3/13 【米2月雇用統計、シリコンバレー銀行経営破綻】
●米2月雇用統計 失業率は上昇
米労働省が3月10日に発表した2月雇用統計では、非農業者部門雇用者巣は31.1万人と前回(22.3万人)から伸長したものの、失業率は前回(3.4%)から上昇し3.6%となった。
雇用統計とは雇用情勢を示す統計で、景気状況を探るうえで最も重要な経済指標のひとつだ。原則毎月第1金曜日に米国労働省から発表され、政府から最初に発表される前月の指標で、米国の景気の実体を表す最新の数値として為替、株式、債券等のマーケットに影響を与えるため、市場関係者の注目度は高い。
またFRBは金融政策の決定に際し、雇用の最大化と物価の安定を目標としている。そのため、米国の雇用統計はFRBの金融政策の方向性を予測するうえでも重要である。
今回は賃金インフレという観点から平均時給に注目が集まっていたが、事前予想(0.3%)を下回り0.2%の上昇となった。
FRBのパウエル議長は2月初旬のFOMC後記者会見で、「ディスインフレのプロセスが始まった」と述べ、結果的に市場の年内利下げ期待から株高・ドル安を招いた。
一方で、その後の1月雇用統計やCPIが非常に強い内容であったため、3月7日に行われた議会証言では、今後の利上げはデータ次第としていた。
●米シリコンバレー銀行破綻へ 過去10年で最大の米銀破綻
米シリコンバレー銀行は3月10日に経営破綻した。同行は増資を計画していたが不発に終わり、破綻処理に動いたカリフォルニア州の金融保護当局が連邦預金保険公社を管財人に選任した。
シリコンバレー銀行とは、シリコンバレーを中心に業務を展開する上場銀行であり、米スタートアップ各社との関係性は深い。
口座の開きやすさや対応の速さがスタートアップやベンチャーキャピタル(VC)の支持を受け、同社によるとVCが投資する米国のテックやヘルスケア企業の約半数がSVBと取引している。
同行の経営破綻は親会社のSVBファイナンシャル・グループが、保有する210億ドル(約2兆9000億円)相当の証券を売却したことと、財務強化のために22億5000万ドルの増資を計画していることを明らかにしたところから始まった。
この後、著名投資家ピーター・ティール氏率いるファンドなどが投資先に預金引き出しを呼びかけたことも伝わり、不安が増幅した。3月9日に多額の預金が引き出され、すぐに資金繰りが行き詰まったとされる。
破綻前には金利上昇で含み損を抱えた長期債を売却し、短期債への再投資や資本増強で財務を立て直す計画を描いたがこれも頓挫した。
●雇用統計、シリコンバレー銀行破綻 市場の反応
雇用統計で失業率が上昇したことや、平均時給の伸びが事前予想を下回ったこと、またシリコンバレー銀行破綻による金融引き締め姿勢緩和予想から米10年金利は週後半に一気に下落が進んだ。
ドルインデックスも週後半に大幅な下落。但し、3月13日(月)日本時間早朝に、シリコンバレー銀行の預金保護をFRB含む当局が発表したことや同行買収に向けた動きもあり、このままドル安が進むかどうかについては慎重に考えるべき。
先週末のSP500はリスクオフの動きにより、全面安の展開。一方で、シリコンバレー銀行破綻があったにしては、米主力銀行株は下げていない(JPMは+2.5%)。
市場の次回FOMCでの利上げ予想について、1月米雇用統計やCPIが想定より強い内容だったことや、パウエル議長の議会証言から一時は0.25%利上げが59.8%、0.50%利上げが40.2%と0.50%利上げを見込む声も大きくなっていた。
一方で、2月雇用統計の内容やシリコンバレー銀行破綻を踏まえ、次回FOMCでは0.25%利上げ予想が84.1%となっている。
また今後2回のFOMCで0.25%ずつ利上げを行った後、利上げを停止する予想。2023年年末から利下げに突入し、2024年前半では0.25%ずつの利下げが行われると市場は想定。
●中国消費者物価指数(CPI) 2月は1.0%へ鈍化
中国国家統計局が3月9日に発表した2023年2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.0%(予想:2.0%、前回:2.1%)の上昇だった。豚肉の値上がり幅が縮まった他、サービス価格なども伸び悩んだ。
食品は2.6%上昇したが、1月の6.2%より伸びは鈍った。食肉消費の6割を占める豚肉は3.9%の伸びにとどまった。
22年10月に上昇率が52%に達したが、出荷量の増加などで価格高騰は和らいできた。生鮮野菜は3.8%の下落に転じた。ガソリンなど交通燃料は0.5%高かった。
CPI上昇率が鈍化したことについて、国家統計局は「22年は春節(旧正月)休暇の影響が2月に集中し、前年同月の価格水準が比較的高かったため」と説明している。