ステークホルダーとの絆を120%深める方程式~縁起:関係性を活かす智慧~
不滅の経営 ~300年企業に学ぶ12の智慧~(全12回) 第7回
企業の持続的な成長には、顧客、取引先、従業員、地域社会など、多様なステークホルダーとの良好な関係が不可欠です。
300年以上続く企業は、どのようにしてこれらの関係者との絆を深め、維持してきたのでしょうか。
創業350年の老舗醸造メーカーS社では、「三方よし」の理念を現代に発展させた独自の関係構築モデルを実践しています。
「売り手よし、買い手よし、世間よし」という伝統的な考え方に、「未来よし」という新たな視点を加え、持続可能な関係づくりを追求しています。
「関係者との絆は、日々の小さな積み重ねから生まれる」とS社の社長は語ります。同社では、以下の4段階で関係性を深化させています:
理解の段階
各ステークホルダーの本質的なニーズの把握
中長期的な期待の確認
潜在的な課題の発見
共創の段階
価値創造プロセスへの参画促進
双方向のコミュニケーション強化
共通目標の設定と共有
成長の段階
相互の成長機会の創出
ノウハウや知見の共有
新たな価値の共同開発
進化の段階
パートナーシップの領域拡大
社会的価値の共同創造
持続可能な関係モデルの構築
創業320年の老舗旅館T社では、この考え方をさらに具体的な実践へと落とし込んでいます。
例えば、地域の農家との関係では、単なる食材の仕入れ先としてではなく、「地域の食文化を共に守り育てるパートナー」として位置づけ。定期的な意見交換会や共同での新メニュー開発を通じて、相互の発展を図っています。
仏教でいう「縁起」の考え方、つまり「すべてのものは相互に関連し、影響し合っている」という智慧が、これらの取り組みの基盤となっています。
老舗の建具メーカーU社では、職人の技術継承を地域活性化につなげる革新的な取り組みを展開しています。
地域の若者に伝統技術を教える工房を開設し、そこから生まれた新商品を地域ブランドとして育成。「企業の成長と地域の発展は不可分」という考えを実践しています。
これらの企業に共通する関係構築の要点は以下の通りです:
長期的視点での関係性の構築
相互の利益を超えた価値の創造
次世代を見据えた関係性の進化
地域社会との共生
オープンなコミュニケーション
特筆すべきは、これらの企業が関係性を「管理」するのではなく、「育成」するという姿勢を持っている点です。
関係者との絆を、生き物のように扱い、常に養い、育てていく。その姿勢が、持続的な関係構築を可能にしているのです。
ステークホルダーとの関係づくりの本質は、単なる利害関係の調整ではありません。互いの存在意義を認め合い、共に成長していける関係を築くこと。それが、100年先を見据えた持続的な経営の基盤となるのです。
次回はコチラ。
不滅の経営 ~300年企業に学ぶ12の智慧~第8回:利益持続力を7倍に高める経営の真髄~布施:与えることで得る智慧~