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通訳学校で教わる「最後に聞いたことを最初に訳すとラク」を疑う

なんだか少しずつ冬らしく
なってきました。

多少のずれはあっても、
季節は順番どおりに
めぐるものですね。

順番と言えば…
実は、通訳も駆け出しのころ、
私は「順番にも意味がある」ことを
よくわかっていませんでした。

通訳学校では逆に
「とりあえず一番最後に語られたことを
最初に持ってきて訳す
とあとがラク」と
教わります。

今でも私が通った通訳学校サイトには
「最後に聞いたことをはじめに訳したら」
という講師からのアドバイスが載っています。

現場体験が豊かな講師ならではの
アドバイスと評価してあります。

私もこれを初めて聞いたときは、
その手があったか!
いいこと聞いた!
ニヤニヤしました。

あとで痛い思いをするとは知らずに…

それは2004年こと。

予想外のことが起きました。

子どもの発達に関する
5日間連続講座を泊まり込みで
通訳していた時のことです。

オーストラリアでも
大人気のバーバラ先生が
休み時間に
戸惑った顔をして
こう言ったのです。

「友紀子、あなたは
私が最後に言った事を
最初に訳す
ことがあるでしょ。」

「はい」としか言いようがありません。

バーバラ先生は
そうする理由を訊くわけでも
やめるよう命じるわけでも
ありませんでした。

ただ、私には
不気味に気になる一言でした。

これは不思議でした。
バーバラ先生は日本語は
わかりません。

それでも文字にならない何かが
ずっと通じていたとしか
思えません。

正直、この時私は考えが足りませんでした

『バーバラ先生が嫌がるから』
とりあえず最後に聞いたことを
最初に訳すのはやめただけです。

通訳学校で言われた通りを 
バーバラ先生の言うとおりに
変えただけの無責任でした。


本当の理由が腑に落ちたのは
なんと8年も経ってから!

イギリスで大人気のストーリーテラー
ニックさんの通訳をしていたときのこと。

物語はこんな流れでした。

日本語だけで失礼。

「ある冬の満月の晩
枝ぶりもあらわな大きな木の枝に
ふくろうが1羽とまっていた。
その下を足早に通り過ぎる人影があった。」

満月、木の枝、ふくろう、
その下を急ぐ人影…
と景色の中に入りこんで、

出てくる順番通りに
イメージを心の目で追う
自分がいました。

この時、雷に打たれるような
思いがしました。

順番そのものに意味があると
身に沁みました。

イメージ、つまり言葉の順番は
映画で言えば
カメラの動き
です。

イメージの順番を
入れ替えてしまっては
違う映画になってしまいます。

それは通訳の仕事ではありません

たとえば、
これは英国チェシャ地方の昔話です。

最後を最初に訳すという、
ほどではありませんが、
順番がだいぶ違うので、
雰囲気もずいぶん違っています。

「There was once a farmer on his way to
to sell his mare at Mcclesfield market.
He had rien early and set out
when the flat fields were still
clagged with cold mist.

むかしむかし、農夫がマクレスフィールドの
市が立つ日に雌馬をうりにいきました。
農夫は、まだ夜明け前の朝霧が
平原をしっかり包み込んでいるうちに家をでましたが...」

ええと…
農夫はまだ市に着いていないのですが…?

順番をなるべく守ると…こんなのはいかが?

「むかし、とある農夫が
雌馬を売ろうとマコウズフィールドの市をめざしておりました。
早起きして出発したとき
たたなづく平原は いまだ
冷たい霧に覆われていたのです。」

記憶力に自信がないので
最後に聞いたことを先に訳すのではなく
記憶力を高める方法をさぐるのが
本道でしょう。

そんな、記憶力ワークショップも
来年は開く予定です。

なにかと忙しい12月。
くれぐれもご自愛ください。


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