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若隆景は大関・横綱になれるか

相撲の経験がない私ですが、無いなりに若隆景について語ろうと思います。
若隆景が三月場所を優勝したことで相撲ファンなら誰しもが「若隆景は大関になれるのでは?」と思ったことでしょう。私のようにせっかちな人間ならば
「もしかして横綱も…!?」と思ったことでしょう。

しかし「若隆景は大関・横綱になるにはやや身長が足りないのでは」と妄想に悲観的な要素が降りかかってきます。皆さんもこの流れで一度は考えたのでは?

確かに近年の横綱の身長を考えると若隆景の身長(182cm)は低い気がします。

73代横綱・照ノ富士192cm
72代横綱・稀勢の里188cm
71代横綱・鶴竜186cm
70代横綱・日馬富士186cm
69代横綱・白鵬192cm

しかし若隆景とほぼ同じ体格の大横綱がいますよね。
それはもちろん…

誰かな?

そう千代の富士ですね。

千代の富士は183cm127kgとソップ型として分類される力士ですが
優勝回数31回の大横綱です。

千代の富士が横綱になれたのだから同じ体格の若隆景も横綱になっても良い気がします。なので今回は若隆景が千代の富士のような相撲を取るにはどうしたら良いのか考えていきたいと思います。

まずは千代の富士の相撲を分析してみましょう。
千代の富士は幕下時代、投げの打ちすぎで脱臼癖がつくほど投げ技を好んで使っていました。しかし元・千代の山の死去に伴い九重を継承した北の富士による指導を受けたことで、投げを多用する相撲から左の下手を取って引き付ける相撲を身につけます。北の富士さんも三月場所の解説で「千代の富士も前まわしを取って前に出る相撲を取るようになってから一気に番付を上げた」とおっしゃっていましたね。

北の富士さんは、こうも言いました
「若隆景は千代の富士の相撲を目指して欲しい」

それでは千代の富士の次に若隆景の相撲について分析していきましょう。
若隆景と言えば「おっつけ」ですよね。腰がしっかりと落ち体幹が強く筋肉質な腕によるおっつけは非常に強力な武器となっています。


若隆景ー逸ノ城 戦

しかし三月場所ではおっつけは減少し、代わりに右差しが増えたように感じます。ここが若隆景躍進の理由だったのかなと私は考えています。


おっつけも繰り出してはいますが、それは右が差さらなかった場合の対策のような印象を受けます。しかしこのおっつけ自体も強力な武器なので相手力士は相当手を焼いたことと思います。

若隆景ー豊昇龍 戦 おっつけ→差し→ハズ と多様な技が次々に繰り出された

ここから先は「素人のくせに何を偉そうな…」と言われそうな内容ですが、恐れず語ります。今場所の全取組を見ると若隆景は右手は素晴らしい技を繰り広げていますが、左腕は有効に使えていないように感じました。

若隆景が右を差したとき、左腕はどうしているかというとやや浅い位置の上手を引いているか左も差すことが多いのかなという印象です。

なぜ有効に使えていないか?それは若隆景の体は182cmと役力士の中ではやや身長が低く双差しなどの胸を合わせる相撲は若隆景と合っていないと考えられるからです。

照ノ富士ー明生 戦 明生は絶好の形を作るが下手投げで敗れる。

具体的に言うと若隆景は照ノ富士に今の相撲では勝てません。
照ノ富士ー明生戦を例に解説します。

明生は照ノ富士になかなか勝てませんでした。明生は照ノ富士に対して双差し狙いの速攻で決めようという戦略を選択していましたが、万全の形を作ったにも関わらず敗れてしまいました。

それではなぜ明生は敗れたのでしょうか?上の画像をよくご覧下さい。
明生が照ノ富士を土俵際まで追い込んでいるように見えますが、
実はこの時、照ノ富士が優勢なんです。明生を見ると上体はのけぞり、腰が高く膝も伸びています。対して照ノ富士は前傾姿勢を保ち腰が落ちていて膝も曲がっています。身長が高い分、明生と比較すると腰高で膝が伸びているように見えますが、照ノ富士は十分凌げる体制を作っています。

明生がここまで良い形を作って勝てないとなると照ノ富士に双差し狙いというのは勝つのが相当困難なのではないかと考えられます。
(ちなみに明生の場合は下手を更に深くすることで照ノ富士を破った)

ここで千代の富士の話に戻りたいと思います。千代の富士は横綱でありながら胸を合わせる相撲は少なく、頭をつけて前まわしを引いて一気の攻めを貫いてきました。

小錦ー千代の富士 戦
千代の富士ー大乃国 戦


この相撲は小錦や大乃国などあんこ型力士に勝った時に多く見られるため
自分よりも大型の力士の対策として非常に有効だったことが伺えます。

以上のことから若隆景も照ノ富士や正代など自分より大型の力士を相手にする際に、前まわしを取って頭をつける形を作ることを身につけてくると、千代の富士の相撲にかなり近づくと思いますし、大関・横綱が見えてくると思われます。

若隆景は27歳と力士としてはそこまで若くないですが、千代の富士が全盛期を迎えたのは30歳になってからだということを考えるとまだまだ遅くはありません。
若隆景が令和の大横綱と呼ばれる日がもしかしたら来るかもしれないと密かに期待しております。

ご清聴ありがとうございました。