街で偶然に出会った若い女性から教わった「本物の自由」
駅前の通りは、もうすぐ15歳になるうちのチワワがこれまで大のお気に入りの散歩道だったけれど、最近はあまり歩けなくなったのでいつしか遠のいてしまっていた。
けれど今日は、パソコンをひたすら叩く私のそばにひっついてエスカルゴのように小さく丸まったまま静かに寝続ける姿を見ているとなんだかとても切なくなり、あまり歩けないことは承知の上で
久しぶりに駅前の散歩道へ出掛けることにした。
いつもの駅前の地下の駐車場に車をとめて、チワワを抱えながら地上へとつながる階段を
ゆっくりと登っていった。
そして地上にたどり着いた瞬間、いつもと違う光景が目の前に広がっていることにびっくりした。
たくさんの露店が並んでいる。ふと前を見ると、一人の若い女性が目に留まった。
今どきの若い子らしく可愛らしい女性だった。彼女の近くに置かれていた籠の中には、何か黄色い手帳のようなものがたくさん入っていた。
何だろう‥?と思って近づいていったら、その女性がにこやかに近づいてきて話し掛けてくれた。
「これは、私が一年間で170ヶ所でアルバイトした日々を記録したものなんです。」
彼女は、タイミーというアプリを使って一日一箇所ずつ、違う職場で働いてきたらしい。
「一年で170ヶ所でアルバイトしてきたなんて‥すごいですね!」と私はつい大きな声を上げてしまった。
私はその「手帳」ではなく「手記」であった冊子の中身をどうしても知りたくなり、
「今チワワのお散歩中で駐車料金しか持ってないので、後で買いに来ますね!」
と言って彼女と別れた。
そして再び小銭を持って彼女の元へと向かった。
プレゼント用にと二冊購入後「これはおまけに差し上げています」と言って、綺麗にラッピングされた二輪のお花をそっと
手渡してくれた。
家に帰ってすぐそのお花たちをリビングに飾り、早速その手記を読んでみたら、彼女の性格をそのまま表しているかのような偽りのないストレートな文調が心に響き、そして予想以上の中身の深さにも痛く感動した。
その中の一節をご紹介します
「いろんなところに行っていろんな人に会ってるからその分醜い扱いをされたり嫌な経験をしたこともあるけど、でも私が行動してタイミーをしたからこと出会えた人とか経験できたことの方が、あまりにも大きすぎる」
私は、ここを読んで自分事のように嬉しくなった。そして、お花を二輪、優しくそっと手渡してくれた時の彼女の温かい波動を思い出した。
そして「同じ所でずっと働くことが良いとされてるけれど、私は、、」と彼女が語ってくれた様子を思い出したとき、自分の胸につかえていた何かがようやく癒され、すーっと浄化されていったように感じた。
私も実はアルバイトを点々としていた時期があったから。
世の中の常識に縛られることなく、自分の直感、情熱に従って、「今は、一日一日違う所で働きたいんだ!」という衝動に素直になり、導かれるように動いていった彼女の行動力には尊敬の念しかない。
おまけに私よりかなりお若い年齢でありながら、私が一生掛けても追いつけない、かなりかなり高い精神性が宿っているという事実も、冊子を読み進めていくうちに伝わってきた。
今どきの若い子ってすごい!
素直な感動が沸いてきた。
素直っていいな、正直になるっていいな、
と、彼女の生き方にすっかりインスパイアされ、かなり自分が上機嫌な波動の状態になっていることに気づいた。
彼女はその1年間で、世の中仕組みや経済の流れも段々と理解できてきたと綴っていた。
最近は、電子書籍が主流なので、ほとんど本を読まなくなったけれど、どうやら昨日の露店の集まりのテーマは
「読書の秋」
だったかと思う。
なぜならすべての露店が「コーヒーと本」「ピザと本」「お花と本」「アクセサリーと本」「ハンドメイドバックと本」
といった感じで、「本というアナログの良さも思い出して欲しい!」という願いを込めて必ず本も売っていたから。
そして彼女は、「自分の貴重な経験が多くの人の役に立って欲しい」という一心から一つの冊子にまとめ、これまでのピラミッド型構造の社会から抜けて本当にやりたいことをどこかで望んでいても勇気が出ない人の背中を優しく押すために、露店で売っていたようだった。
関心を示して寄ってきて、彼女の想いを分かって購入してくれた人に対しては、これからの素晴らしい人生の門出への祝福として、
綺麗なお花を心を込めてラッピングして配っていた。
まさに、「他者貢献を前提とした自由」を生きている女性だった。
これからの時代は、自由と平等、そして真の横のつながりを重視する時代と言われているけれど、ただやりたい放題に自由にやるのではなく、
「個が持つ自由」を優先させながらも、「個が持つエゴ」を次第に消滅させていく生き方在り方を目指していく時代であることを、
若くして既に深い所でしっかりと腑に落としている様子だった。
そんな彼女の精神性の高さに圧倒されながら、彼女が持つ「他者への愛の深さ」がたくさんの人に広まっていくことを
心から願った。
その冊子を購入した後、再び地下の駐車場へと続く階段を
チワワをしっかりと抱っこしながら降りようとしたその瞬間、
我が家のチワワが突然「降ろしてくれ!」と私の胸の中で暴れ出し
勢いよく
半年ぶりに 長い階段を全く恐れずに
元気に駆け降りていった
、
、