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multiplier197
流し素麺が食べたくて、夏
蝉が鳴かなくなった。
酷暑は続くが、夏の終わりに心残りな事が一つある。流し素麺である。
エンタメ性あふれる流し素麺だが、どこか「禅」のバイブスを感じている。
禅宗で説く、過去や未来ではなく、今この瞬間に集中することを大切にする「今、ここ」の概念。
難しそうに聞こえるが、実は流し素麺がその極意を教えてくれている気がする。
参加者全員が素麺の行く先一点のみに集中する。
それこそまさに「今、ここ」。
箸先が過去や未来をさまよっていては、瑞々しい素麺は口には入らない。まるで人生そのもの。流し素麺は一瞬の判断が試されるのである。
幼少期は目の前のことに全集中できたものだが、大人になるにつれ、煩悩やしがらみに邪魔され、トランス状態にもっていくのは、容易な事ではなくなった。
一念発起し、流し素麺のDIYを試みたが、壊滅的に不器用な私には簡易的なものしか作れない。
イメージしてみたが、一本の竹では斜度が急すぎる。素麺が豪速球で流れ、速やかに麺を捕らえる事は至難の業である。
お盆に住職のお話を拝聴出来る貴重な機会を楽しみにしているが、この様な雑念を抱いてしまう様では、まだまだ修行が足りないのだろう。
あれこれ考えているうちに、ツクツクボウシも鳴かなくなった。
夏が静かに終わりに近づいて来ている。
編集後記
静岡県沼津市にある甘味処「どんぐり」さん。
流し素麺と回転寿司の夢の融合システム。
もう何年も非常に気になっている。