見出し画像

東京ウォーカーズハイ

今、東京に来ている。
私は地方住みで東京なんて滅多に来れないので、ちゃんとテンションが上がっている。あと、東京タワーとか東京ビッグサイトとか、テレビでよく見かける場所に実際に行けると嬉しい。東京には「ここがあの!」と思える場所が多くて楽しい。

久々の東京だが、特にやることもないので散歩した。
くやしい!せっかく東京に来たというのに、自分の切れるカードが散歩しかないのがくやしい。自分の空っぽさに反吐がでる。特に目的はないのに東京に来た時、他のみんなはどうやって過ごしているのだろうか。

結局一日中歩いていたわけだが、おかげで良い場所を見つけた。
「天王洲アイル駅」の東にある島?だ。


ここは埠頭(船を横付けして荷物の積み下ろしを行う場所)と呼ばれる場所で、徒歩で橋を渡って一周することができる。暇だしこの埠頭を一周してやろう!と意気込んで足を踏み入れた時、時刻は既に深夜0時を回っていた。人通りは全くなく、あるのは無数に積み上げられたコンテナと、ただっ広い道路だけ。殺伐としていて、ずっと同じ景色が続く。

積み上げられた巨大なコンテナたち




生き物がいる気配が全くない。最初から誰もいないんじゃなくて、数分前に全員フッと消えてしまったような雰囲気。オープンワールドゲームのただただ何もないマップに迷い込んでしまったような、奇妙な気持ちになる。トラックは時折通るんだけど、本当に人が運転しているのか怪しい。本当はこのゲームのオブジェクトの一つに過ぎず、機械的な動きで道路を行き交うように設定されているだけなんじゃないか。

空気は冷たく、静寂の中に響くのは自分の足音だけ。自分以外の全てが無機質な存在に変わってしまったかのように錯覚する。


ローソンがあった。
ようやく見慣れた店を見つけることができて安心したが、よく見てみるとローソンではない。「PORT STORE」と書いてある。どこにもローソンとは書いていない。
オープンワールドゲームの日本を模したマップっぽいな、と思った。


あとは闇の工場があった。
深夜に見る工場は雰囲気がありすぎる。


30分くらいで埠頭を一周し、ホテルに帰ってきた。素晴らしい場所だった。日本なんだけど日本らしくないと言うか、殺伐とした異国感を味わえる不思議な場所だ。

帰ってきてiPhoneの歩数計を見ると、3万歩以上歩いていた。全く気が付かなかったが、靴下を脱ぐと左足親指の爪が割れていた。ランナーズハイならぬ、ウォーカーズハイになっていた。思えば一日中歩き回っていたにもかかわらず、深夜に埠頭を一周しようと思うことがおかしい。コンテナを見つけたあたりから、明らかにテンションが異常だった。

テンションがおかしくなれば、普通は奇声を上げたり走り回ったりするものだと思うが、自分の場合はただただ運河沿いを歩きたくなるらしい。実に無害。自分のそういうところは好きだ。










この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?