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#15 破壊神サミー誕生 失行、失認の出現

認知症の姑サミーさんの心のよりどころは洗濯と掃除と片付けだった。

それをしていれば落ち着く。
逆にそれをしていないと落ち着かない。

認知症になるまできちんと洗濯をして干して、取り入れて、たたんで、しまう一連の動作はきちんと過ぎるくらいしていた。

掃除機をかけ、拭き掃除もマメにして、食器や本などきれいに並べておくことに心血を注いできていた。

認知症になる前は、自称きれい好きのサミーさんはお客さんが来ていても片付けをしたいがために、食べている端から、使ったお皿やカップを片付けて洗うということをやり続け、ゆっくりお茶を飲みながら話をするということをしなかった。

元々、独特の感性と、人に押し付ける感じ、空気を読まず、何があっても揺るがない・ゆずらないこだわりの強さを持ち合わせていたが、認知症になりさらにそれが強調されるようになっていった。


そんなサミーさんは認知症が進むにつれて脳の回路がつながらなくなり、診断から2年ほど過ぎると失認と失行の症状が強くみられるようになってきた。家の中がぐちゃぐちゃな上に、物が破壊されていくことが起こっていった。


失行は、「お茶を入れる」、「服を着る」、「スプーンを使ってご飯を食べる」など日常的に行っていた動作や物の操作が運動機能の障害がないにもかかわらず行えなくなります。

失認は、自分の身体の状態や自分と物との位置関係、目の前にあるものが何かを認識することが難しくなることです。

「健康長寿ネット」より

冷蔵庫の中の棚や引き出しを外して、きれいにした後に元に戻せないので扉が閉まらない。⇒エラー音が鳴る⇒コンセントを抜く⇒冷蔵庫心停止
仏壇の引き出しの底が抜けている(なぜ?)
仏壇の下の棚の扉がなくなっている
位牌がとんでもないところにしまってある
電気ポットにお茶やコーヒーを入れて沸かす
カップ麺のスープの粉だけが残っている(どうやって食べた?)
買ったばかりの掃除機のノズルが壊れる(修理しようと思ったら、もう一台買える値段だった)
ラジカセのコンセントだけなくなる
化粧水と歯磨き粉の蓋だけいつもなくなる
度々食器を落とす、壊す

どういう構造の物なのか、何に使うものなのか、どこに置いてあった物なのか、何をどうやってしまうのか、どのくらいの力で持ったらいいのか、普段私たちがさほど深く考えなくてもできることが、サミーさんはできなくなっていった。何とかしようとすればするほど、物事がうまくいかなくなっていった。

これが掃除や片付け好きじゃなかったら、ここまで仏壇をはじめ家財道具が破壊されることはなかったかとはおもうが、仕方がない。それがサミーさんなのだ。

私たちから見れば、無駄のように見えてしまう認知症のサミーさんの日常は、サミーさんにとっては不安を抱えながらも大事な毎日だったのではないだろうか。(と思いたい)

限界ギリギリまで家で過ごす。

そのギリギリが着々と迫ってきているのは薄々気づいていた。


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