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#5 介護のコツ ケアラーの優しい人戦略
まだまだ口も体も元気な認知症の人の介護をしていると、かなり腹が立つことが多い。うちの場合、介護される側のサミーさんも同様に腹を立てていることが多かった。介護する側の心の揺れはそのまま介護される側に伝わっているということを思い知らされた。
― ひとりでできないから私が来ているんですよね
「何にもできない人みたいに馬鹿にして」
― 何回も同じこと聞いてますやん。
「私が困っているんだから聞いてもいいでしょ。」
―(なんでそんな偉そうに言われなあかんの?)無言で険しい表情のみ
「なんでかねすけさんにそんな偉そうに言われなあかんの?」
どちらかが折れるしか埒があかなくなる。
この場合、認知症の人にそれは難しいのでケアラー側が折れるしかない。
認知症の義母の介護が本格的になってきて、電話や実際に家まで行き対応することが増えてくると、毎回のやりとりに疲れてきた。
「助けてー、すぐに来てー」と言って助けを呼んでいるのに、感謝するどころか上記のようなやり取りになる。
本当に困ったことが起きて自力では対処が難しいこともあるが、半分はひとりでいるのが不安になってしまっているようだった。
優しい人戦略
後味の悪い別れ際に「やってもうたー」とたびたび反省した。
お互いにイライラすることに疲れていた。
それなら優しくするしかない。
心から優しくできそうにもないので、「優しい人」を演じ切ることにした。
演じるので、当然本心でないことも口にしていた。
いわゆる優しい嘘をつく。
何回も連絡してこんといて
⇒「どうした?」「連絡してくれてよかった」
できてへんやん
⇒「ちゃんとできてるみたいだけど、これだけはやらせてもらうわ」
(これはだいぶヤバいな)
⇒「まだ大丈夫そうだね」
近所迷惑や命に関わらないことは放っておく
ほんまは来たくはないけどね ⇒「また来るね」
明日は行かないけど ⇒ 「明日行くからね」
そんな風に優しい人を演じているうちに、サミーさんとやり取りするときはそのモードに切り替わるようになり、サミーさんは私のことを「優しい人」として認識してくれるようになっていった。
困っている人戦略
ただ、サミーさんは優しさの味をしめてしまったのか、「困っている自分」を演じるのがうまくなった。
鍵をなくす、財布をなくす、携帯電話をなくす
大体この3つを順番になくして(隠して)みては、私に電話をして助けに来てもらうということを繰り返した。
相手もなかなかの策士だった。