が揃っていない」という状況では、計画が遅れることが避けられません。
このような場合、経営陣は「ヒトに関するデータが欠如しているため、適切な戦略を打ち出せない」と感じ、人事部に対する信頼が低下します。
4. 組織人事コンサルの支援が機能しない理由
経営戦略と人事戦略の連動をサポートするために、組織人事コンサルが関与することが多いです。
しかし、コンサルが適切な戦略を打ち出すには、まず正確なデータが揃っていることが前提です。
残念ながら、日本の多くの企業では、人事部がデータを正確に収集し、迅速に報告する体制が整っていないため、コンサルタントが持つ知識やノウハウを十分に活かすことができません。
データが揃わないと、どれだけ優秀なコンサルタントであっても、経営陣に具体的な提案をすることが困難です。
5. 日本の人事部の現状
日本の人事部は、モノやカネに比べてヒトのデータを集めて可視化するという「当たり前のこと」ができていない現状があります。
これにより、経営陣からの信頼が低下し、経営戦略と人事戦略が連動しないという問題が生じています。
例えば、アメリカやヨーロッパの企業では、人的資本データの可視化や分析が当たり前になっており、経営戦略に人的資本を組み込むことが一般的です。
しかし、日本ではまだまだ人的資本データの整備が遅れており、結果として経営陣が人事部を「データが揃わないために戦略を実行できない部門」と見なしてしまうケースが多いです。
まとめ
経営戦略と人事戦略を連動させるためには、モノやカネと同様に、ヒトに関するデータを高い品質と頻度で報告する必要があります。
現状の日本の人事部では、まだその水準に達していないため、経営陣からの信頼を損ない、戦略実行の妨げになっていることが多いです。
この状況を改善するためには、まず人事部がデータを収集し、可視化する能力を高め、経営戦略に直結する人的資本データを提供できるようになることが求められます。
それにより、経営陣からの信頼を回復し、経営戦略と人事戦略の連動が実現するでしょう。