午前12時のミルクティー
家族が寝静まった夜、キッチンで小さな鍋を火にかける。ミルクティーを作る時間は、私にとって一日の終わりを告げるささやかな合図だ。カップに茶葉を入れ、沸騰したお湯を注ぎ、そこにミルクをそっと足す。濃く深い香りがふわりと立ち上り、柔らかく部屋を満たしていく。
マグカップを両手で包みながら、窓の外に目をやる。暗闇の中に、ぽつぽつと浮かぶいくつかの灯り。そのうちの一つがなんとなく目に留まる。そこには、私と同じように温かな飲み物を手にしている誰かがいるのだろうか。
たとえば、甘いホットココアかもしれないし、ハーブティーかもしれない。あるいは眠れない夜にホットミルクを飲んでいるかもしれない。そんな風に考えると、なぜかその灯りが親しみ深く感じられる。
カップを口に運ぶ。ミルクの甘みと茶葉のほろ苦さが溶け合い、じんわりと体を温めてくれる。部屋の中にいるのに、まるで窓越しの灯りのぬくもりまで届いたような気持ちになる。
遠くに灯る光は、まだそこにある。その灯りの向こうでは、誰かが温かい飲み物を手に、静かな夜を慈しむように過ごしているのかもしれない。湯気の向こうに、小さな安らぎや穏やかな思いが広がっていることを、私はそっと願う。
湯気が少しずつ消えていくころ、カップも空になる。窓の外をもう一度見てみる。灯りはまだ消えないままだ。そんな風景を見送りながら、今日という日が静かに終わりを迎えるのを感じる。
ミルクティーのぬくもりを胸に抱えながら、私はカップを片付け、夜の深まりと共に明かりを消した。