父土産
父は旅行会社勤めで、出張が多かった。ほぼ毎回お土産を持って帰った。食べ物では赤福、八ツ橋、雷おこし、ゴーフレットなどよく覚えている。小布施堂の栗かのこなんて美味しかった。
渋いラインナップだが、昭和の終わり頃だ。ご当地キャラもなかったし今ほど若者向けのお土産の種類が多くなかった。それはそれで楽しみ方がある。
お土産あるよと聞いてウキウキし、老舗感あふれるラッピングに近寄り難さを感じ、開けてみて何だこれはとなり、食べて当たり外れを判定する。安易に子ども向けとひと目でわかるそれよりずっとエキサイティングだ。旅行土産とはそういうものだった。
特に好きだったわけでもないのになぜか覚えているものがある。
丸い缶に入った独特の味の飴。最初見た時は、缶から食べる飴は浅田飴くらいだという刷り込みから、大人の飴だと思った。
色が3種類くらいあったが、黒飴以外の味は記憶にない。ニッキがあっただろうか。
子ども心に渋いなと感じていたし、甘くておいしいが進んで口にしようとは思わない味だった。やはり大人向けだったということだ。母は文句を言っていた。そもそも飴がそんなに好きな人ではなかった。そんな妻とまだ味覚の幼い子どもへの土産としてはどーなんだということで文句を垂れてたんだと思う。
父も仕事で行ってるんだから、時間のない中お土産を選んでくれたのかもしれない。私の気持ちを半分代弁するような母を横目で見つつ、残りの半分は父を気遣うように黙っていた。
ちなみに私はどちらかというとガムより飴派だった。
子どもの頃はガムも好んで食べていたが、飴の方が何となく好きだった。例の飴をフォローするようだがガムは缶入りなんてないし、飴を缶から食べるというもったいぶりに醍醐味がある。
しかし結局その飴は私以外あまり食べず、いつまでも缶の中に残っていた。
そして懲りない父は、時間が経ってまた出張に行った時同じ飴を買って帰り、案外テキトーに選んでることがバレるのだった。
追記:その飴については調べてみて、これだったんだろうと特定できた。子どもだったからとはいえ贅沢言ってたなあと反省。あの有名な飴だった。
今なら良さがわかるんだけど…