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葉隠

葉隠というのは「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」という一説が有名な江戸時代の生き方指南書のことだ。

戦国時代、志を持って戦い、そしてそして死ぬことは誉だった。
命の使い所、なんのために生きているのかを実感できていた。

しかし、戦乱の世は終わり、江戸も中期に差し掛かると、武士も官僚化し、生きる意味も死ぬ理由もなく、ただ有用性だけが重宝されるようになっていった。
そんな中、武士の生き方を説いたのが「葉隠」だった。

「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」というと、目的のためには死を恐れるな、というように曲解されるがそうではない。

我々は、死ぬより生きる方が好きなので、善いことがなんなのかわかっていても、そのために死ぬくらいなら、理由をつけて生きる方を選んでしまいがちだ。
でも、そういう時こそ、迷うことなく死ぬことを選ぶことがかっこいい生き方なのだと教えてくれるのが葉隠だった。
そして、そのような行動の結果として、今まで見えなかったものが見つかるのかも知れない。

この葉隠、「今だけ金だけ自分だけ」という現代にこそ響くものがあると思う。

自分が死んだ後でも続く何かに貢献したい、儲からないかも知れないが正しいと思うことをしたい、自分以外のものを大切にしたい。
こういう、昨今では忘れてしまいがちな大事なことをを思い出させてくれる。

今の仕組みの中での合理化、効率化という前提を疑い、それをやると死ぬかも知れないまたは不幸な目に遭うかも知れないということを積極的に取り組むことが重要な気がするのだ。
意外と、そこには死や不幸はなく、今まで見えなかった世界が広がっているのかも知れない。

私も最近人生の節目を迎えた。
振り返れば、欲望のままにやりたいことだけをやってきた少年期の第1章、理不尽で不自由な環境の中で自由のために力を求め続けた青年期の第2章、足るを知り他の人に生かされている人生を見出した壮年期の第3章と、それぞれ色の違う章を生きてきた。
そして、これから中年期の第4章が始まるわけだが、4章こそ葉隠を参考に生きてみたいと思う。

なんというか、心地よいことや好きなこと、大切にしていることをあえて捨ててみたり、やりたくないことや、なんの役に立つかわからないような、他の誰も好んでやりたがらないようなことでも、積極的にやってみたりすることで自分にとっての善いこととは何か、見えてくるものがあるかも知れない。
そして、そういう行動を普段からやることによって、嫌なことや意味のないことの向こうに自分にとっての善いことがあるなら、迷わず行動できるようになるのではないか。
そんな気がするのだ。

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