【週刊消費者情報】 認知症基本法と消費者問題
超高齢社会の到来!!
「2025年問題」では国民の4人に1人が75歳以上に、そして高齢者の5人に1人が認知症になるといわれています。また「85歳問題」では、介護と生活支援の両方が必要になる85歳以上の人が2023年には1000万人超となるそうです。
このような推計結果を背景に認知症基本法が昨年6月に成立し、本年1月1日に施行されました。
厚生労働省の公表資料を見ますと、法の目的は「認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう、認知症施策を総合的かつ計画的に推進⇒ 認知症の人を含めた国民一人一人がその個性と能力を十分に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する活力ある社会(=共生社会)の実現を推進」するとしており、「~共生社会の実現の推進という目的に向け、基本理念等に基づき認知症施策を国・地方が一体となって講じていく~」となっています。
キーワードは「共生」・・・ともに生きる・・・なかなか響きの良い言葉ですね。
認知症の姉妹を狙った悪質リフォーム事件
ここですこし認知症等の高齢者に関する消費生活相談についてお話しましょう。と、その前に、悪質な消費者事件をおさらいしておきたいと思います。
かれこれ20年前になりますね・・・埼玉県富士見市で発生した消費者事件から。それは、認知症を患った高齢姉妹(80歳と78歳)を狙った悪質リフォームでした。姉妹が居住する家屋を3年間にわたり、複数の業者が5000万円以上のリフォーム工事を繰り返し、代金が支払えなくなった挙句に自宅が競売にかけられた、という事件でした。その後、法律改正はされてきたものの、似たような事案は後を絶ちません。まったく酷い話です。
認知症等の消費者相談の状況
さて、認知症等の高齢者の消費生活相談件数は、2018年から22年の5年間、毎年8000件台で推移しています。相談1件あたりの平均契約購入金額は約109万円。そして平均既支払額は約74万円と、かなり高額です。商品・サービス別上位では「他の健康食品」「新聞」「商品一般」「健康食品(全般)」「屋根工事」などが並んでいます。認知症等の高齢者は在宅率が高いこともあり、訪問販売や電話勧誘販売の勧誘による消費者トラブルが多いようです。
〈つづく〉
『消費者情報』Web版編集室 原田修身