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宇宙のお友達

ドギャギャギャギャギャギャギャガシャシャシャシャンガガガガガガガガガガガガガガガガガガビシャンズゴオオオオン


物凄い揺れで立つのも困難だ。
本棚の本がバタバタと崩れ落ちていく。観葉植物が地面に叩きつけられて土が散乱している。建物が揺れ動く音で上手く聞こえないが、窓の外から悲鳴の様なものが聞こえるような聞こえないような。

本能で理解できる。

これはいつもの地震とはレベルが違う。揺れの大きさも、継続時間も。止む気配がしない。

もうこのまま地球は終わってしまうのではないか。

物凄い音をたてながら部屋の中の物が倒れて砕け散る。タンスが横転し、部屋のドアを塞いだ。

「ダメだ。これじゃあ出られない………」


絶望したその時、窓を突き破り、何かが入ってきた。

「早くこの中に入って!!」


僕は言われるがままそれに入っていった。

「地球から脱出しよう!もうすぐ地球は崩壊して、人類は絶滅するんだ。そうなる前に急ごう!!」


家の窓を抜けて、空を舞う。

空から自分の家が崩れていくが見えた。

街もビルも学校も全部が全部崩れていく。


誰かが言っていた。
この世界は今年で終末を迎えると。



「危なかったね。陸斗くん。危うく君も死んでしまうところだったよ。」

あっ、全部の記憶を思い出した。

「久しぶり、ミールくん。」



ミールくんはイムワトス星という星からやってきた宇宙人だ。

ミールくんと僕が出会ったのは3年前の夏休み。
僕がまだ小学3年生の頃。
僕は自由研究のテーマを探すために裏山へやってきた。
何にしようか草むらを探索していると、どこからか焦げ臭い匂いがした。
その匂いの方向へ向かうと横2メートル縦1メートルくらいのミニジェット機のようなものがそこにあった。

近づいてみると何か影で動いている。
よーく見てみるとロボットがいた。
上が丸みを帯びていて円柱で腕はよく伸びそうなバネ式になっている。顔に当たる部分にはモニターが付いている。

ロボットがこっちに気づき、向かってきた。
やばいと思い逃げようとすると、
「助けて下さい。エネルギーを下さい。」
と言ってきた。


話を聞くと、ロボットの名前は『ミール』といい、別の星から地球に旅をしに来たと言う。本当は日本ではない所へ行くつもりがエネルギー切れということで目的地ではない場所で墜落してしまい、途方に暮れた所を僕が見つけたらしい。


「で、そのエネルギーっていうのは何なの?」

「エネルギーというのは地球で言う炭酸の事です。私の乗り物はドローンといい、炭酸をエネルギーに変換し動力源にしています。
ですが、いま炭酸が不足していてドローンが機能しないのです。
なので炭酸を少し分けてもらえないでしょうか?」

「炭酸ってジュースの事?」

「ジュース?炭酸液ならなんでも可能だと思います。」

「OK。ならそこらの自販機で買いに行ってくるよ。」

「何本か買ってきたよ〜必要なら全部あげるよ。」

「ありがとうがざいます。本当にこんなに高価なものを貰っても良いのですか?」

「高価?全然安いよ。自販機で百円で買えるもん。」

「100円?!そんなにこの地球は安いのですか!流石地球。素晴らしい、素晴らしすぎる。」

「そんなに感動する?」



そこからドローンがエネルギーチャージを行うための何週間、僕らは遊び惚けた。
虫や魚を捕まえたり、ゲームセンターへ行ったり、ゲームやラジコン、色々な事をした。


「この日本にいる間は最高の時間だったよ。
陸斗くん、またいつか会おう。」

「勿論!また絶対に会おう!そして今度はミールくんの星にも連れてってよ!」



         バイバイ




「まさかこんなに急にミールくんと会えるとは思っても見なかったよ。長い間あってなかったけどミールくんはあんまり変わらないね。」

「そっちこそ、って言いたいところだけど陸斗くんはこの数年でかなり大人っぽくなったね。」

ミールくんは嬉しそうに手を振りながら喋っている。

ミールくんの長い腕を伸ばしきってもなおぶつからないほどの部屋の広さに圧巻だ。
というかこの乗り物は一見してみると外見は小さいのだが、中に入ると何個も部屋があり、まるで中は別の次元のようだ。
これがイムワトス星の技術か……

「そういえば陸斗くん、君は僕の星へいきたいって言ってたよね。」

「あっ、うん。そういえば言ったね。」

「もう地球には戻れる状況でもないし、いっそ僕の星で暮らせばいいんじゃないかな?
ほら、僕の星も学校や家があるし、地球より文明が発展している。
慣れたら地球よりも快適で楽しいと思うよ。」

「そっかもう地球は終わってしまったんだ……」

改めて考えてみるととても虚しい気持ちだ。突然日常が遮断されて、誰とももう会えなくなる。

「そんな落ち込まないでよ!出会いと別れがあるからこその人生。そう僕らはあの時に学んだじゃないか。」

「そうだね。考え過ぎは良くないね。」

ミールくんと久しぶりに合い話す事が沢山あるものの流石に何時間も喋り続けているとネタが尽きてくるものだ。


「ミールくん、なんか遊べるものとか持ってないの?地球で手に入れた物とか。イムワトス星の物でも何でもいいよ。」

「そーだなー、、、、、
全部地球に置いてきちゃったからなぁ、、、
あっでもそういえば1つ気になって持って帰ってきたけど置きっぱなしにしてた物があったんだ!」

「おっ?!何々?」

「ジャ~ン!世界のジョーク図鑑!
この本には世界のあらゆるジョークが書かれているんだ。」

「聞かせて聞かせて!」

「じゃあ刑務所の囚人の会話の話をしよう。
ある刑務所に新人が入ってきた。
新人に『君は一体どんな罪を犯してここに入ったんだい?』と男は聞いた。
新人は『まぁ壁に穴を空けてやっただけですよ。』と言った。
男は『え?でもそれだけでは実刑にはならないだろ。どう言うことだい。』と疑問を持った。
新人は言った。『まぁ原発で働いてたんで。』」

「うおーなるほどね。こりゃ一本やられましたわ。」

「でしょ。ジョーク面白いでしょ。」

「他には他には?」


















そんな感じで暇をつぶして何日がたっただろうか。
日が立つに連れ僕は次第に事の重大さに気づいてきた。

そうだ。
もうこの世には僕しか人間はいないんだ。

考えれば考えるほど寂しくて悲しくて虚しくなる。
もう親にも友達にも先生にも会えないんだ。
もうみんな死んじゃったから……
僕だけ取り残されたんだ。
今はもう僕だけが人という生物なんだ。
なんでもっと早く気づいてなかったんだろう。
なんでミールくんが来た時に断らなかったんだろう。
孤独が増幅して部屋を埋め尽くして今にでもぶち撒けてしまいそうだ。
せめて誰か僕と同じ生物でいてくれよ。僕の近くにいてくれよ。




僕一人は辛いよ。怖いよ。悲しいよ………














僕もみんなの元へ帰ろう。

縄を首に巻く。そして





















「今日は一体どんなジョークにしようかなー。
陸斗くんはすぐに腑に落ちる話が好きだから、そうだ、沈没船ジョークなんてどうだろう。
豪華客船が沈没し、救命ボートを用意したが定員オーバ、その対策として各国の人を落としていくと言うジョーク。
きっと楽しんでくれると思うな。
えーっと、あぁ日本人はそう言ったら落ちるのか!」

 




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