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~時々、夢に出てくる君へ~書く楽しさ再発見!あなただけの文章を紡ぐ スローライティング講座 テーマ「別れ」 講師 黒木里美

「スローライティング講座」では、文章を書くことに苦手意識を持つ方でも、ゆっくり自分のペースで書く楽しさを見つけられるようお手伝いしています。
講座の中では、受講生の皆さんが選んだテーマで自由に作文を書いていただきます。
そして、講師も同じテーマで一緒に文章を書きます!
もちろん理由は、書くことが好きだからです😊

今回は『別れ』というテーマで講師が書いた作品をご紹介します。
言葉をじっくり紡ぐ時間の楽しさや、テーマから広がる世界観をぜひ感じてみてください。


~時々、夢に出てくる君へ~


たまに夢に出てくる友人がいます。
学生時代の友人で、もう20年は会っていません。

なぜ会えなくなったのでしょうか。
携帯電話をなくして機種変更した際、番号も変え、まあ、きっかけがあればまたつながるだろうと連絡を怠ってしまったからか。
忙しいからと同窓会にも顔を出さなかったからか。
早々に年賀状じまいをしてしまったからか。

今ならどうにかSNSを駆使して友達伝いに連絡を取ることもできるでしょう。
でも、さて、何と言えばいいのでしょうか。
「夢に出てきたから、その話がしたい」なんて、怪しすぎて言えません。

社会に出れば、再会の連絡が勧誘や商売のきっかけになりがちなことも思えば、なおさらです。
でも、もし友人から「夢に出てきたから会いたい」と言われたら、私は嬉しいと思います。
少なくとも、その友人であれば。

これからも私から連絡をすることはないでしょう。
ただ、私と同じように、私のことを時々思い出してくれているかもしれない友人のことを思う。
それだけで十分満たされるのです。

あとがき

人生の中で、出会いと別れはいつも自然な流れの中にあります。
学生時代の友人もそのひとつ。
気づけば20年も会わないままで、どうして離れてしまったのかを考えることがあります。
でも、ふと夢に出てきて懐かしい気持ちにさせてくれるのは、かけがえのない存在だからなのかもしれません。

連絡を取ることもできるけれど、どうしてもためらいが生まれるのは、少しの照れくささや「今さら?」という気持ちからかもしれません。
でも、思い出すだけで心が温かくなる人がいるというのは、それだけで十分幸せなことだと思います。

もしも逆の立場だったら、「夢に出てきたから会いたい」と言われることは、きっと嬉しいに違いありません。
言葉にできない思いも、心のどこかで相手に届いていると信じたい。
そんな気持ちで、これからも静かにその友人を思い続けていこうと思います。

再会することがあるか、それとも記憶の中で生き続けるのかはわからないけれど、「夢に出てきた君へ」という手紙のようなこのエッセイが、読む方にも小さな温もりを届けられたらうれしいです。

1984年東京都文京区生まれ。2012年よりリテラ「考える」国語の教室の講師を務める。子どもたちへの文章技術や国語・作文の指導を通じ、ことばの学びは、困難にぶつかっても、しなやかに心を回復させ、自らの力で乗り越える自信を育ってることに感銘を受け、日々心理学的なアプローチを授業に取り入れられるようにと研究を続けている。2022年からオンライン講座を開始。初年度から300名以上の受講生と出会い、子どもから大人まで幅広い年代に言語技術を広める多様な講座を展開中。中学受験・高校受験では、受験生一人ひとりの個性や資質に合わせたオーダーメイドの指導と、受験メンタルトレーナーとして受験生本人と保護者・家族の心のケアにも努めている。

【資格】受験メンタルトレーナー チャイルドカウンセラー 発達障害コミュニケーション指導者初級 心理学検定1級 文章能力検定2級 中高社会科教員免許 國學院大學法学部卒業

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