彼の者との邂逅【後編】

3分でわかる前編までのあらすじ

・漫画の読み過ぎゲームのやり過ぎでめっちゃ目の悪い我
・いつもお風呂に入れてくれる旦那が残業中のため、我が子のワンオペ風呂を決行することに
・入浴前の準備中、黒い異物に気がつくも詳細確認スルー
・これが全ての悲劇の始まりだとも知らずに・・・

以上4点おさえていただければ、本当に前編読まなくても問題ないです(笑)

もちろん、読んでいただけるようであれば小躍りして喜びます。
よろしければ、下記より是非に。


やっとこさ本編

先に自分の衣服を全て取っ払い、鳥肌を立てながら我が子の服とオムツを脱がせて、いざ鎌倉と浴室に踏み入れた私の視界に映る黒い異物。
パッシブスキル"瞬間忘却"を積んでいるため我、再びその存在に狼狽す。

(そういや、何かゴミ落ちてたんやったな。流すか・・・。)
そう考えて、シャワーに手を伸ばすべく足を踏み出したその刹那。

みょんみょんみょんみょんみょん。

黒い異物の先端あたりで、細い何かが周囲を探るように忙しなく動き出したのである。

「!!!!!!!!!!!!!」

コイツ・・・、動くぞ!!!

無機物だと認識していた存在が、有機物的な様相を呈した衝撃というのは筆舌に尽くし難く。
さすがの私でも気がつきました。

これゴミちゃう、ゴ◯や・・・。

サイズはかなり小さく、恐らくまだ成虫ではないと思われましたが、確実にゴ◯(以下G殿)でした。
平生の私であれば、別室に待機中の殺虫剤先輩のご助力をお願いするところでしたが、狭い浴室内で我が子がそばにいるためそのカードは切りづらく、何より親子ともども冬の風呂場に全裸で佇んでいるわけで。

初めて足を踏み入れる雪山ステージに防寒装備なしで挑む、歩みを進めるごとに画面の点滅とともにパーティー全員のHPが減少していくデバフ状態(敵にエンカウントして戦闘パートになったら、HPが1しかなくて衝撃を受けるやつ)で、別室に行くというのは無謀な選択肢でした。

この後に入浴しなければいけないことを考えると、迅速かつ確実に仕留めたい。
が、近眼の私には物理による一撃必殺という手段はハードルが高い。(むしろ外して更なる大惨事を招く自信がある)
しかし、殺虫剤先輩をお迎えにいっている間に姿を見失ってはまずいし、何より寒くて無理。
環境デバフでガンガンにHPが削られていく中、ひたすら対応を考える私の心は既に複雑骨折状態でした。

そんなこちらの逡巡を察してか、触覚みょんみょん以外は微動だにしないG殿。

「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・(みょんみょんみょん)。」

永遠に続くようにも思われた両者の睨み合い。
その均衡を破ったのは。

「ぶー!!!!!!」

我が子でした。

大好きな車のおもちゃにで見えたのか(そんなバカな)、彼は、楽しそうなかけ声とともにG殿に向かってその小さな足を一歩踏み出すという、やっとこさ救助した後に余計なことをしまくってトラップにハマりまくる(そしてプレイヤーに対応を迫る)悪徳救助対象NPC的ムーブをやってのけたわけです(満面の笑み)
もう何でもいいから、お願いやからじっとしとき!!!と言ってやりたくなるやつですね。

そこからの私の行動は、恐らく脊髄によって出された指令によるものであったと思います。

水量最大のシャワーをG殿にかけて、排水溝へ流しました。
由良之内、流す。(無理矢理予告回収の図)

人類最大の天敵とはいえ、まだ幼かろう生き物に溺死という残酷な死を強制したことに対して、幼子を持つ身としては若干罪悪感はありました。

しかし、所詮この世は弱肉強食。強ければ生き、弱ければ死ぬ。

と、心の中に都合よく由良雄真実を宿し、せめて寝所は温かなれ、とシャワーのお湯の温度をそっと上げたのでした・・・。

10年以上ご無沙汰だった彼の者との邂逅を無事に乗り切った私は、とても晴れやかな気持ちでした。
さぁ、今度こそ入浴だと、意気揚々と我が子を膝に乗せた私。

けれども、私は忘れていたのです。
ゴキブリという生き物がここまで我々人類を恐れ慄かせる最大の原因は、その生命力であることに。
ゆえに、私は気がついていなかったのです。
戦いは、まだ終わっていないということに。

ゆら、しっているか

ごきぶりは

ながすくらいじゃしなない

to be continued...(本当に恐縮ですが、もう一度続きます)


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