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【隠れた名作】フラグタイム【文学的】
はじめに
dアニメストア for prime videoで『フラグタイム』今更観ました。女子向けのアニメを全然観てない気がしたので、女子向けのアニメのほうが男性向けアニメより人気になってる昨今の時勢を鑑み、お試し感覚で鑑賞しました。
すると、終始集中力が切れることなく視聴できましたし、内容的にも1時間という短さながら名作と言って過言ではないアニメに思えましたので、詳しく記録したいと思いました。
個人的な評価
ストーリー B+
脚本 A
構成・演出 S
思想 S-
作画 B+
キャラ S
声優・歌 A+
バランス S
総合 S-
S→人生に深く刻まれる満足
A→大変に感動した
B→よかった
C→個人的にイマイチ
あらすじ
人付き合いが苦手な高校生の森谷美鈴は3分間だけ時間を止める能力を持ち、誰かに話しかけられると時を止めて逃げ出し、その間に変態行為を楽しむ少女でした。ある日、森谷は時間が停止する3分の間に、クラスの才色兼備の優等生・村上遥のスカートの中を覗きますが、彼女には時間停止の能力が効かず、森谷の行動がバレてしまいます。
変態行為を人にバラされたくなかった森谷は村上に謝罪し、お詫びとして、村上の願いなら何でも聞くと約束をします。時間停止の能力がなぜ彼女にだけ効かないのかについて、村上は森谷が自分のことを好きだからだ、と分析します。
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休日に村上は森谷をデートに誘い、食事やショッピングを楽しみます。美人の村上と一緒にいるとすれ違う人にいちいち注目され、森谷は釣り合わないような気がして気まずさを覚えます。
しかし、他の人ならとっくに嫌になって時間を止めて逃げているはずなのに、村上に対してはそうならない自分に驚きます。
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森谷がパンツが欲しいわけではないと告げると、村上は「そっかあ、パンツじゃなくてこれを履いてる私のことが好きなんだね」と、笑顔を見せました。その言葉のやり取りをしたとき、森谷は初めて他人といる時間が楽しいと心から感じました。
デートの途中で、唐突に村上の表情が曇ります。村上の彼氏、クラスメートの玉木が他の女子とデートをしているのを見かけたからでした。
森谷はこの場で玉木に対し二股を糾弾すべきだと主張しますが、村上は「別に大好きってわけじゃなくて、あっちが付き合いたいって言ってきただけだし。どうでもいいかな…」と、消極的な態度を見せます。
村上の、初めからすべてを諦めているような言動、自分を大事にしない姿勢に不服を感じた森谷は、咄嗟に時間を止めてしまいます。
そして、玉木の頭にパンティーを被せて村上の代わりに報復するのでした。
村上と親しくなったことで、ますます彼女が好きになった森谷は、彼女が他の女子と仲良くしているとそのたびに時間停止の能力を無意識に発動するようになります。
最初は笑顔で許していた村上でしたが、何度も続いたので「森谷さん。もしわざとやってるとしたらやめたほうがいいよ」と、釘を差しました。
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村上に嫌われることを恐れた森谷は、勝手に時間停止の能力が発動しないよう保健室で過ごすことが増えます。心配した村上は保健室で寝ている森谷を訪ね、「自分のしたいこと、認めないとダメだよ」と言います。それに対し、「言ったら嫌われるから言えない」と断る森谷。
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村上から最後通牒的な言渡しを受け、半泣きになった森谷は思わず時間を止めて村上にキスしてしまいます。村上は「今、時間が動き出したら先生に見られちゃうね」と言いつつも、誰に見られても構わないよと拒絶することなくキスに応じました。
村上は森谷に、「私たち付き合おうか?」と提案します。付き合うなら森谷以外と話さないと。その代わり、村上の望みをひとつ聞いてほしいとのことでした。
ある日、森谷はトイレに入ってる際に女子たちの話を耳にします。それは、自分が無口で利かないと悪口を言われているだけでなく、クラスの誰からも好かれている人気者であるはずの村上まで八方美人、男子や教師に媚びる淫売として陰口を叩かれていました。
森谷は自分が人間関係を苦手とする理由が女子たちのこういうところにあることを再確認しました。仲良くないのにうわべだけ。
しかしそこで森谷は気づきます。自分は特に人気がないので周囲にそっとしておいてもらえるものの、他人と関わりたくなくてもみんなが放っておかない人気者の村上は自分よりもっとつらいのではないだろうか?と。
試験当日。クラスメートたちが真剣に問題を解いてる中、森谷が時間を止めると、村上は机に立ち、これからすることを写真に撮ってほしいと告げました。彼女は笑いながら制服を脱ぎ始めました。
身につけている物を次々と脱ぎ捨てて上半身をブラジャーだけにすると「おいで、好きなことしていいよ」と森谷を誘惑しました。
真面目な優等生の痴態を見せられた森谷は、「村上さんは罪を犯したがっている」と感じました。早く服を着ないと時間が動き出してしまうと焦りだす森谷に対し、村上はまるでこのまま見つかってもいいというような残念そうな表情を浮かべました。
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森谷は村上と秘め事を共有するうちに他の女子とも時間を止めずに接することができるようになりましたが、森谷の変わり様をみて村上が寂しそうに感じます。
時間を止めて「つらそうだったから」と、印象を述べてこないだの写真を渡そうとすると、村上は「いらない」と素っ気なく言い放ちました。
そして、足早に近づくと「森谷さんに持っててほしい。あれが本当にあったって忘れないように」と、自分の願いを伝えました。
ある日、森谷が調子悪そうに机に突っ伏していると、いつも親切に話しかけてくれる卓球部の女子・小林が心配して外の空気を吸おうと言って連れ出します。外に出て気分が回復した森谷に、小林は進路について漫画家志望である旨を森谷にだけ打ち明けました。
森谷が廊下のモップ掛けをしていると、教室の床に小林の進路希望書が落ちており、拾ったクラスメートたちがネタにして笑っているのを目撃します。小林が傷つくことを憂いた森谷は時間を止めて彼らの手から進路希望書を奪いました。
しかし、それら一連の森谷の様子と行動を村上は見ていました。自分以外の女子のために時間停止の能力まで使った森谷に対し、「付き合おうってなったとき約束したよね?森谷さん以外の人とはふたりきりにならないって。ずっと守ってるよ。でも、約束守ろうとしてたのは私だけだったんだね」と。
村上がもう自分を特別な存在だと思っていないと考えるのを恐れた森谷は、人目も憚らずスカートをまくり上げ、村上が好きすぎて同じパンティーを通販して履いている旨を伝えます。
すると、村上もスカートをめくってその思いに応えるのでした。
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この件をきっかけにふたりの絆はさらに強くなりましたが、翌日学校中で才色兼備の優等生である村上が廊下でパンティーを見せたことが話題になっていました。また、森谷の時間を止める能力は日に日に弱まっていました。
森谷には、村上は時間を止める能力があるから自分を相手してくれているのではないか?という不安がありました。
森谷は勇気を出してもうすぐ時間を止められなくなるかもしれないと告げると、村上は「それなら今のうちに形に残ることをしよう」と言って、時間が止まってる間にクラスメートたちのノートにアドバイスの書き込みなどをする日々を過ごしました。
そんなある日、教室の黒板に「村上遙はビッチ!!」と茶化すように大きく書き殴ってありました。村上は、寂しそうにその文字を見つめます。
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森谷でさえ、村上について容姿や体にしか興味がなく、詳しく自分の素性についてまったく訊いてこないことから、「分かるよ、誰も本当の私なんて知りたくも興味もないってこと」と、悲しそうに微笑みました。
森谷は『そう、知りたくない。けどそれだと、村上さんを好きなことにはならない』と、心の中で自問自答すると、黒板の文字を消しました。
そして、村上の家に遊びに行ってもいいかと尋ねました。
住所の場所に赴くと、村上は高層マンションに住んでいました。快く出迎えられ彼女の自室に招かれると、森谷は腹を割ってゆっくり話したい旨を告げました。
しかし、村上はベッドに森谷を誘うと強引にキスをして、相手構わず服を脱ぎ始めました。森谷が「こんなことが村上さんがしたいこととは思えない。なんでこんなことするの?」と、疑問を呈します。
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「そうでしょ?」と、少しも気にしない様子で確認する村上を見て、『相手のしたいことしか考えてない…怖い』と、彼女がどんな人間なのか森谷はようやく理解します。
「村上さんはなんで私と付き合おうなんて思ったの?もしかして…私が付き合って欲しそうだったから付き合おうって言ったの?」と、核心を問います。
しかし、村上の母親が帰ってきてしまい、その対応で返事は聞けませんでした。ただ、「私がいない間に変なところ見たりしないでね、ベッドの下とか」と、敢えて釘を差しました。この発言はお茶を入れるために中座したときも森谷に告げていて、まるで見てほしいと示唆しているようでした。
恐る恐るベッドの下の棚を調べると、そこには全校生徒と教師の誕生日・血液型・特徴・好きなもの・嫌いなもの・喜ぶこと・嫌がること、などが分析および網羅され、それらを暗記するため単語帳になったものが名前別に保管されていました。
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『森谷美鈴…ずっと一人で本を読んでいるのは人と話すのが苦手なだけ。優しく話しかけてくれる人をすぐ好きになる。本当は人のことに興味津々なのに踏み出せないだけ。優しくしてくれるなら相手は誰だって構わない。自分だけがその子を分かってあげられる。秘密を共有する仲っていうドキドキできる材料があれば。それが女の子同士なら尚良い。相手が誰だって』
森谷の単語帳には以上のように書かれていました。村上は「友達とか仲間っていうのは、クラスでヒエラルキーが高くて、自分を着飾って強く見せるための道具でしかない。違う?…みんなが求めてるのは、優しくて、甘えられて、嫌な顔しないで付き合って、言われたくないことは言わず、何でも聞いてくれる…そういう村上遙だから」と淡々と述べました。
「それじゃ村上さんの気持ちはどうなるの?村上さんだって自分のしたいことあるはずでしょ?」と、零す森谷に対し、彼女は自分の名前が書かれた単語帳を音読し始めました。
村上遙…誰からも好かれたいと思っている。誰にでもいい顔して誰にも嫌われない。
しかし、上記の記述は彼女が即興で口に出しただけで、単語帳には白紙のまま何も書かれていませんでした。
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去り際に彼女は、「今日のこと、全部見なかったふりすれば、明日からも内緒の両想いのふたりでいられるよ?」と、言いました。
森谷は「村上さんは、誰のことも、何も好きになれなくて、時間が止まってる3分の間さえ、何がしたいか分からない。それで村上さんはいいんだろうか?」と、思い悩みます。
果たして、ふたりはお互いの欠落感を埋め合うことができるのでしょうか。
感想
森谷さんにせよ、村上さんにせよ、個人的に痛いところを突きまくる作品でした。世間的には百合モノという同性愛作品とみなされているようですが、物語の根幹部分は間違いなくエヴァです。
終始一貫して、他人との付き合い方、自分との向き合い方、つまりはATフィールド(排他的精神領域)について突き詰めた話に思えました。
このとてつもないアニメに出会って幸福でした。ここまでお読みいただきありがとうございました。