100年企業への道筋を示す5つの法則~常住:永続を可能にする智慧~
不滅の経営 ~300年企業に学ぶ12の智慧~(全12回) 第12回
これまで11回にわたり、300年以上続く企業から学ぶ経営の智慧をご紹介してきました。
最終回となる今回は、企業の永続的な発展を実現するための本質的な考え方について、総合的に解説していきます。
創業420年の老舗茶舗HH社の現社長は、こう語ります。
「永続企業の本質は、時代に流されることなく、かといって時代に背を向けることもなく、自社の価値を持続的に提供し続けること。それは、まるで大きな川の流れのように、形を変えながらも本質的な流れを保ち続けることなのです」
同社では、創業以来の茶葉の品質へのこだわりを守りながら、現代のライフスタイルに合わせた商品開発やサービス提供を行っています。
例えば、伝統的な茶道具と最新のティーバッグ製品を同時に扱い、それぞれの良さを活かした提案を行うことで、幅広い顧客層の支持を獲得しています。
また、創業350年の老舗酒造II社では、「変化を恐れず、変質を避ける」という独自の経営哲学を実践しています。
同社が考える「変化」とは、時代に応じた表現方法や提供手段の進化を指し、「変質」とは本質的な価値や理念が失われることを意味します。この明確な区別が、永続的な発展の基盤となっています。
仏教でいう「常住」の考え方、つまり「本質的な真理は永遠に変わらない」という智慧が、これらの取り組みの根底にあります。
しかし、それは単なる保守ではありません。むしろ、変化の中に不変の本質を見出し、それを時代に即した形で表現していく積極的な営みといえます。
老舗の木工メーカーJJ社は、伝統的な木工技術を現代の住空間に活かす革新的な取り組みを展開しています。
「木と人との関係を豊かにする」という創業以来の理念を、現代のニーズに合わせて具現化。例えば、伝統的な組手の技術をモダンな家具デザインに応用するなど、古いものと新しいものの調和を実現しています。
これらの事例から、永続企業を実現するための5つの法則が見えてきます。第一に、「本質の明確化」です。
自社の存在意義と提供価値を明確に理解し、それを全社で共有することが基本となります。
第二に、「価値の進化」です。本質は守りながらも、その表現方法を時代に合わせて進化させていく必要があります。
第三に、「関係の深化」です。顧客、従業員、地域社会など、すべてのステークホルダーとの関係を、時間をかけて深めていくことが重要です。
第四に、「継承の確実化」です。次世代への価値観や技術の伝承を、計画的かつ確実に行う必要があります。
そして第五に、「革新の内在化」です。変化を当たり前のものとして受け入れ、常に新しい可能性を探求する姿勢が求められます。
老舗の出版社KK社の会長は、こう締めくくります。「100年続く企業になるということは、100年先の未来に向けて、今を生きるということです。
今日の判断が、100年後の誰かの人生に影響を与えるかもしれない。その責任と可能性を常に意識することが、永続企業の原点なのです」
この連載を通じて、300年企業から学んだ最も重要な智慧は、「永続」とは決して単なる存続ではないということです。
それは、時代とともに進化しながら、本質的な価値を持続的に提供し続けること。その実現のために、私たちは今日も、明日も、一歩一歩を大切に歩んでいく必要があるのです。
12回にわたる連載を通じて、300年以上続く企業から学ぶ経営の智慧をご紹介してきました。これらの智慧が、読者の皆様の経営実践に少しでもお役に立てば幸いです。
第1回はコチラ。不滅の経営 ~300年企業に学ぶ12の智慧~ 第1回:
100年先を突き抜ける経営の視点~無常:変化を受容し活かす智慧~
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