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人格者と言われるクリステンセン教授の人生にふれる『イノベーション・オブ・ライフ』

「破壊的イノベーション」「ジョブ理論」のクリステンセン教授が幸せな人生を歩む方法を教えてくれる現代の名著

世界最高峰のビジネススクールであるハーバード・ビジネススクールを卒業した輝かしいビジネスマンが、その有能さゆえに犯罪者になったり、家庭で大きな挫折をしてしまうことがある。「公私ともに成功するよう生まれついていると思われた彼ら」なのに、離婚や子どもとの疎遠、刑務所に入るための戦略を実行してしまうはなぜか。「わたしたちはだれしも、これまであまたの人に道を踏み誤らせた力や決定に翻弄されやすい」から、なぜそのような問題が起きてしまったのか、どうしたらそうならずに、充実した幸せな人生が送れるのかを、クリステンセン教授がこれまで培った経営研究の成果を使いながら教えてくれる本である。

私たちを動かすものを理解する――衛生要因と動機づけ要因

仕事には、少しでも欠ければ不満につながる要因がある。これを衛生要因と呼ぶ。これは、衛生状態が悪ければ健康を害するが、衛生状態が良くても健康が増進されるわけではないことからつけられた呼び名だ。ステータス、報酬、職の安定、作業条件、企業方針、管理方法などがこれにあたる。人は衛生要因が満たされないと、不満を感じる。重要な点は、この衛生要因が満たされても、「仕事に不満がない」状態になるだけであって、「仕事に満足している」状態にはならないということだ。では仕事に満足するには何が必要か?それが動機づけ要因と呼ばれるものだ。これには、やりがいのある仕事、他者による評価、責任、自己成長などが含まれる。動機づけは、外からの働きかけや刺激とはほとんど関係がなく、自分自身の内面や仕事の内容と大いに関係がある。
(ここは、動機づけ理論のフレデリック・ハーズバーグ氏の研究をもとに解説してくれている)
問題が起きるのは、衛生要因が満ち足りているのに、なおも高い報酬を強く得ることが目的になったり、金銭が何よりも優先されるときだ。

・本当の幸せを見つける秘訣は、自分にとって有意義だと思える機会を常に求め続けることにある。新しいことを学び、成功を重ね、ますます多くの責任を引き受けることのできる機会だ。
・わたしたちは、金銭をもたらすものと幸せをもたらすものの違いを、怖いほどあっけなく見失ってしまう。
・わたしたちが最も陥りやすい間違いの一つは、それさえあれば幸せになれると信じて、職業上の成功を示す、目に見えやすい証に執着することだ。もっと高い報酬。もっと権威のある肩書き。もっと立派なオフィス。こうしたものは結局のところ、あなたが職業的に「成功した」ことを、友人や家族に示すしるしでしかない。
・この仕事は、自分にとって意味があるだろうか?成長する機会を与えてくれるだろうか?何か新しいことを学べるだろうか?誰かに評価され、何かを成し遂げる機会を与えてくれるだろうか?責任を任されるだろうか?---これらがあなたを本当の意味で動機づける要因だ。これを正しく理解すれば、仕事の数値化しやすい側面にそれほど意味を感じなくなるだろう。

『イノベーション・オブ・ライフ』クレイトン・M・クリステンセンほか著:桜井佑子訳,P44-45

創発的戦略と意図的戦略

エフェクチュエーションとコーゼーションに似ている。
人生やキャリアにおいて、完全に計画しておくなどということは不可能だ。的を絞った計画は、特定の状況でしか意味をなさない。もし、自分の求める衛生要因と動機づけ要因の両方を与えてくれる仕事がすでに見つかっているなら、意図的な手法をとるのが理にかなっている。だが、そうでないなら、創発的な手法を取り、人生で実験することだ。外へ出ていろんなものごとを試しながら、自分の能力と関心、優先事項が実を結びそうな分野を、身をもて知ること。

戦略は必ずと言ってよいほど、予期された機会と予期されな機会が組み合わさって生まれる。

『イノベーション・オブ・ライフ』クレイトン・M・クリステンセンほか著:桜井佑子訳,P55

最大のテーマ「どうすれば充実した幸せな人生を送れるか」

読んだ結果、その結論は、「あなたの人生の目的を明確にすること」だと理解した。衛生要因と動機づけ要因の話にもあったように、何が自分を動かす重要動機なのかを知っていれば、自分に幸福な仕事を選び取ることができる。人生も同じだろう。自分にとって価値あるものごとに尽くすことこそが幸せなのだと、深く理解するこ深くできた。

クリステンセン教授は、目的が意味を持つためには3つの部分が必要だという。それは、自画像、献身、尺度だ。
自画像は、どうなりたいかのイメージ。
献身は、自画像へのゆるぎない思いと言ってもいいだろう。そしてその思いに従った決断をし続けるということだ。
尺度は、自画像へ向かっていく献身の進捗測定を正しく行うための唯一、またはごく少数の尺度。社会一般の尺度ではなく、自分だけの人生の目的に合致した、自分だけの尺度を用いることこそが、本物の知性であると感じた。



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