【ショートショート】試作品2「鳴り止まない電話」
――2024年2月29日。午前零時。
空き家となっていたはずの、一軒家の黒電話が鳴った。
電話は一日中鳴り続け、日付が3月1日になると同時に、ぴたりと鳴り止んだ。
――2028年2月29日。午前零時。
更地となっていた、一軒家があった場所で黒電話の音が鳴った。
電話の音は一日中鳴り続け、近所の人たちに気味悪がられながらも、日付が3月1日に変わると同時に、ぴたりと鳴り止んだ。
――3232年2月29日。午前零時。
かつて、人類が暮らしていた海底洞窟で黒電話の音が鳴った。
電話の音は一日中鳴り続け、誰の耳にも聞き届けられることなく、日付が3月1日に変わると、息を潜めるようにぴたりと鳴り止んだ。
おわり
※みなもすなるしょふとしょふとといふものを、われもしてみむとてするなり。
『灰かぶりの猫日記』より
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