【小説】「渋谷、動乱」第7話
ハチ公前広場から4車線の神宮通りを挟み、広場全体を見下ろすことが出来るガラス張りのビルの3階のカフェに、予定より早く仕事を切り上げた美容師の藤堂凌太朗の姿があった。藤堂が聞いたあの地鳴りからすでに、3時間近くが経過していたが、仕事中も耳鳴りのように、あの地鳴りが反響し続けていた。藤堂は絶対音感を持っていたわけではなかったが、音のことに関して、自分が聞いた音がどこから、何から発せられているのか、同定しないと気が済まないような気質があった。仕事を切り上げた後、藤堂はひとり、それ