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【恋愛革命】『少女革命ウテナ』第24話【黒薔薇編】まで観ましたー。


はじめに

 『少女革命ウテナ』第13話~第24話【黒薔薇編】観ましたー。
 第1話~12話までが、ウテナが生徒会メンバーと薔薇の花嫁である姫宮アンシーの所有を巡って決闘をする【生徒会編】と呼ばれる章だったのに対し、黒薔薇編では負の感情を利用されて闇落ちした一般生徒が、ウテナを倒すための刺客として操られて次々と送り込まれて来て戦う話でした。

 彼女らは「黒薔薇のデュエリスト」と呼ばれ、その中には若葉などウテナと親しい人物も含まれていました。戦いの中で、鳳学園の成り立ち決闘の意義決闘者となる資格などが明らかになり、これまでの謎が徐々に解明され、作品の思想がより鮮明になりました。
 時折息抜きのコメディが展開されるのですが、”世界の果て”による「世界を革命する」という意味が示唆された、神回ならぬ神章でした。記録したいと思います。

黒薔薇編

 ”この黒薔薇にかけて誓う。この決闘に勝ち、薔薇の花嫁に死を”

 第13話はこれまでのウテナの決闘の回想で、第14話から黒薔薇会が送り込んでくる刺客たちとの戦いになります。

全体の構成

・第14話『黒薔薇の少年たち』
 →VSアンシーの兄・鳳暁生のフィアンセ香苗

・第15話『その梢が指す風景』
 →VS幹の妹・梢

・第16話『幸せのカウベル』
 →七実の息抜き回

・第17話『死の棘』
 →VS樹璃の想い人、枝織

・第18話『みつるもどかしさ』
 →VS七実を慕う小学生、石蕗

・第19話『今は亡き王国の歌』
 →若葉が小学生の頃慕っていた風見達也の話

・第20話『若葉繁れる』
 →VS若葉

・第21話『悪い虫』
 →VS七実の取巻きの一人・茎子

第22話『根室祈念館』   
 →「世界を革命する力」の計画の始まり

第23話『デュエリストの条件』
 →VS御影草時

・第24話『七実様秘密日記』
 →七実の息抜き回かつ回想

 …となっていて、第22・第23話が特に重要な回になっています。


各キャラが闇のデュエリストになった原因

・香苗→アンシーに対する本能的な嫌悪感

・梢 →兄である幹がアンシーに惹かれて離れていくため

・枝織→同性の樹璃の恋意による親切をマウントと勘違い

・石蕗→七実に子供扱いされ男として認知されないため

・若葉→尽くした西園寺が結局アンシーに走ったため

・茎子→冬芽に近づく目的で七実に仕えたのに捨てられたため

・御影→心を奪われた時子が暁生とキスしていたのを目撃したため

地下に向かう懺悔室のようなエレベーター内で心の闇を深く告白(画像は梢)


各話の印象的なシーン

第15話

馬宮「生徒会メンバー。彼らの心なら天上ウテナを倒せる強い剣に結晶するかもしれない」

御影「だが、彼らは既に決闘で敗れている。心の弱い者たちだ」

馬宮「自分の心を自由に使いこなせる者は少ない。特に年若い彼らには難しいだろう。むしろ彼らの心の剣を誰か別の物に委ねたほうがいいね。その方が強いデュエリストが生まれるかもしれない」

御影「だが心の剣を引き抜くには、彼らの心を掴み取れる手が必要だな」


女子A「ねえ梢、アンタまた彼氏変えたでしょう?」

梢   「別に変えてないよ、増やしただけ」

女子B「おお~!言う~!!」

第19話

樹璃「本当に好きだって想いはひとつか。想い続ける人というのを、簡単に変えることができたら、君たちももっと楽になれるのにね」


第20話

暁生 「ほう、若葉さんが」
ウテナ「そうなんだ、すっかり見違えちゃって。どうして急に綺麗になったんだろう」

暁生 「あなたには分からないでしょうね。選ばれた運命を生きるあなたには。世の中には特別な人がいます。そう、たとえばあなたのように」

ウテナ「僕が?」
暁生 「ほら、あなたにはそんな自覚はないでしょう。それは、あなたが生まれつき特別だからですよ。ほとんどの人は大勢の中のひとりでしかありません。でも、きっかけさえあれば今までにないほどの光を放つこともあります」

ウテナ「僕はただ、若葉がずっと幸せでいてくれればそれでいいんだ

暁生 「ただ言えることは、多くの人にとって特別な時間はそう永くは続かない…


第21話

アンシー「簡単ですよ。好きな人のためなら、それ以外の人の感情なんか問題じゃない。自分なんかいくらでも誤魔化せますから


第22話&第23話

御影「根室祈念館。ここで、100人の少年が死んだという話なら、事実ですよ。昔、根室教授という人がいてね、ここで火事があって、その人の生徒たちが閉じ込められて焼け死んだそうです」



御影「当時、確かに僕は電子計算機のような男だった。計算機は優れた機械だが、機械には目的がない。渇いた僕の、渇いた毎日」



御影「100人の優秀な少年たちが鳳学園に集められ、これに従事している。彼らはこの研究目的が世界を革命する力だとか、”永遠”を手に入れるためのものだと噂している。永遠を手に入れようなんて、永久機関のからくりを作り出そうとするようなものだ。人はもっと謙虚に、神様が与えてくれるものに感謝してればいいんです



時子「自分のことを大事にしない人が、私は一番嫌いなの!



馬宮「このドライフラワーもそうなんです。あの人は、花が散るのを見たくないんですよ。こうすれば、短い命の花も少しは長持ちさせることができる。でも、こうまでして永らえても花自身は嬉しいんでしょうか。永遠なんてこの世にはありませんよね?ただ、永遠に憧れる心が美しく思えたりするだけだ。ふたりのことは尊敬してますし、ありがたいと思ってます。根室教授、あなたが僕のことを気にかけて下さってること、ちゃんと姉さんに言っておきますから…」



影絵「ロボットは歳とらない。ロボットは疲れない。ロボットは優れている。ロボットは悩まない。ロボットは寂しくない。ロボットはずっと働き続ける」

時子「でも、あなたを見てる方は、寂しくなるわ



ウテナ「自分のことを大事にしない奴が、僕は一番嫌いなんだ!



時子「彼もあなたと同じで、あれから少しも歳をとらないのね…」
暁生「学園という庭にいる限り、人は大人にならないのさ
時子「何か間違ってるわ、そんなの」
暁生「君は、普通の人生を送ってる?」
時子「…そうね、夫は優しい人よ。よくしてくれるわ」
暁生「今日は何しに?」
時子「弟の…馬宮の墓参りに来たの。ねえ、あなただって知ってるでしょう?実を結ぶために、花は散るのよ
暁生「そうだね」



御影「彼女たちはみな、忘れられない思い出を持っていました。大事な大事な思い出です。彼女たちはそれを守るための戦いに赴いたのです。言うなれば、思い出によって人生を変えようとした人々。君ならば、きっと僕みたいに思い出を永遠のものとできる。世界はそれを必要としています。君の進む道は…」

ウテナ「この野郎!世界って誰だよ!みんなを操ってたアンタなんかと僕を一緒にするな!」

御影「自分の大切な思い出に触れるなって叫んでるみたいだぜ…そうか、君を今まで支えてきたのはその思い出か。恥じることはない。君はそれに値する思い出を持っているのだから。美しい思い出を持つ者だけが願うことを許されるんだ。あの頃が永遠に続いたならば、今もあの頃のままでいられたならば、と。僕には分かる、君は僕と同じだ。思い出を永遠のものにしたいと願ってやまない、そんな人の目と同じだ」



御影「僕の黒薔薇を受けた者たちは、みな自分の意思で僕の下に来た。そして自分の意思でこの場所に立ったんだ。ここに立つ者はみな僕と同じだ。永遠に惹かれてやって来るんだ

ウテナ「黙れ!お前が勝手にやったことを他人のせいにするな!」

御影「君を最初に見たときから僕には分かっていたよ。君も昔、大切な人に出会ったんだろう。それで、その人に自分の人生を変えられてしまったんだろう。だから決闘場に入れたのさ!違うか!?そして君はここで、僕にここで負ける。敗北するんだ!時子!」


感想

 生徒会編では、ウテナがよく分からないまま鳳学園の”決闘”に巻き込まれ、その勝敗で薔薇の花嫁・姫宮アンシーの所有者が決まるという男性的な価値観の話に思えたのに対し、黒薔薇編では鳳学園内の人物が心の闇を利用されてウテナ及びアンシー抹殺目的を動機とする刺客として送り込まれる形で始まりました。
 その中で決闘とは、過去に大切な人に出会って人生を変えられ、その思い出を支えに生きてきた人同士の戦いであること、決闘の勝利者が自分の思い出を”永遠”として具現化できることが判明しました。

 黒薔薇のデュエリストたちは、慕う相手の心臓(心)から武器とする剣を引き抜くところが、非常に女性的な戦う動機を強く表現しているように思えました。
 強さとは、誰かと戦って勝たなければ証明できないものなのか?という論点はさておき、強者が好きな人を勝利によって武力で奪い取るという力の原理ではなく、好きな人を思いながら好きな人のために戦うと無敵になれるという思想すなわち強い方に勝利の女神が微笑むではなく、純粋な想いを背負った勝つべき方に王子様が乗り移るという演出が神懸っていました。

 男子向けの作品だと誰が正しくて、どっちがより強いのかという物理的な強さを争う話にしかならないのに対し、思いの強さである『精神の気高さ』で勝負が決まるという世界観に驚きました。強いて不満を述べるなら、決闘の際に技が何もないことですが、思想的にナルト、メイドインアビス、鬼滅の刃などあまたの名作に甚大な影響を与えているように思えました。

「世界を革命する」とは何なのか?

 人は現実に不満がある場合、普通は自分が努力して現状を打開しようとしますが、それを試みてもどうやっても望みが叶わないと、相手をコントロールすることで願いの成就を目指します。
 革命とは競争の前提となっている既存のルールや価値観自体を構造から自分の力で作り変えることであり、それは見方によっては法律を破る犯罪であり、他者の世界を壊す戦争であります。

 しかし、少女革命ウテナにおける『革命』とは、思いの強さと純粋さで相手を心酔させることを指しているような気がしています。それは相手の心の中に自分の永遠を刻み、生き方すら左右することですが、裏を返せばそれは他者の永遠を否定することでもあります。
 永遠とは不変の状態であり、外界で何があっても変化しないことを言います。永遠と永遠の衝突がこの作品の根幹思想であり、永遠の永遠による研磨がさらなる永遠を生むという、それが「世界を革命する」の意味なのかもしれません…と、今のところ予想しています。

 ”世界の果て”の正体など、いまだ謎が多い作品ですが、次回以降も大変楽しみです。ここまでお読みいただきありがとうございました。

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