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2023年4月の記事一覧
まぼろしをみるものがたり 後編(西山珠生)
前編と銘打って、夜明けの幻を綴った。ここでは、私たちがその幻を舞台上に立ち上げるまでの記憶をメインに思い返してみようと思う。
幻視と幻聴、信仰 ②信仰するひと
「珠生さんはこれがすごく宗教的だってことを自覚したほうがいい」何かの折に言われた。あるいは「学生がこういう話を、しかも王子でやるってのは、今の若い人が社会をこう見てるんだなっていう視点でも見られると思うし」そんなことも。……え、そう?
まぼろしをみるものがたり 前編(西山珠生)
『かぎろい』にあとがきを添えてみようと考えた。
と、いうことは、まず私がなにか書かねばならない。さて。
終演後の燃えさしをぼんやり突きつつ書いては消し、書いては消しを繰り返した。『かぎろい』を語る言葉を私はなかなか見出せなかった。そこには私をとらえて離さぬものたちが漂っており、簡単に捕まってはくれないのだった。
そんなわけで、ひとまず初めに戻ってみようと思う。つまり彼らが名を与えられたと
サアメと踊る(加藤葉月)
こんにちは。
『かぎろい』にてサアメ役を務めました、加藤葉月です。今回は、私が彼女とどのように向き合い、上演までたどりついたのかについて、皆さんと一緒にたどってみたいと思います。
サアメという役と最初に出会ったのは、去年の夏。台本上で初対面した彼女は、まるで霞のような、カゲロウのような、つかみどころのない子でした。そこから稽古をしていく中で試行錯誤を重ねたものの、サアメっぽい何かにはなれても
『かぎろい』は何を見せるのだろうか(中村仁)
今作のタイトルであるかぎろいは、一体この作品に対してどんな意味をもっているのだろうとずっと考えていた。ひどく寒さの厳しい冬の夜明け前、東の空が白み朝日の気配が感じられる。それが一体私たちに何を示しているというのだろうか。
作品には、正教の堕落と数年前の疫病を背景に、真に救いなる信仰と神への渇望が描かれる。主人公ウーリは正教の堕落を目の当たりにしながら正教の教えに一層敬虔につとめ、アダは正教にす
『かぎろい』終演に寄せて(高橋敏文)
【日記】
2023年3月27日 月曜日 天気:くもり
エレベーターを降りたら、幻視譚ご一行様、と書かれたホワイトボードが、まだそのままにしてあった。一週間前まで俳優として小屋入りしていた王子小劇場は、脚本執筆企画の真っ最中。他の一切の業務を放棄して早々に短編を一本書き上げた私は、すっかり劇作家気分である。たった一週間で、ククリの街並みも、そこに生きる人々も、消え失せてしまった。あの瞬間、舞台
触れるということ(井上国太郎)
かぎろいが終わって2週間が経った。僕はこの間、かぎろいのことをほとんど思い出さずに済ませてきた(一度、自分の出演シーンを録画で見返した程度である)。公演だけでなく稽古期間も含む異様な1ヶ月は、日に日に現実味を失っている。それでも、自分の中に残っているものはあるだろうか。
もしかしたらそれは、「接触」の記憶かもしれない。僕は劇中、ほとんど何かに触れる/触れられる役を演じていた。例えば居酒屋でリーシ
振付師のゆる~い振り返り(Jin-Zo)
『かぎろい』にて振付を担当したJin-Zoです。今回の振付は、演劇とダンスのグラデーションをどうするかってことに苦戦しました。コレオグラファーとして僕がいつものようにダンスの振付をするのとは違います。今回は演劇×ダンスというわけではなく、あくまで演劇。ダンスの色が強すぎると浮いてしまうので、ダンス的な良さを残しつつ、全体の中に置いたときに孤立してないよう調整していかなければならない。この塩梅がと
もっとみる既に奇妙に巻き込まれている(矢島朱海)
『かぎろい』の中ではサビになるだろう、奇跡の乙女を中心に人々が奇怪な動きをする儀式シーン。音楽には『ナイトメアビフォアクリスマス』、『スパイダーマン』などの映画音楽を手掛け、『チャーリーとチョコレート工場』のウンパルンパの歌声も担ったダニー・エルフマンが監修した鍵盤楽器の四重奏が用いられている。鉄琴が繰り返す単調なメロディーが印象的だが、主旋律を他の楽器に入れ替えたり、音の数を刻むことで曲の波を
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