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東京国立博物館 ハニワ祭りの秋【特別展はにわ】
東京国立博物館ことトーハクのイメージキャラクターといえば、踊るハニワことトーハクくんと本館正面で樹勢良好な木の妖精ユリノキちゃん。
本館のミュージアムショップにはぬいぐるみ、フィギュア、クッキー、靴下、etc.…ハニワグッズの数々。
企画展でおなじみの平成館一階には常設の考古展示室。
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このようにハニワ激推し!といった感のあるトーハクですが、かつては「考古展示室は来客も少ないし、ミュージアムショップに改装しようよ」なんて話もあったそうで。
考古学展示を守り抜いた代々の学芸員さんの努力に感服すると共に「人気出てよかったなハニワ!」と語りかけたくなります。
それにしてもハニワって、世界的に見ても貴重な考古学遺産なのに、各地方の教育委員会が管理していて見に行くのが大変だったり、展覧会がなかったりと、妙に評価が低いような不思議な扱われ方なんですよね。出土地となる古墳の多くが宮内庁管理なのが影響してるのかな…?
そんな若干不遇だったハニワにスポットライトがバシバシ当たっている2024年の秋。トーハクでは約50年ぶりの超大型ハニワ展、東京国立近代美術館では『ハニワと土偶の近代』といつにない盛り上がりっぷり。50年もハニワ展やってないことがおかしいのでは
考古学ファンとしては居ても立っても居られず、ハニワ祭りに参加しにトーハクに向かったのでした。
展覧会の概要
最近は考古学ファン以外にも人気が出つつあるというハニワ。実際はどんなものなのかと思いきや、連日チケット売り場に待ち行列が発生し、土日ともなれば入場まで数十分待ちも珍しくない大人気展覧会になりました。
チケットはネット購入可能ですので、事前にゲットしていくとスムーズです。
展示品はほぼハニワ。約110点のハニワを楽しめます。展示構成は第1章『王の登場』、第2章『大王の埴輪』、第3章『埴輪の造形』、第4章『国宝 挂甲の武人とその仲間』、第5章『物語をつたえる埴輪』の五章 + プロローグとエピローグ。
展示室内部は大半が撮影可。ただ混んでるのでハニワを撮っていても人が写り込むのはデフォルト。ネット投稿の際は気をつけないといけませんね。
なお、会場は広々しているので、混雑しすぎで身動きが取れないなんてことは少なめの模様。
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展示風景・前半
展示第一号はもちろんコレ! トーハク名物『踊る人々』です。特別なガラスケースに収められたこの二体、実は文化財登録されていません。にも関わらず東京国立博物館 創立150年記念事業の修理対象に選ばれるなど知名度抜群。
なお、長らく踊る姿を表現したハニワだと思われてきましたが、近年の研究では馬を引く姿を象った説が濃厚になって来たとか…
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第1章『王の登場』では古墳の石室をイメージした小部屋で古代の有力者に捧げられた宝物を展示。石釧、鍬形石、銅鏡、鎧兜など大型古墳で発見された宝物が並びます。
下の図は群馬県高崎市の綿貫観音山古墳で出土した『金銅製鈴付大帯』。六世紀には現代と同じ形の鈴が存在したことが一目瞭然という面白い品です。
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第2章『大王の埴輪』は古代の有力な王たちの墓とされる古墳から出土した貴重なハニワを展示。
最初の前方後円墳とみなされる箸墓古墳、大阪府で威容を示す誉田御廟山古墳のほか、なんと大仙陵古墳(仁徳天皇陵古墳とも)からの出土品も展示されていました! 欠片とはいえ立派な形象埴輪に驚きです。なお、宮内庁書陵部の許可が下りないようで、ここだけは撮影禁止でした。
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なんと高さは二メートル以上! よく作れたね?
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ちゃんと古墳型の台に載っているのがいい感じ。
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おそらく継体天皇の宮殿を模したもの。屋根が伊勢神宮そっくり。
第3章『埴輪の造形』ではハニワの始まりから形象ハニワの出現、そして特殊なハニワまで幅広く展示。
まずは弥生時代に作られたハニワの先祖『特殊器台・特殊壺』からスタート。弥生時代後期、墳丘墓に設置した器台が重なって生まれた特殊器台がやがて円筒埴輪に転じていった~というのが現在の学説ですが、確かによく似てますね。
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円筒埴輪はオーソドックスだが、人面が付いているのは珍しい。
筒状の円筒埴輪に対し、動物や器具、建物を象った形象埴輪はレアな存在。普段まとまって見る機会がないので貴重な展示風景です。
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実物は今年国宝になったばかり。大きさと精密な作りに圧倒される。
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鈴付きの帽子をかぶり、三角装飾の衣装をまとったおしゃれさん
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このハニワの発見によって、長らく謎だった出土品(クネクネした金属棒)の正体が旗竿だと判明した、地味に重要なハニワ
ハニワは基本的に土製ですが、類似品には木や石で作ったものも存在します。今回は木製品のほか、九州北部の有力豪族だった筑紫君磐井の一族の古墳に並べられた石人も来ています。初めて見ましたが、雰囲気が違って面白いですね。
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展示風景・後半
さて、面白グッズでごった返すショップを通過し、後半は第二展示会場に移動です。第4章は『国宝 挂甲の武人とその仲間』――今回の展覧会の主役の登場です。
そもそも今回のはにわ展、「挂甲の武人 国宝指定50年を記念して同一工房で制作されたとも言われる五体の挂甲武人埴輪を揃えちゃおう!」がコンセプト。国立博物館所蔵の埴輪を中心に、天理参考館・相川考古館・国立歴史民俗博物館、そしてアメリカのシアトル美術館の収蔵品がずらりと並びます。
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実際はもっと混んでました。
挂甲の武人は国立博物館のものは国宝、天理参考館と相川考古館のものが重文指定を受けています。シアトルのものは何と約60年ぶりの帰国。五体の兄弟埴輪勢揃いという貴重な瞬間を捉えようと、多くの来館者が四方八方から撮影していました。アイドルの撮影会かな? (偶像=idolなのでわりと正しい)
挂甲の武人、ほぼ同じデザインではありますが、細部の仕上げの細やかさやポーズ、服装に若干の差異があり、見比べてみても楽しめます。
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なお、近年の研究により、制作当初は色が塗られていたことが分かっているそうで、復元模型も参考展示されていました。かなり印象が変わって面白いですね
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第5章は『物語をつたえる埴輪』ということで、類似モチーフの埴輪をまとめつつ、多彩な形象埴輪を展示。
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王が水を清める儀式を行った建物を象っているらしい。
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一括で国宝指定された綿貫観音山古墳出土品のひとつ
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活きの良さそうなハニワフィッシュ
エピローグはちょっと変わったハニワが数点。東京柴又八幡神社古墳から出土した帽子を被った男性埴輪、通称「寅さんハニワ」も登場。本当に似てますねぇ
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近代のハニワの武人は当然武士スタイル
まとめ
全国各地からハニワ大集合! ふだんは展示されていない(けど有名だったりする)ハニワも登場し、考古学ファン的にはマストな展覧会です。
また、普段考古学に興味がないという方でも教科書で見たハニワ、単純に面白い形のハニワがたくさんあり、楽しめる内容だと思います。おすすめ
なお、ショップは独特のグッズが並んでおり散財の誘惑に満ちています。要注意