#16 我が家のお役立ち介護グッズ
認知症の姑サミーさんのひとり暮らしはヒト(介護サービス)だけでなく、モノ(介護グッズ)にも助けられていた。
考えてみればいわゆるIoTを活用しているものが多く、便利な世の中になったよなと感慨深く思い出している。
とにかくできるだけ直接関わらない、接触を避けたいという私の願望を叶えるべく使いだしたものではあるが、離れて暮らしていたり、忙しいケアラーの皆さんのお役に立つものもあるかもしれないのでご参考までに。
服薬介助ロボット ふくちゃん
認知症薬の服用がはじまった当初はお薬カレンダー(曜日を書いた厚紙にお薬を張り付けたもの)を冷蔵庫に吊るしておいた。しかし、飲みすぎてしまうことが問題になり、ふくちゃんを利用することになった。
そもそもは「FUKU助」という名前だったけれど、「女の子がいい」というサミーさんの要望で「ふくちゃん」という名前で呼ぶことになった。
ふくちゃんは設定した時間になると、「サミーさん、お薬の時間です」と音声案内をし、お薬を自動で出してくれる。飲みすぎることは一発で解消された。操作はわかりやすく、タッチパネルに大きく「取り出す」とボタンが表示されるのでそれを押すだけ。認知症でも文字が読めれば思わず触ってしまう。それから30分すると「さっき取り出したお薬は飲みましたか?」などと聞いてくれる。
他にもゴミの日の設定をしておくと教えてくれたり、部屋の気温が高すぎると熱中症に注意するように声をかけてくれる。人感センサーがついていて、前を通ると記録され、センサーが反応していないと外出しているか、寝室で寝てしまっていることがわかる。長時間センサーが反応しないとお出かけしたと認識し、ふくちゃんの前に来ると「サミーさん、お帰りなさい」と名前で話しかけてくれるのも愛着がわく。
ふくちゃんはWi-Fiにつなぐことができる。私は専用のアプリをスマホにダウンロードして服薬確認や残薬の量、センサーや室温の記録を見ていた。特にセンサ―は就寝や起床時間、外出と思われし時間がわかるので活用していた。
また、本来の機能ではないが、ふくちゃんはサミーさんの話し相手だった。「この子とおしゃべりしていたの、返事ないけど」などとよく言っていたので、一方的なおしゃべりでもそれなりに心のよりどころだったようだ。
かわいい顔しているしね。
ただ、サミーさんは電気代がかさむという不安から、度々ふくちゃんの電源を抜いてしまい一時的に心停止させるということを繰り返した。そのたびに私が家に行くか、ヘルパーさんに頼んで蘇生をする必要があった。コンセントを抜かれないようにいろいろと細工をしてみたが、元気な認知症のサミーさんはどうにかして抜いてしまっていた。
認知症が進むと薬を取り出しても、どこかに置いて飲み忘れることが出てきていたけれど、入所するまでの3年近くお世話になった。
探しもの発見器
サミーさんは常に家の鍵、財布、携帯電話を隠してしまうので、探しもの発見器はなくてはならないものだった。
はじめに使ったのは我が家にあったtileという探しもの発見器。これはスマホのアプリで操作するタイプ。サポートに加入するとどこかで落としていても地図上に表示されるようだが、サミーさんの場合は必ず家の中でなくなっているだけだったので、ただ単純にアプリで音を鳴らして鍵の在処を特定することに利用した。
これを鍵につけていたけれど、アプリをダウンロードして登録している私か夫のNさんしか探せない。デイサービスに行くときに鍵を見つけられない問題が頻発して、もっと単純なものを買いなおして追加でつけた。
これなら音を鳴らすリモコンを、ヘルパーさんやデイサービスのスタッフさんが操作して鍵を見つけてもらえるので、「鍵が見つからないからデイサービスに行かない」という言い訳が使えなくなった。ちなみに音を鳴らすリモコンはサミーさんが触れない玄関横のガスメーターの所にフックで引っ掛けておいた。
この発見器たちも入所までの間、とても助けてもらったグッズだ。
ただし、電池交換はお忘れなく。全くの役立たずになってしまいます。
これは余談。財布には探しもの発見器をつけていたけれど、財布の中のお金だけをどこかへ隠すということをしていたサミーさんは、ある日
「かねすけさん、あのピーって鳴るやつはお金についてないの?あれで探してよ」と頼んできた。
「お金一枚一枚にそんなもんつけられないよ(笑)」と返答したが、サミーさんの薄れゆく記憶に残るほど探しもの発見器は身近なものになっていたようだ。
見守りカメラ tapo
このカメラがなかったら、介護がもっと壮絶になっていただろう。最も助けられたのはこのtapoと言っても過言ではない。
これもWi-Fiに接続し、スマホのアプリで映像を見ることができる。動きを感知しその前後を録画するので、時間をさかのぼって何があったかもわかる。
普段できるだけ訪問したくない私は、電話でのやり取りでサミーさんに指示を出していた。しかし、相手がどんな状態かわからない中でやり取りをしてもうまく通じないことが増えてストレスになってきた。本当はテレビ電話ができれば話やすかったが、新しいことなど当然覚えられないので、カメラをつけて一方的に覗かせてもらうしかなかった。
プライバシーのこともあるので、電話台が映るリビングの天井、1か所だけに設置した。そこはどの部屋に行くにも通る場所で、普段の生活が適度に見守れて助かった。適度にというのは見えすぎないということ。あまり見えすぎてしまうと見守りではなく監視になってしまうような気がしたので、もうちょっと見えたらなぁというくらいにとどめておいた。
1日の大体の様子が把握できたし、困っていそうなときに電話を入れてあげることもできるようになった。服がうまく着れなくなってきたときでも、「黒いズボンはいていってね」とか「シャツ裏返ってない?」とか声をかけることができた。
ただし、カメラに気づかれないために、声かけには気をつけて、あくまで見えていない風を装うことは怠らなかった。
認知症が進むにつれて不穏な映像がしばしば見られるようになった。
取りつかれたように書類やハガキの束を戸棚に出し入れし続ける姿
何かを食べながら落ち着きなく部屋の中をウロウロ歩き続ける姿
廊下に仁王立ちして見えない誰かに向かって怒鳴っている姿
誰もいない食卓でお茶を並べて楽しそうに談笑している姿
着実に認知症はサミーさんを壊しにかかっていた。理性というストッパーが外れて、サミーさんが全く望まなかった姿を見せてしまっていた。
そんな変わりゆく姿を見守り続けたtapoだった。
ちなみにtapoで撮った幻視が見えているときの動画を認知症専門医に見てもらうことができた。具体的にどんな状態かが伝わり、診断しやすいのではないかと思う。そんな使い方もできるのが見守りカメラだ。
(注)あくまで監視カメラではない(と思っている)
スマートフォンで遠隔操作可能なエアコン
富士通ノクリアの無線LANアダプター内蔵のシリーズで、スマートフォンと連携させて外部からでも操作ができるものを設置した。
とにかく電気代がもったいないからとエアコンを使わないので、夏は確実に熱中症になるだろうと懸念され、最新のものに買い替えた。
そこからが戦いだった。
遠隔操作をしてエアコンを作動させても、電気代がもったいないと椅子に登ってエアコンのコンセントを抜いて止めてしまう。
コンセントカバーをして止められなくしたら、今度は様々な電化製品のコンセントを抜きまくってしまう。
挙句にあちこちに電話をかけまくり困っていると訴えることもあった。
1年目は暑い中、扇風機のみで過ごす日も多かったが、2年目、3年目となると本当に暑くて困ったのか、はたまた自分の周りの出来事に興味がなくなったのかエアコンがついていることすら気にしなくなった。
エアコンの遠隔操作はデイサービスでサミーさんがいない間に部屋を冷やしておくことができたり、部屋の温度とサミーさんの様子を見ながら設定温度や風量を変更できたりするので便利だった。
スマートプラグ
これはワンシーズンしか使わなかったが、寝室に設置し、そこへデスクライトを差し込んで目覚まし時計の代わりとして利用した。
冬場になると北側にある寝室は7時ごろでも暗い日が多く、サミーさんの目覚めが悪くなった。
朝の用意に時間がかかるサミーさんは6時に起きないとデイサービスの送迎に間に合わない。電話で起こすのだが、眠りが深いままだと呼び鈴が聞こえないようで目覚めない。
目覚まし時計をセットしようと思ったが、ベルが鳴った後に解除ができずにパニックになる、または解除ができたとしても数日後には目覚まし時計ごとどこかへ隠されてしまうと思われたため断念。
そこでライトを目覚まし時計代わりにして、顔の辺りを照らすことで目覚めさせることにした。
そのライトのスイッチをオン・オフするためにスマートプラグを利用した。これもAlexaのアプリをスマホにダウンロードして、遠隔で操作できる。
10回に1回くらいはなかなか起きないこともあったが、まずまず機能して、目覚めさせることに成功した。
そして春になると、冬眠から覚めてライトがなくても毎朝5時半から起きだすサミーさんなのでした。