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AI外観検査の現場導入で学んだ実践知識とベストプラクティス Vol.3 ~正常画像の選び方編~

”テクノロジーで製造現場をエンパワーメントする”

アダコテックでプロジェクトマネージャをしている松本かずきです。
今回はAIモデル学習における「画像選別」のお話をします。

良品学習とは?

アダコテックでも採用している「良品学習」という学習スタイルですが、これは「教えた画像を良品(OK判定)」として学習し、さまざまなパターンや特徴の良品画像を記憶していくことで、良品の特徴を認識する方法です。
もし学習した良品の特徴に当てはまらない未知の特徴が出現すると、
「この特徴は知らないのでNG判定にします」という良品排他の考え方でNG判定を行います。

この学習スタイルには、以下のような利点があります。

  • AIモデルが未知の問題に遭遇した場合、NG判定(安全側)になりやすいこと

  • 生産される製品の多くが良品なので、画像収集がしやすいこと

良品学習AIと欠陥学習AIの違いのイメージ

画像収集と選定のポイント

学習における画像収集画像選定のポイントは「多様な観点から特徴を網羅的に学習すること」です。「良品」とひとくちに言っても、内部にはさまざまな変化が含まれています。例えばですが、

  • 生産ロットによる特徴の変化

  • 複数の生産ラインごとの特徴の違い

  • 切削品での工具寿命による変化

  • 寸法公差内の大きさの違い

1つのモデルで学習する良品バラつきの範囲

生産ラインごとに製品の特徴がバラつく場合、トレーサビリティ(履歴管理)を活用して生産ラインごとにモデルを作成する方が楽ですし、運用も安定します。

また、カメラやレンズが異なる場合は、それぞれで学習モデルを作成するのがおすすめです。これはレンズや照明に個体差(倍率や明るさの違い)があるため、精密な検査ではモデルの転用が難しくなるケースが多いからです。


学習の範囲とバラつきへの対応

切削工具の寿命による外観変化や寸法差、ロットごとのバラツキは、1つの学習モデル内で網羅する必要があります。
(「公差内のバラツキでモデルを切り替えてください!」と言われたら困りますよね?)

そのため、画像収集の際はこれらの範囲をしっかり意識することをおすすめします。もちろん、良品画像内にNG画像が混入しないよう注意が必要です。
(良品画像の混入チェックについては、別の記事でご紹介しています!)


やみくもな学習のリスク

続いて『収取後の画像から、どの画像を学習させるか?』『全て学習した方が精度が良いのか?』という問いについて話を深めていきます。

画像を全部学習すれば精度が上がるのか?」
答えはNOです。

やみくもな学習には、以下のようなリスクがあります。

  • 過学習による精度低下

  • 学習した特徴の偏りによる検出性能の低下

例えば特定のロットの画像だけで学習すると、現場ではロット変更時に過検出率が増加してしまうことがあります。

大量の画像を学習させた際の副作用

また追加学習を繰り返すと、運用開始時と比べて推論時間が延びてしまうリスクや過学習のリスクもあります。

追加学習のリスク

「正常蒸留」技術とは?

「蒸留」と聞くと、焼酎やウイスキーを思い浮かべるかもしれませんね(笑)。
それと同じように、情報を圧縮して重要な特徴だけを抽出するのが「正常蒸留」です。アダコテックのオリジナルの技術になります。

例えば1,000枚の画像を使って学習した場合、この技術を使うと、
「より少ない枚数で同じ特徴を表現できる画像の組み合わせ」を自動的に選び出します。

良品特徴の認識の様子

まるで蒸留酒が少量でもアルコールが強いのと同じように、学習枚数を減らしつつ精度を維持することができるのです。

蒸留後の正常空間のイメージ

現在、試験導入中!
こちらの「正常蒸留ツール」は現在試験中です。
ご興味をお持ちのお客様にはご紹介が可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください!

今回の話はここまでです。
アダコテックのプロダクトにご興味をお持ちの方は、是非弊社HPより是非お問合せ下さい。

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