#6 頭の中とリンクする家の中
同じことを繰り返すというのも認知症の特徴的な症状の一つだ。
単純にやったことを忘れるということだけでなく、不安が強いことでも引き起こされる。
サミーさんは掃除と片付けをひたすら繰り返した。
認知症の進行とともにクオリティは下がり続けて、最後は何をしているかわからない状態だったが、入所まで続けていた。
頭の中
認知症の初期。
サミーさんは忘れてしまう不安で山のようにメモ書きを残し、
必要な書類も、ただの紙屑も一緒くたになった部屋で
「頭の中がね、こうごちゃごちゃするの」
自分の額の前で両手を動かし混乱する頭の中を表現してくれた。
こんな場面、前にも見たことある。
アルツハイマー型認知症だった伯母も同じように、
「なんかうまくまとまらないの」
と額の前で左右の手を水平に動かして何かうまくつながらない頭の中を表現してくれた。
すごく切ない気持ちになった。
自分の頭の中で絡まってぐちゃぐちゃになるもの。
何とかしようとしてみても
うまくほどけないし、つながらないし
どうにもできないもの。
頭の中から消えていく大事だったもの。
家の中
サミーさんは戸棚や書斎机の引き出しにしまっている書類やはがきを出しては戻すを繰り返していた。(こういう意味のないことを繰り返すことを仮性作業というらしい。)認知症の進行とともに頭の中とリンクして家の中はどんどんぐちゃぐちゃになっていった。
元々は整理整頓しておくことが私よりもはるかに得意だったのに、それができなくなっていった。食卓の上には鞄の中の財布や鍵が散らかり、戸棚や引き出しを開ければ、殴り書きのメモ、書類、文具、線香、マッチ、いろんな物がごちゃ混ぜになってギューギューに押し込められていた。
それを見て
「私はこんなこと”絶対に”しない」
「誰かが家に入ってこんなことしている」
とパニックになり我が家に連絡をしてくるということを毎日繰り返していた。ひどくなれば、警察に電話をしてしまう。
不安からとった行動でさらに不安に襲われるという負のループに入り込んでいた。
1つ救いだったのは、ASDぽいので決まったことを決まった時間にする人だったこと。昼間にどれだけ不安があって落ち着かなくても、18時ころには何事もなかったように夕飯を食べて、20時ころにはお風呂に入って寝るという規則正しい生活をキープできていた。
そして朝になりまた同じことを繰り返す日々。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?